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イノヴィオ・ファーマスティカルズ。国防総省から7100万ドルの予算を受け取りワクチン市場に反撃へ

イノヴィオ・ファーマスティカルズ(INO)

遅れてきたルーキー、イノヴィオ

6月23日、イノヴィオ・ファーマスティカルズはアメリカ国防総省から71ミリオンドル(76億円相当)の予算を、コロナワクチン接種用のデバイス”CELLECTRA(R)3PSP”製造のために受け取ったと発表しました。

元々イノヴィオ社は、新型コロナウイルス発生時に公表されたゲノムを解析してワクチン開発に名乗りを挙げ、ビルゲイツ系のCEPI(The Coalition for Epidemic Preparedness Innovations 感染症流行対策イノベーション連合)から900万ドル資金提供を1月に受けています。動き出しは早かったですが、それからは5月に動物実験で抗体確認などありましたがイマイチふるわず、ワープスピード作戦にも選ばれなくてコロナワクチンの泡沫候補かと個人的には感じていました。

イノヴィオ社とは?

イノヴィオ・ファーマスティカルズはペンシルバニアに拠点を置き、CEOは子供の時に韓国からアメリカに渡ったDr.ジョセフ・キム。彼は2009年からCEOをしています。MERS(中東呼吸器症候群)やジカ熱の研究で知られており、コロナワクチンについてはMERSコロナウイルス用のワクチンINO-4700と同じ手法でINO-4800を開発しています。

今回予算が付いたCELLECTRA(R)3PSPはINO-4800が皮内に直接送達され、そこで同ワクチンが直ちに体の免疫系に強力な免疫反応を引き起こさせるよう設計されています。

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このデバイスの特長は、針を使わず電気パルスで細胞に孔を開けてDNAプラスミドを注入、免疫反応を引き起こすとのこと。これで他のDNAワクチンおよびmRNAワクチンで出ている課題を克服できるそうです。

今後ワクチン接種を世界で広げていくにあたり、医療設備の整っていない場所での実施も当然考えられますが、このデバイスがあるとどこでも速やかかつ確実にワクチンを接種できます。今回国防総省の予算を受けられた理由もそこにあるでしょう。ワクチン開発企業としてのオリジナリティがあると感じます。既にワクチンの治験はフェーズ1に着手しており、今月内にもINO-4800の臨床試験の中間報告を発表するとしています。

なおこのノートをご覧の方はご存知かと思いますが、アメリカ政府によるワープスピード作戦(ワープスピード計画)で5社が既に選定されています。その中にこのイノヴィオは入っておりません。ノババックスと共に漏れています。
CEPIが積極支援する会社→世界にワクチンを行き渡らせたい
ワープスピード作戦→アメリカにワクチンを優先的に確保したい

という路線の違いがあると考えられています。
当初ワープスピード作戦に漏れたワクチン会社は没落していくと予想していましたが、アナリストによるとそうでもないようです

株価は急騰。今後の見通しは?

国防総省からの予算を発表してから株価は急騰、この2営業日で60%程度上昇しています。私もニュースを見てからこの2日間で買いました。

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現時点の時価総額ですが、
イノヴィオ   37億            (単位:ドル)
モデルナ    240億
バイオンテック 124億
ノババックス  45億
です。どこも売上はほとんどないので、割安か割高かというと比較対象はワクチン株しかありません。現時点での個人的判断は「ノババックスほどの実績はないが化ける可能性が出ている状態」だと思っています。ノババックスの株価も連日急騰しており、時価総額で逆転することは今はないでしょう。マーケットの判断はノババックスとイノヴィオはモデルナ・バイオンテックと比べて割安、という感じです。イノヴィオは臨床試験の結果発表後にまた動くかもしれません。

リスクについて

リスクはもの凄くあります。まずこれはイノヴィオに限ったことではありませんが、今までまともなワクチンを世に出した実績がありません。プレスリリースで株価を上げて資金調達しているという批判がつきまといます。STATも同社の批判記事を書いています。過去に実績があったと言えども昨年の株価は3ドル程度でしたから、コロナバブルで上げていることは間違いありません。
公募増資と経営陣の株売却も気になります。モデルナの記事でも書きましたがワクチン企業の経営陣が株を売って問題になるケースが多々あります。イノヴィオではすでにキム社長は今年の初めから株を売っています。モデルナとノババックスでは5月盛り上がった時に公募増資をぶつけられました。ただ増資については一概に悪いとは言えず設備投資が必要な事業であることは確かですが、いずれにしてもこの業界はリスクがあります。
これらのことから、他のワクチン株同様1つのネガティブニュースで株価が墜落するリスクをはらんでいます。逆に言いますと既にこれだけリスクが出ていたためにイノヴィオの株価はあまり上がらなかったとも言えます。
まだまだ上がる!とここからイナゴライダーになるも良し、危ないな〜と様子見するも良しです。

投資の参考になれば幸いです。


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