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名優 仲代達矢さんを追いかけ能登へ


俳優、仲代達矢さんの演技を生で、初めて拝見したのは昨年のことでした。仲代さん率いる無名塾が能登演劇堂で『左の腕』を上演するにあたって、パートナーが「どうしても観たい!」と言い出したため、急遽能登まで足を運ぶことになりました。

実はその時期に、ぼくは京都で作品展を控えていました。大切な会期が始まる一週間前に「舞台を観にわざわざ能登まで?」と最初は渋りました。会場の能登演劇堂は、能登半島の中でもわりと辺鄙へんぴなところにあるため、在来線を乗り継いでいくと大変な気がしたのです。

しかし、かの黒澤明監督や岡本喜八監督、小林正樹監督の映画の中で、仲代さんの出演作をかいつまんで観ていうるうちに、「仲代さんだけは観なきゃいかん! 観られるのは今しかない!!」と奮い立って、結局能登行きを決めたのです。

『左の腕』の感想は、Instagramで投稿しました。


正直、その投稿だけじゃ気がおさまりませんでした。それくらい、仲代達矢さんという役者に胸を射抜かれたのです。

そして、今年!

仲代達矢役者七十周年記念作品
『いのちぼうにふろう物語』

今秋はパートナーが絵の個展を控えていること、集落の秋祭りの当番で準備などに追われること、稲刈りがあることなどなど予定がてんこもりで、9月〜10月のスケジュールは不透明でした。

でも、何を差し置いても絶対に行かなければと鼻息を荒くして行った甲斐がありました!

(今作ではエキストラの募集もあり、本当はそちらでお世話になりたかったのですけれど、残念ながらスケジュール的に無理でした。。。涙)


『いのちぼうにふろう物語』は、9月4日から10月10日までの期間で、計30回行われるロングラン公演です。仲代さんはこの12月で90歳、卒寿を迎えられます。ちょっと想像すれば、それがどれほど凄いことなのかお察しいただけるでしょう。

仲代さん演じる「幾造いくぞう」は、一膳飯屋いちぜんめしや深川安楽亭ふかがわあんらくてい」の主人です。劇中はほとんど出突っ張りで、休む時間なんてありません。今回ぼくたちは客席最後部のほぼ中央の座席で観劇しましたが、無名塾の役者さんのみならず、仲代さんの台詞は劇場の奥まではっきりと聞こえました。

もう一度言いますけれど、仲代さんはこの冬で90歳です。台詞の量だって決して少なくありません。人間としての衰えがもっとあったっておかしくないのに、舞台上の仲代さんは実際の年齢を全く感じさせませんでした。


クライマックスは能登演劇堂の魅力がふんだんに詰まった大捕物です。「御用」と書かれた提灯を掲げた役人たちが舞台に群がって、幾造や安楽亭にたむろするならず者たちを引っ捕えにかかる、壮大なチャンバラが繰り広げられます。

仲代さん演じる幾造もまた積極的に刀を振るいます。昨年観た『左の腕』でも終盤にチャンバラがあって、仲代さんの佇まいからほとばしる殺気を存分に浴びて惚れ惚れしたのですが、今作はそれ以上でした。

そこから終幕までの光景は、今も目に焼き付いています。帰り道の車中で、パートナーと一緒に即興の芝居ごっこをしてしまうくらいに引き込まれました。

いやはや、これ以上は語ることができません。とにもかくにも、ぜひ生で仲代さんの舞台をお楽しみください!!

現在問い合わせが殺到しているようで、10月10日(月)の千秋楽まで、チケットの空き状況がネット上ではわかりません。詳しくは能登演劇堂のHPをご覧ください。お申し込みは電話(0767-66-2323)でのみ受け付けているようです。


今の仲代達矢さんの芝居が、できる限りたくさんの方の目に、記憶に刻まれることを心から願ってやみません。この冬は仲代達矢さん、三船敏郎さんなど昭和の名優が出演する映画をひとしきり楽しもうと思います。



仲代さん、舞台最高でした。心から感謝します。



興奮の坩堝こじょうゆうやでございました。

あたたかいサポートのおかげで、のびのびと執筆できております。 よりよい作品を通して、御礼をさせていただきますね。 心からの感謝と愛をぎゅうぎゅう詰めにこめて。