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現代アートを楽しむ

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現代アートは、常識を覆すコンセプトを作品で表現しています。作品がどんなコンセプトで創られたのか、アーティストが作品に込めた思いは何かなど、アートの根幹に関わる記事をまとめます。
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記事一覧

【レポート】ついに淺井裕介さんの新作が完成し、横浜美術館に搬入!タイトルも決定!!

これまで3回にわたって、淺井裕介さんの作品制作プロジェクト(※本レポート下部参照)の舞台裏をレポートしてきましたが、いよいよ今回が最終回。ついに完成した作品が、2024年3月22日(金)に横浜美術館に搬入されました。普段はあまり表に出ることのない搬入時の様子を、写真で少しご紹介します。 作品のタイトルは《八百万の森へ(やおよろずのもりへ)》に決定しました。 高さ325㎝ × 幅390㎝ という大きな作品は、9枚のパネル(大きさは4種類)に分割できるようになっていて、組み合わ

五感で「想う」、遊び心が生む自由な発想とイノベーション

87歳にしてなお精力的に作品を創り続けるアーティスト、横尾忠則さん。その創造力の源泉は「遊び心」と「想う」力にあります。ビジネスパーソンもこの力を活かせば、イノベーティブな発想を生み出せるようになります。今回は、「遊び心」と「想う」について考えます。 論理を超えた「想う」力 横尾さんは、頭で「考える」よりも、身体が勝手に描いてくれる、描こうという衝動、「想う」にしたがうことを重視しています。 横尾さんのいう「考える」は論理的思考のこと、これは確かに重要ですが、自由な発想

休館中のBunkamuraが映す、過去と未来の交錯

Tokyo Creative Salonのイベントとして、休館中のBunkamuraを使ったインスタレーションが展示されています。渋谷エリア統括ディレクターの寄本さんに案内していただきました。 Bunkamura吹き抜けには、西野達さんの巨大イスタレーション《ミラーボールファニチャー》が宙吊りになり、ミラーボールとして回転しています。 譜面台、ロッカー、カフェの椅子など、実際に使われてきた什器を組み、東急の社員さんが家族と一緒にミラーを貼り付けたそうです。 かなりの重量の作

8000m超の14峰挑戦中の石川直樹さんは、奥能登も何度も訪れ写真を撮ってきました。珠洲で定宿にしていた温泉宿も全壊してしまいました。 奥能登ポスターのチャリティ販売を行い、全額を珠洲市役所に届けたそうです。そして、再び立ちあがろうとする人々の様子をフィルムに焼き付けています。

8000m峰14座に挑む:興味あるものに徹底的に向き合う

地球上には標高8000mを超える山が14峰あります。この14峰制覇に挑戦している写真家の石川直樹さんの展覧会が、日比谷図書文化館で行われています。今回の記事では、写真家としての石川さんの視点と、興味あるものに徹底的に向き合うことについて紹介します。 ASCENT OF 14:14峰の登頂記録と歴史を並べて展示 石川さんは、昨年秋の時点で13峰の登頂を達成しました。そして、最後の山シシャパンマへのチャレンジ中に、山頂付近で雪崩が起き、他のパーティが巻き込まれるという事態とな

奇想の力で世界を変える!京都のアートシーンにみる創造性

奇想天外な発想が世界を変える力になる、そんなことを感じさせる展覧会が京都で開催されていました。この記事では、スターリング・ルビー、坂本龍一+高谷史郎、塩田千春の展覧会を紹介するとともに、奇想について考えてみます。 幽霊が伝える未来の危機 京都の古い町屋に幽霊が現れました。でも、それは本当の幽霊ではありません。アーティストのスターリング・ルビーが作った幽霊です。彼は、日本や欧米の昔話や伝説に出てくる幽霊をリサーチして、奇抜な世界を表現しました。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲

TARO NASUでマルセル・ブロータース(1924-1976)展。全エディション作品と書籍が展示される貴重な機会。デザインの向こうに、多くのアーティストに影響を与えた深い思想が感じられます。ブロータースのキュレーションで6年かけて実現したそうです。その情熱に感謝です。

日常の「ハガキ」が彫刻に変わる!アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」

2023年12月6日(水)、代官山 蔦屋書店のシェアラウンジにおいて、アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」を開催しました。このサロンは、書籍『イノベーションを創出する「アート思考」の技術』の出版を記念して不定期で開催しています。 アート思考とビジネスパーソンを体験でつなぐ アート思考とは、現代アートのアーティストが作品を制作する際に発揮する思考プロセスと共通しています。アート思考を身につけることで、ビジネスパーソンは、新

受取人のいない手紙を預かる「漂流郵便局」:人の深層心理を洞察して隠れたニーズを掬い上げる

瀬戸内海に粟島という小さな島があります。この島に、受取人のいない郵便を預かる不思議な郵便局があります。その名も「漂流郵便局」。アーティストの久保田沙耶さんが、2013年に、瀬戸内国際芸術祭での作品として制作したものです。 受取人のいない手紙を預かる郵便局 受取人のいない手紙とは、例えば、お子さんを亡くしてしまったお母さんが、亡くなったお子さんに向けて書いた手紙や、10年後の自分に書いた手紙などです。通常の郵便配達では、このような受取人のいない手紙は配達してくれません。しか

新国立劇場でのオペラ『シモン・ボッカネグラ』 舞台美術をロンドンで活躍しているアーティスト、アニッシュ・カプーアが担当。 全編にわたり、逆さ吊りになった火山が舞台を覆い、シモンの死とともに、黒い巨大な太陽が出現する。今の時代を反映した息苦しさを感じる舞台です。

冨井大裕さんと日常から異次元を創造する:アート思考サロン第2回を開催します

私たちの身の周りにはモノが溢れています。それらのモノには、私たちの生活を便利にする機能が備わっています。しかし、視点を変えると全く別の姿が見えてきます。アーティストの冨井大裕さんは、既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索しています。 冨井大裕さんをお迎えして、アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」を開催します。 詳細、お申し込みは

ただひたすら身を委ねる空間:《大巻伸嗣 真空のゆらぎ》

こんにちは 現在、国立新美術館にて「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」が開催されています。 大巻氏の作品に触れるのも初めてでしたし、空間を作品にしたインスタレーションアートも体験したいと思い足を運びました。 今回は大巻氏の空間作品を体験したお話をしていきます。 少しの間だけお付き合いいただけたら嬉しいです。 それではさっそく |大巻伸嗣の空間体験 インスタレーションアート、それは作者の作品のために展示会場を設えるとは異なります。 造形物から空間(ここでは展示室)そのものまで

「日常の風景から世界を再構築する」:イノベーションフォーラムを開催します

青山学院大学大学院ビジネススクール(ABS)では、2023年度 第1回青山イノベーションフォーラムとして「日常の風景から世界を再構築する」を10月17日(火)18:30より開催します。この記事では、登壇いただくアーティストの毛利悠子さんについて紹介します。 毛利悠子さんによる特別講義 このフォーラムは、私が担当している「イノベーションとアート」の講義を拡大し、特別講師として、現代アートのアーティストであり、東京藝術大学准教授でもある毛利悠子さんをお招きして、グローバル社会

「思い出す」ことと創造性− AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」

このコラムでは、AKI INOMATAさんのアート作品「昨日の空を思い出す」から、「思い出す」ことと創造性との関係を考えます。 AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」 2023年8月25日から9月16日までMAHO KUBOTA GALLERYで行われていたAKI INOMATAさんの個展「昨日の空を思い出す」。 水を入れたグラスの中に、前日の空に浮かんでいた雲を3Dプリントする作品が展示されていました。3Dプリンタが実際に雲を制作している様子も見ることができます。