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再入院の可能性が高いときの退院

「いつ退院するか」は極めて重要な問題であるにも関わらず、明確な基準はなく医療関係者の間でも異なってくる。

症状は安定し日常生活も一人で問題なく送れているときは退院できる、症状がまだ強く精神的に不安定になったり日常生活に強い援助が必要なときには退院できない、と判断するのは簡単である。

症状が少し残り、日常生活も一人ではできず、退院しても再入院の可能性が十分にあるときには判断が難しい。


再入院の可能性が高いとき

「退院してもすぐにまた入院になってしまう。だから退院はまだ無理だ。」と考える職員は多い。

しかし個人的には3ヶ月家で生活し、少し調子を崩して2-3ヶ月入院するということを繰返すのは、ずっと入院しているより遥かに良いと思っている。もちろん、調子を崩した時に他人や自分を傷つけたり、病気が進行してレベルが低下するようなことがあってはいけない。

3ヶ月家で頑張って生活して、ちょっと生活が乱れて、本人も家族もしんどくなってきて「ちょっと休もうか」と入院を勧めると、本人も渋々だけど同意して入院するというのは、何の問題も無いと思う。

早期の退院が入退院を頻繁に繰返すだけに終わる、回転ドア症候群という言葉がある。十分な支援無しで退院させてしまうために、あっという間に状態が悪化し、前回よりひどい状態で無理やり入院させ、ちょっと安定したらまたすぐに十分な支援なしで退院させてしまう。これを繰返してしまう。

本人は急激にレベルが低下し治療もどんどん嫌になり、家族は退院させるのが怖くなり本人とも距離を置くようになり、職員は「また入院した」とその人への治療が嫌になり、本人が孤立化していく。

それではだめである。

そうなるならずっと入院させておく方がまだ良い。

 

入退院を繰返しながら練習

十分な支援を行い「いつでもつらくなったら入院しよう」「自宅に長期外泊する気持ちで行こう」と説明した上で退院し、しばらくは入退院を繰返すものの、次第に入院しない方法を身につけていき入院しなくなることを目指すのは良いことである。

「退院してもまた入院する可能性が高いから」という理由で長期間入院させ、再入院はしないけれど(退院しないので当たり前)、生活する場所がなくなり、生活する能力が無くなるという結果に終わるのは、「治療」とは言えない。本人をダメにさせてしまう治療は、ふらつきが強い高齢の認知症の人に対して「転倒して骨折し歩けなくなる危険性が極めて高い」という理由で長期間抑制し、歩行できなくさせてしまうという現象に近い。

 といっても、
職員「退院させてもまたすぐ入院になりますよ」
家族「ずっと入院させてください」
本人「退院したくありません」
という状況を前にすると、退院させるということは、医師の自己満足でしか無いという見方もでき、なかなか難しいことは確かである。


再入院の可能性が高いときの退院

・本人が危険な行動をとる可能性は低い
・十分な医療や生活における支援を提供することができる
・再入院を失敗ではなく、しばらく外で生活できたという成功体験としてとらえることができる
・本人や家族が不安は抱えながらでも挑戦してみようと思う
という条件を満たせば、試みてみる価値のあることである。

 10年近く入院し食事と風呂のとき以外はゴロゴロしていた人が、説得と練習を繰返し5回ほどの再入院を繰返した後に、安定した単身生活が送れるようになることもある。

再入院を繰返しながら退院を目指すことは決して悪いことではない。


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