成功する秘訣は着手することだ。着手する秘訣は、その仕事に「ただ時間をかける」意識をもつことである-先延ばし・先送りの究極の解決策
新人の頃、どうしても仕事に取りかかれない時があった。頭ではやらなければいけないことはわかっていた。でも取り組めなかった。
毎朝「今日こそは」と決意した。でもいざ仕事がはじまると、忙しさを理由に「あとでやろう」と先延ばししてしまう。これを連日くりかえした。その後大変なことになったのは言うまでもない。
自分はなんて意志が弱いのだろう。そう昔思ったものだが、実は意志はあまり関係なかった。そのことを教えてくれたのは『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則』の著者マーク・フォースターだ。
マークによれば、人間の脳には2つの脳・性質があるという。そのうちの一つの脳をダマすことが、先延ばし・先送りを解決する鍵なのだいう。
2つの脳とは一体何なのか。脳をダマすとはどういうことなのか?
イギリスの著名な作家の仕事のやり方を皮切りに、仕事に着手する最善のアプローチについて。時短コンサルタントの立場から考えてみたい。
「文章を書かなくてもいいが、書くこと以外何もしてはいけない」というルール
Netflixでドラマ化された『サンドマン』をはじめ、数々の作品で知られるイギリスの作家ニール・ゲイマン。
作家とはいえ、彼にとって執筆することは簡単ではなかった。そんな彼の執筆時の最大のルールは「文章を書かなくてもいいが、書くこと以外何もしてはいけない」というものだった。
イスに座って何もしなくてもよかった。景色を楽しむのも自由だった。ただしクロスワードをしたり、本を読んではいけない。友達に電話してもいけない。書くこと以外何もしてはならなかった。
そうしてイスに座り景色を楽しんでいると5分も経てば飽きてきた。何もしてないよりは、文章を書く方がまだおもしろい。そうしてニールはやがて文章を書きはじめるのだった。
このニールの手法は秀逸で実に理に叶っている。2つの脳の仕組みを紹介しながら、その理由について説明したい。
衝動の脳をダマせば先送りはなくせる
冒頭に紹介したマークによれば、(科学的に厳密な表現ではないが)人間には「理性の脳」と「衝動の脳」の2つの脳があるという。
理性の脳は簡単に言えば計画を立て実行を指示する脳だ。一方、衝動の脳は本能に従い直感的・反射的に反応する脳になる。そして理性の脳と衝動の脳が対立すると、基本的には衝動の脳が優先する。
たとえば作家が文章を書こうと計画するのは理性の脳による。一方、いざ文章を書こうとすると「今日は気分が乗らないからやめておこう」となるのは衝動の脳がやりたくない・めんどくさいと感じ理性の脳に対立・優先するからだ。
このことから、理性の脳の計画通り仕事に取り組みたいなら、2つの脳を対立させない必要があることがわかる。
ではどうすれば2つの脳を対立させずにすむのだろうか。その解についてマークは以下のように書いている。
そう。ニールの手法が秀逸なのは、「書かなくてもいい」と自分に言い聞かせることで「この仕事は怖くない」と衝動の脳をダマしているところなのだ。そうして2つの脳の対立をなくし、彼は文章を書き続けることに成功している。
ニールのルールを応用すれば、我々ビジネスパーソンも仕事に着手する活路を見出せることに気がついただろうか。そう。「その仕事をしなくてもいい。でも、その仕事以外何もしてはいけない」というルールを作ればいいのだ。
筆者はこのルールをさらにシンプルなものに仕立てあげた。それは「(その仕事に)ただ時間をかければいい」というものだ。説明したい。
「ひとまず30分、時間をかけてみる」という戦略
たとえば筆者はYahoo!ニュースに記事を書く時、1つの記事に20時間程度かけることも珍しくない。
これから20時間かけて文章を書こうと思えば筆者同様、大半の人は着手するのに苦労するはずだ。そこで筆者は「ひとまず30分時間をかけよう」と自分に言い聞かせるようにしている。
ニールのルール同様、何もせずにぼーっとしててもいい。文字通り30分、執筆にただ時間を使えばよしとする。そうすると狙い通り、やがて暇になり文章を書きはじめる。
筆者はこの手法を執筆以外の仕事でも使っている。気が進まない仕事に取り組む時、とにかく30分時間をかけることだけを意識している。
このルールを使えば確実に仕事に着手できる。このことに気がついた筆者はその後思い通り仕事を進められるようになった。
仕事で一番むずかしいのは、実は着手することだ。
アメリカの作家マーク・トウェインも『成功する秘訣は着手することだ。着手する秘訣は、気が萎えるような複雑な仕事を、扱いやすい小さな仕事に分割してから、最初の一つを始めることである』と言ったとされる。
「最初の一つ」をはじめるのも時にはむずかしい。そんな時は取り組む時間を決めて、ただ時間をかける。このことを意識してみてほしい。
おどろくほど簡単に仕事に着手できるようになるはずだ。
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