高野連のクラウドファンディングが爆死した理由
英華発外(えいかはつがい)
→ 内面に隠れていた美しさや才能がおもてに現れること。
状況が変わったときに力を発揮する人とそうでない人が出てくる。
まさに内面に隠されていた才能が開花する人と、今までは華やかだった人が一気に失速してしまうということもある。
その差はどこから出てくるのだろうか。
高校野球に関するこの記事に注目すれば答えが見えるような気がしたので紹介しよう。
公益財団法人 日本高等学校野球連盟(日本高野連)の今
日本高野連「クラファン」で財政難を抜け出せぬ訳
(出典:東洋経済オンライン)
簡単にいうと、新型コロナウイルスの影響で高野連の運営が危機に陥っているという記事だ。
そんな高野連が打ち出した秘策ともいえるクラウドファンディングが爆死しているという辛辣な内容である。
せっかくなので、記事にも記載されているスコアを見てみよう。
公益財団法人 日本高等学校野球連盟 財務諸表
2018年の経常収益の合計は約12億4,600万円、2019年の経常収益の合計は約11億4,800万円。
それに対して、入場料収益は、2018年が約10億7,900万円、2019年は9億8,700万円。
次に収益が多いセグメントは、いずれも配布品収益となっていて、こちらを足すと経常収支の90%近くを占めることになる。
一般的な会社として捉えると、売上のほとんどが入場料とそれにまつわる配布品で成り立っているということだ。
毎年この収益を見込んで予算を立てていたのが、新型コロナウイルスの影響で2020年は大会自体が中止となったので入場料は0円。
そして、2021年も大会関係者は入場できたとしても無観客になったので、そこまでの収益は見込めない。
さらに、そもそも公益財団法人という立場にあるため、一般の企業のように利益を追求することをマストにしているわけではない。
その姿勢は、甲子園球場では夏は2017年まで、春は2019年まで外野席を無料にしていたことからも見て取れる。
約2万席ある外野席には外野の入口で止められることはなく、誰でも自由に出入りして無料で観戦できたのである。
また、春夏の甲子園では日本高野連はNHK、民放から放映権料を受け取っていない。
放送局は野球振興に協力して放送しているという建前になっているからだ。
となると、入場料だけしか収益のない高野連が財政難に陥るのは当然ともいえる。
クラウドファンディングのボーダーライン
そんな高野連が危機感を覚えた甲子園の運営に打った手がクラウドファンディングである。
ところが、全く共感を得ることができず、残り約1週間で目標の1億円に対して約12%の1,200万円しか集まっていない。
この原因について先述した記事には、PR方法が良くないとか、お返しとなるリターン品が良くないとかいろいろと分析している。
確かにそれも一理あるのと思うが、共感を呼べないのにはプラットフォームの背景を見透かしているからだと思う。
要するに、クラウドファンディングが一般化してきたことで、支援する側の人たちの目が肥えてきているというか、簡単に乗っからない風潮になっているということだ。
クラウドファンディングを実施しているプラットフォームは朝日新聞社が作った、A-portというものだ。
正直、このプラットフォームは今回の高野連のプロジェクトをやっていることで知った。
だからといって、知られていないプラットフォームで立ち上げたから響かないということを主張したいのではない。
とりあえず甲子園の強いコンテンツを出せばお金が集まるだろうというイメージが強いと感じざるを得ない。
朝日新聞社のパフォーマンスにしか見えないことが見透かされているのである。
本当に支援を受けたいなら、甲子園というコンテンツはやり方によっては、いくらでも応援する人が集まる強いものだ。
それが全く奮っていない。
乱発されているクラウドファンディング
紹介した記事では、このメインのクラウドファンディングのプロジェクトと軽く他のプロジェクトのことにも触れているが、私も見て驚いた。
地方大会の支援プロジェクトが乱発されているのである。
残り約1週間を残してのプロジェクトがほとんどだが、中にはすでにプロジェクトが終わっているものも含めて抜き出してみた。
・岩手県:目標100万円に対して約37万円の達成率約37%
・長野県:目標300万円に対して約79万円の達成率約26%
・三重県:目標300万円に対して約84万円の達成率約28%
・石川県:目標400万円に対して約273万円の達成率約87%(終了)
・長野県:目標300万円に対して約262万円の達成率約87%(終了)
・北海道:目標500万円に対して約404万円の達成率約80%(終了)
・神奈川県:目標500万円に対して約460万円の達成率約89%(終了)
・千葉県:目標500万円に対して約474万円の達成率約94%(終了)
・岩手県:目標300万円に対して約117万円の達成率約39%(終了)
・香川県:目標160万円に対して約118万円の達成率約72%(終了)
・福岡県:目標500万円に対して約178万円の達成率約35%(終了)
・大分県:目標300万円に対して約69万円の達成率約23%(終了)
・長野県:目標300万円に対して約68万円の達成率約22%(終了)
・沖縄県:目標300万円に対して約67万円の達成率約22%(終了)
・秋田県:目標200万円に対して約78万円の達成率約39%(終了)
・島根県:目標300万円に対して約80万円の達成率約26%(終了)
・鳥取県:目標250万円に対して約88万円の達成率約35%(終了)
・沖縄県:目標500万円に対して約101万円の達成率約20%(終了)
・静岡県:目標250万円に対して約39万円の達成率約15%(終了)
・山形県:目標80万円に対して約56万円の達成率約69%(終了)
・山梨県:目標100万円に対して約38万円の達成率約38%(終了)
・秋田県:目標200万円に対して約38万円の達成率約18%(終了)
これはなかなか酷い結果だ。
30%にも満たないプロジェクトが乱立している。
本気度が伝わらないクラウドファンディングの最たる例である。
まとめ
なぜクラウドファンディングについてここまで語れるのか。
その理由は、その昔に味わった苦い経験があるからである。
ときは2016年頃、FAAVO広島というプラットフォームを運営していたことがある。
クラウドファンディングを広島で少しでも拡めようと躍起になっていたが、当時の広島では2歩も3歩も先のことだと受け取られて、ほぼほぼ受け入れられることがなかった。
いくら情熱を持って語っても頭の上にはてなマークが出ているのが明らかにわかったし、儲かるビジネスではなく、あくまできっかけとしての位置づけだったため、撤退した。
ただ、その時の経験はstak社を立ち上げたときに役に立つことになる。
stak社で実施したクラウドファンディングは、まずますの成果を挙げることができたのが、そのエビデンスだ。
無名であっても、強いコンテンツがなくても、考え抜いたプロジェクトには一定の人が共感してくれる。
であれば、有名で強いコンテンツがあれば、もっと共感を生むはずなのに、人の感情を掴むのは単純ではない。
今まで否定してきた側の人間が急に手のひらを返しても興ざめするだけなのである。
なにも偉そうに批判や否定をしたいのではなく、自分自身に言い聞かせる意味でもまとめてみた。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。