映画『湖のランスロ』
1974年/製作国:フランス/上映時間:84分
原題 LANCELOT DU LAC 英題 Lancelot of the Lake
監督 ロベール・ブレッソン
予告編(日本版)
予告編(海外版)
STORY
レビュー
多くの死者を出すこととなった「聖杯(神)」探索は、その目的を達することなく騎士たちを帰還させることとなり、最強の騎士ランスロもまた帰途に就きますけれども、帰還後まもなくランスロは森の小屋にて、アーサー王の妃であるグニエーヴルと密会することとなります。
グニエ―ヴルはランスロに「もう二度と其方を離さぬ」と伝えた上で、「ジュテーム(愛しています)」と自分に対して言うように命令し、2度言わせて、その愛の存在を確かめるも、ランスロは主君への「忠義」と「不忠」の間に揺れ、グニエ―ヴルとの「運命の愛」から逃れようと試みます。
しかし「運命の愛」から逃れることなど出来ようはずも無く、重ねた密会の最中に甲冑を脱いだランスロがその胸にグニエ―ヴルを抱きとめたとき……
「破滅への愛」と「感情」の交響曲は、「生物」や「物」の発する様々な「音」、そして的確なモンタージュを施された「画」の「リズム」により奏でられ、やがて「凄惨な愛の物語」を鑑賞者の記憶へと紡ぎます。
鑑賞者はランスロと共に「愛」の持つ強大な「闇」に対し敢然と立ち向かい戦うも、その戦いに勝利することは叶いません。
何故なら「愛」の力に勝てる者など、この世には存在しないからです。
ブレッソン(監督のマスターピース)作品群には、その大きな特徴として「反復」がありますけれども、個人的にはそれを「韻律」と表現したい思いがあります。
また本作では、その表現が極みに達した感があり、全体のバランスや美しさ、そして詩情においても、突出したものがあるように感じられます。
ゆえに(ブレッソンの作品中)個人的に最も「愛」する作品です。
本作を、もう何度鑑賞したかわかりませんけれども、これからもその果てしない「破滅の愛の世界」へと命ある限り何度でも、耽溺しに逝きたいと考えております。
決して見つけることの叶わない「聖杯」と、「運命の愛」を探しに……
※本記事の「愛」は、主に「強烈な欲望」「相性が良すぎて(又は恋の病に侵されて)理性では抑えることの不可能な性欲」を指しております。