【行政書士試験失敗記】11話 海賊王を目指すあの男から学ぶこと
この記事のネタを探しながら散歩をしていた時に思い出したことをX(旧Twitter)にて呟いてみたところ、思いのほか反響があり驚いたのを覚えている。
残念ながら、ここまで文章化するのに時間はかかってしまったが、おかげさまで多くの人からいいねとフォローがいただけた。ありがたいことである。これからも末永く発信できるよう努力していきたい。
さて、SNSの話からつながるが、私はひそかにSNSを運用する上で目標がある。これはあまりにも個人的なことなので詳細は控えるが、その目標を達成できるように日々動いている。今回はそんな目標についてのお話。
「海賊王に俺はなる!!」
昨今、Netflixにて実写化が放映されたあのONE PICEの主人公、麦わらのルフィが言ったこの言葉。最早マンガ史に残る名言と言ってもいい。
日本中のほとんどの人が聞いたことがあるだろう……と思っていたがこの記事を書いている最中、我が父はONE PIECEの映画再上映のCMを見て「ONE PIECEってあれだろ? ルフィがラスボスなんだろ?」と仰っていらしたので、あの世代にはまだ影響力はあまり無いのかもしれない。
頑張れルフィ。私も頑張る。
話を戻すがあなたはルフィのこの名言についてどんな印象を持つだろうか。
夢は大きい方がいいだとか、自分のビジョンを唱え続ければ叶うだとかそんなところであれば要注意だ。
ルフィは私たちに夢を持つことの大切さや、それを手放さず持ち続けることの大事さを教えてくれた。
と世間一般の人は言うかもしれない。
しかし、今改めてこの漫画を読むと私は違った感想を持つ。
ルフィのこの名言はこんな流れで言われている。
「まずは仲間集めだ 10人はほしいなァ!!」
「そして海賊旗!!」
「海賊王に俺はなる!!」
海賊王になる前に仲間、仲間の次は海賊旗。
ちゃんと計画立てて行動してんじゃんルフィ……。
そもそも彼は恩師であるシャンクスから麦わら帽子を託され、彼に海賊になると啖呵を切ってから10年修業した上で出港している。このことから、彼はかなり念入りに準備していたのは間違いない(かといって、大海原をあんな装備で飛び出すのはどうかとも思うが)。
昔の私がルフィに抱くイメージは大きい夢に向かって突き進む破天荒な青年といったイメージだったのだが、全然違う。
そしてこれがあまりにも名言として独り歩きしてしまったり、敵側から「海賊王だ? お前になんかなれるわけねーだろ!」と言われたりしてしまうので忘れがちだが、彼は夢をかなえるための準備を周到にしてきたのだ。
その後においても、彼は自分の道が実現不可能だと感じた際には一度立ち止まり、2年の修業をしている。意外と彼は無計画な男ではなく、クレバーな男なんだと気づく。
「海賊王に俺はなる!!」
さぁ、君もルフィを真似して生きてみよう!
自分の叶えたい将来のビジョンを毎日100回口に出すんだ!!
なんてありがちなビジネス本のような言葉に騙されてはいけない。彼の言葉の真の意味は
(10年修業して着実に力をつける→仲間を集める→海賊旗を作る→そして)
「海賊王に俺はなる!!」
なのだ。
我々はよくこの()の部分を見落として、気軽に彼の名言を口にしてしまっているが、非常に恐れ多い。
まずはちゃんと10年修業した上でこの言葉を口にしなければならない。
なにが言いたいか。そろそろ読者諸賢はお気づきのことと思う。
今回の私の失敗はまさに「大きな夢を語るだけの愚か者だった」ということだろう。
行政書士試験の勉強を始めた時、当初の私の目標はもちろん「行政書士試験に合格すること」だった。
そして数ある行政書士試験の成功記を読んだ私は、なるほどこのように勉強したら合格できるのか(という勘違い)と知った。そんな私は次のような思考に入った。
どうやら1,000時間勉強すれば合格できるらしい。
幸いなことに私には試験までにそれなりに時間がある。であれば私が狙うのはただの合格ではない。超高得点合格だ!!!
超高得点合格すれば、この成功記を書いている人のように自身の経験を文章にしよう。そしてその実績をもとにYouTubeで講義動画を作ってバズってやろう! そうすれば行政書士とYouTube講師の二足のわらじでウハウハだ!!!!
そうして私の目標は「試験に合格すること」から「高得点を取って合格すること」に変わる。もう、目も当てられない。合格の目途も立っていないうちに何を考えているのだ。行政書士試験を甘く見過ぎている。
当時の私は以前にも書いた通り、捨て科目、捨て問上等の精神だったので、勉強すれば行政法、民法で9割正解して合格する気でいた。これは冗談ではなくマジである。
読者諸賢におかれてはどうかブラウザバックしないで欲しい。これは夢見がちで愚かな私のいわば黒歴史だ。しかし、時として愚か者は掲げる夢だけは大きい。
それにちゃんとこの後、私にはちゃんと天罰が下るのでその点においては許してやって欲しい。
ここで誤解を恐れずに言うが、行政書士試験において、300点満点で合格しようが180点ギリギリで合格しようが得られる結果は一緒だ。
そこになんらアドバンテージも無い。どちらが偉いかどうかなどという指標にはならない。どちらも等しく素晴らしい。
高得点で合格した人間はその広く深い知識をもって試験を制し、合格ラインギリギリで合格した人間は効率良く、取らなければいけない所を決して落とさずに試験を制したと言える。私ならどちらの成功体験もぜひ聞いてみたいと思う。
話を戻そう。私の失敗について。
冒頭で述べた通り、麦わらのルフィは大きな目標を達成するための道のりをちゃんと決めていた。
海賊王になるためには10年修業して自分の能力を上げ、その上で自分の仲間が必要で、仲間を募りながら海賊たる身分を証明するための海賊旗をそろえて海賊王になる。
ルフィの夢にはそこに至るまでの中身があった。
この夢を達成するための具体的な行動指針をあらかじめ決めていたのである。
その一方で私はというと
「高得点合格者に俺はなる!」
と宣言したのはいいが、次に自分がやるべきことについてなにも中身が無い。ビジョンが無いのだ。これではひと昔前の「いつかビッグになりてぇ」が口癖の高校生と変わらない。
なにも大きいことを言うなと言っているわけではない。何事も夢は大きい方がいいとは思う。
人は自分が設定した規模のものでしか物事を見ることはできない。だからこそ大きい夢を持つことによって自分の視野は勝手に広がっていくからだ。
しかし、大きい夢はそれを叶えるためのスモールステップとセットでなければならないと私は思う。
あの頃の私は高得点合格者になりたいなら次はどうするべきか。いつまでにその次を達成するのかを明確に決めておくべきだったのだ。
それを「とりあえずがむしゃらに勉強していれば勝手に点なんて取れているだろう」という安易な考えの元、勉強していたから失敗したのだ。
一般的に行政書士試験は多くても1000時間勉強すること合格できると言われている。
例えばその1000時間勉強するを目標にしたとして
8月までに何時間勉強していなければいけないのか。
それを達成するためには一日に何時間勉強していかなければならないのか。
一日に○○時間勉強するためには午前中までに何時間勉強しなければいけないのか。
午前中に○○時間勉強するためには何時に起きなければならないのか。
○○時に起きるためには何時に寝なければならないのか。
○○時に寝るためには今どうすべきなのか。
こうやって自問自答形式で目標を立てていくべきだったのである。過去の私が1000時間勉強しようと思ったところでどうするかと問えば
「とりあえず頑張る!!! なんとかなるっしょ!!」
と答えるだろう。なんとも愚かである。
このように大きな夢=ビッグステップを踏むためには小さな目標=スモールステップを決める作業が必要だったのである。
いきなりビッグステップを踏もうとすれば、知らないうちに自分が違う方向に踏み出していることもある。
小さな歩幅から得られる成果は少ないかもしれないが、少しでも間違えている方向に進んでいれば、歩いている最中に方向転換できる。
私はそんなことも知らずにただひたすらに大股で全速力で走り続けた。走り続けた結果、体力切れで何度も立ち止まり、休み、怠けた。その結果は言うまでもない。
大きな夢を達成するには、今どうするべきかまで目標を小さくして、その上でその小さい目標を一つずつ丁寧に達成していく。それしかない。一発逆転なんてものは無い。
そんな簡単で、誰もが知っていることを私は知らなかった。だから私は失敗したのである。
私もルフィを見習っていこうと思う。
行政書士の王に、俺はなる!!!
と宣言するのであれば、まず今から何をすべきなのかを考えておかなければならない。
というか、行政書士の王とは何を定義するのか。それすら分かっていないので、とにかく頑張ろうと思う。
……こんな感じの舵取りでは船は難破するので注意が必要だ。
そもそも海賊王ってどういう定義なのか。
その答えはいつか週刊少年ジャンプに載ることはあるのか。
今後も目が離せない。
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