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【三題小説】快速電車、布団、野球

穏やかな昼下がり、快速電車は家々の間をすり抜ける。
干された布団を叩く主婦、グランドで野球をする少年たち、通過する無人駅の掲示板を窓から眺める。
誰も私を知らない。そんな心地よさに身を委ね温かい光に目を細めた。

「ブラインド、下げてくれませんか。」

ボックス席の向かいに座った人に声をかけられる。鬱陶しそうに手をかざして目を細めている。
私は小さく頭を下げ、穏やかな午後に別れを告げた。
目的地までは、まだ遠い。

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