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”ユーザーの声”ってぶっちゃけどれぐらい見てるの?ソーシャルゲーム運営のユーザーとの向き合い方のコツ|PM座談会 note vol.3

皆さんこんにちは!ゲーム業界でプロジェクトマネージャー(通称:PM)として働いている内川です。
前回までは”プロジェクトマネージャーとは”に焦点を当てた記事をリリースしましたが、最近、長年担当してきたプロジェクトが一つ節目を迎え、この数年担当してきたソーシャルゲーム運営を振り返るきっかけとして、『運営から見たユーザーとの付き合い方』を考えました。

前回の記事はコチラから

さて、日頃からソーシャルゲームを嗜まれる方には馴染みがあると思いますが、
ソーシャルゲームには『運営』という言葉があります。
その名の通り、ゲームを運営している団体を指す言葉ですが、SNSを巡回していると、この運営に向けた様々な意見を見る機会があると思います。
ソーシャルゲームはアップデートの回数も多く、ユーザーの声も届きやすいところから、『運営』と『ユーザー』の距離はどのゲームもより近い関係性にあります。
なので、ソーシャルゲームを遊ぶ上ではどうしても運営という存在を意識して遊んでしまうところがあり、不満が溜まってしまうと運営に対して意見を言いたくなることもあるかもしれません。

運営にとっての”ユーザーの声”

そんな中で届けられたユーザーの声は運営にとって非常に重要です。
なぜなら、運営は基本的にリリースしたものへの反応を見ながら新規コンテンツを作っていくので、反応がなければ何に需要があるのかも、何が求められていないのかも計ることができないからです。

特に大規模なゲーム運営をやっているとこのあたりが麻痺してきがちです。
なぜなら、圧倒的にユーザーの母数が多いため、SNSで上がってくる批判的な意見を「少数派」として取り扱ってしまい、目を向けなくなる傾向はこれまでの経験上、特に感じています。
ではプレイヤーの声に耳を傾けなくなってしまうとどうなるのか…

結果「勘」みたいなものがめちゃくちゃ鈍り、リリースする企画の内容が的外れになりやすくなります。
勘と言ってもだいぶ曖昧な言い方のため、もう少し具体的に伝えると、ユーザーが期待したものを理解することをせずに、期待と反する形で企画がリリースされてしまう可能性がぐっと高まります。

だからこそ意見は大事なのですが、そのユーザーの声に向き合うという行為は、ユーザーが思っているより実はなかなか難しいところがあります。
理由はタイトルによって様々ですが、シンプルに忙しくて見れない(内心)、見る必要性を感じていないので見ない、メンタルがやられそうだから見ないといった要因があるかなと思います。
※あくまで一例ですよ

ですが、よく言われる『神運営』になるにはこのケースを防がなければなりません。

数字を出すことが『神運営』ではない

『神運営』これも運営のTwitter等を見ているとよく見かける言葉じゃないでしょうか。
いっぽうで『神運営』ってどういう状態を指すのかは個人の定義に委ねられています。
自分にとっての『神運営』の定義とは、期待を裏切らない体験が順次リリースされているということにつきます。つまり『神運営』を目指す為に、”プレイヤーの期待が何か”というものを把握する必要があります。


ユーザーの期待の作り方は様々


例えば、ある大規模ソーシャルゲームの海外版を担当しているとします。
そのときの運営チームの方針は「日本版とは異なる体験をつくる」と決めていました。が、いざプレイヤーの声を調べてみると、実は「特に新しい体験は求めておらず、先行してリリースしている国内のゲームの企画を素直にそのまま持ってきてほしいと」いう声がほとんどでした。
しかし、そんなユーザーの声とは裏腹に、運営は当初の方針通り【国内版のリリース内容を振り返る⇒より適切な形にして改善⇒海外版としてリリースする】というフローをとり、その結果、あえて報酬を悪くしたり、厳し目のレベルデザインを採用したりしてしまいます。
すると、当然ながらこれを見た海外版のユーザーは不満を持ちます。

このように、運営としては方針を基に理論的に制作したつもりが、ゲーム体験としては顰蹙を買いやすいことをしている結果になってしまっていたのです。
プレイヤーの声を聞いていないとこういったことになりがちで、数字だけを追って本質を忘れるケースは結構あります。特にソーシャルゲームは定量的な部分が重視されがちですので…。
それは運営型のゲームにおいて大きな強みにはなり、いいこともありますが、使い方を誤ると悪い方向にも向かってしまうんですね。

ユーザーの期待への理解度をあげよう

少し話を変えて、ではその”ユーザーの期待”はどのようなときに生まれるんでしょうか。
期待を抱く瞬間というのは様々ありますが、何かと比較したタイミングで発生するケースが多いと思っています。例で挙げるとこのあたりはよくあるのではないかなと思います。

〇ビッグタイトルとの比較
 └上記の例にした国内、海外の差
 └ヴァンパイアサバイバーなんかは低価格帯で出したので、似たゲームは似た価格帯で出さざるを得ない
〇版権ものなら横展開しているときに行っている企画
 └例を挙げるとIDOLM@STERなどはシリーズ多く比べやすい
〇過去リリースした企画
 └基本的に競技性が高いゲームでない限り、過去出した企画よりもスケールダウンすると批判されやすい

これらを踏まえ、ユーザーの期待と、運営方針を少しでもすり合わせるためには、「勘」を鍛える必要があります。
「勘」はユーザーと接点を持つことで養われるので、ユーザーと直接的に関わる施策を取り組んでいくといいと思います。主に3つあります。

①SNSのチェック

めちゃめちゃ見ています。
特に機能のリリースやイベントの追加タイミングでは、監視と言っていいほど張り付きます。目的は不具合報告があれば素早く対応を進めることと、リリースした企画のユーザー反応を追うことの2点が主になります。検索するときはゲームのタイトルを検索欄に入れるだけではなく、熱中しているユーザーの反応を直接見に行くことも多いです。
SNS、特にtwitterでソーシャルゲームのプレイヤーの反応を見るときに難しいのが、どうしても反応が画一的になり、良いか悪いかはわかっても、”どの程度”良かったかはつかみにくいところがあります。どうしてもソーシャルゲームはキャラクターが前面に出てしまう以上、「かわいい!」や「かっこいい!」が感想としてでてきてあまり批判されないので、改良の参考にするには定量的に見ていく必要もあります。

例えば、「どのシチュエーションのシナリオやキャラクターイラストが受けたのか?」を見る時にRT数、直接的には売上なんかは参考にしています。
ただ、長文が投稿されやすいredditや2ch(5ch)などでは批判的な意見もそれなりに出てくるので、敢えてこちらも参考にする時もあります。
余談ですが運営のtwitterアカウントに直接要望を送るよりは、お問い合わせの画面から要望を送ったほうが、お仕事するときのフローに載せやすいため反応が早いかもしれません。
(ただ、不具合については早く反応できるので直接運営アカウントに内容頂く方が良いケースもあります)

②ユーザーアンケート

めちゃくちゃ見ています。
ゲーム内から専用のアンケートフォームに移動してもらい、そこに運営が用意した質問に回答してもらうアレです。答えてくれたプレイヤーには、後日ゲーム内アイテムなどの報酬をお渡しして、できるだけ意見を募っています。では、運営視点で特に聞いておくべきことはどんなことでしょうか?

  • 他にプレイしているゲーム

  • 最近リリースした企画の感想

  • どの程度ゲームを友だちや家族におすすめしたいか

  • 好きなキャラクター

  • 日々どのぐらい遊んでいるか

  • 回答者はどのぐらいの熱量の方か

書き出してみると、恐らくこのあたりでしょうか。
こういったアンケートの結果は、企画を考えるときの「勘」を養うのに使われます。
例えば他にプレイしているゲームの結果を見たときにもし圧倒的に強い競合(競走馬ならウマ娘、3Dなら原神など)が多く遊ばれていて、その競合ゲームにプレイヤーが時間を多く割いていることがわかったとき、自分たちのゲームはどのような戦略を取るべきでしょうか?
もし、自分たちのゲームに避けるだけの時間が少ないにも関わらず常にゲームに張り付いていなければいけないレベルデザインを組んでしまうと、ユーザーは疲弊してしまいます。このように、ゲーム全体の戦略を正しく組むためにもユーザーの意見には耳を傾けたほうがよいでしょう。

③ユーザーインタビュー

めちゃめちゃ見ています。(すみません、全部ですね)
実際に対面でプレイヤーと会話を行う場です。
最も現場感のあるやり方になるため、これも勘を養うのに有効な方法のひとつだと思います。
「どのような遊び方をしているのか?」などアンケートでは聞けなかった深く掘り下げた内容を話していくような形になります。

ユーザーインタビューは対象のユーザーの解像度をあげる作業といっても良いかもしれません。普段運営の立場にいるとユーザーのことを「新規ユーザー」「熱量の高いユーザー」という粒度でしか把握できていないことが多いのですが、ここではインタビューを受けてくれたユーザーがどういった人で、どういった友達がいて、どういった場所に遊びにいって、ゲームについて友達とどういう会話をしているかなど、その人だからそこの部分まで深く見ていきます。
逆説的ですが、世界中のどのユーザーとも違ったところを見つけていくことによって、これまでの表面的なところとは異なった別のアイデアがどんどん生み出されるかもしれません。


運営している側にとってユーザーの意見に耳を傾けるのは簡単なようで奥深く大変です。自分が本来やりたい企画とユーザーの声が一致していなければ自分の欲求にストップをかけることになりますし、それに対応する時間も必要になるためです。
自分の欲求でゲーム運営を推進するのもプロジェクトを発展させるために必要なことではあるんですが、定量的にも定性的にも考えられる辛抱強さと、ユーザーの声を聴くことの重要性を理解しゲームを作っていきましょう!

▼過去のPM座談会noteはコチラ