言いたいことは特にないが書く、ただし「錯覚」を持ち続けること

今週気づいたこと
(今週気づいたことというのは今週気づいたことではないです)

小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います。

(「空飛ぶ馬」のあとがき/北村薫)

 4年前に一度noteで書いていることの焼き増しになってしまうのだけど、特に意見は大きく変わってはいないので再び書く。(過去の方は非公開にした)

 そもそも「今週気づいたこと」を書くのは、Xで数ポストに渡って書くくらいならまとめて書いて残しておいた方がいい、あとで見返して小説に応用できるものがあるのであればそれでいいという発想の元で、それ以外は特にない。Xのポストを見返すことはないので。

 さて、自分が何のため小説を書いているのかについて再び考えてみる。昔は鬱積したものを消化するために書いていたこともあった。そのときは誰かに読んでもらうためではなく、自分の思考の整理のためだった。なぜエッセイや論考ではなく小説の形を取っていたかはわからない。(藤元杏シリーズの一作目である「彼女のための幽霊」はある意味それに近い)

 そのうち結果的にネットのどこかで公開するようになり、誰かに見せるために小説を書くようになったのだけど(これは不正確で、藤元杏シリーズの前から時々小説を書いていて個人サイトに公開していた時期があった)、小説は誰かに読まれることで「小説」として「存在」することになる。(誰にも認識されない物語は「存在」しているのか問題)

 私には私として生きている以上普段から思うことはあるし、それはある程度のまとまりがあれば「思想」というものと呼べるのかもしれない。毎回その思想のどれかの話を書くことになるけど、私自身としてはそのことを書いたとしても、その思想を「広めたい」とか、「あなたの考えを変えたい」とか、「社会正義を実現したい」とか、あるいは「人はこのように生きるべきだ」のような意識が皆無なので、読んだ人も「結局作者は何を言いたかったんだ?」という状態になるかもしれない。私の小説としてのスタンスは「読んでいる間は楽しかった。でもそれだけで特に自分の考えが変わったりはしなかったね」という物語を書きたいと思っているので、そのような感想を見ると嬉しい気持ちになる。(ただ最近は明確に「私はこれについて今回語りました」を書くことが多い。)

 私はよほど意識的に書かないといつものことをいつものように書いてしまうのだけど、それはそれで別に「悪いこと」ではないのではないか、という気持ちがある。ある作家について「新境地!」みたいな作品が出ることもあるだろうけど、大抵の作家はそれほど振れ幅の大きいことは書かないし、読者も振れすぎる作品を求めているかというとそうでもない。まったく違うものを読みたいのであれば別な作家の作品を読めばいいのだし。
 マンネリズムは必ずしも悪ではない。

 そもそも、私は小説を書くのが別に好きではない。頭の中で色々と空想を広げていくのはまあ楽しいが、それをプロットに落とし込んで、長い文章にして人に読まれるようにする作業自体はただ時間がかかるだけのものとみなしているので、この作業自体は「誰かのため」だけに存在していることになる。

 しかして創作(ここでは小説)を続けるにはモチベーションが必要になる。誰にも読まれず、お金にもならないものを書き続けるのは普通の人間には難しい。それを単に承認欲求という言葉で片付けてもいいのだけど、それは誰かに読んでほしい、反応が欲しい、という純粋なものであるように思う。つまり、「私の作品には価値があり、誰かが読みたいと思っている」という、それはやはり「錯覚」に近いものが必要になるのだと思う(それは多くの場合、本当に「錯覚」なのだ!)。実際に売れている小説家はまた違っていてリアルな読者数を把握することができるが、それでも書いている間はこの物語を欲している人がいるはずだという「錯覚」がキーポイントになる。それが執筆中の孤独を乗り切るエネルギーになるだろう。

(まあ、生きていくことにまとわりついていく「希望」や「絶望」はほとんどの場合「錯覚」であるわけだけど)

(深夜に目が冴えてしまったので30分で書いた)

直近では以下の作品を書きました。
「令嬢たちの異類婚姻譚」というテーマで募集していたもので、私なりの解釈として18,000文字を書きましたが、書いていることは「認識の重要性」「正しさの意味」「選択の価値」です。(これもマンネリズムかもしれない)
Xのアカウントで登録ができる投稿サイトで読まれたら★や♥を入れていただけると嬉しいです。
受賞作はコミカライズされるのでご支援お願いします。
(3月末下旬には結果発表されるのでそれまでに応援していただければ)
「魔術適性のない私と宮廷魔術師の静かな生活」
https://novelba.com/indies/works/944577


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?