GDPがどーたらこーたら

 なんか世間はGDPが世界4位になったとかそういうくだらないニュースで騒いでるなあって思って見ていたが、予想以上にあれやこれやと言説が飛び交っているんで、なにをいまさらという意見だけ述べておこうかなというのが今回の記事の趣旨。
 いや、みんなそんなにGDPを重視するなら、なんでGDPを下げる効果の政策にもっと反対しないのかなってずっと思ってたんで。言っとくけど財政政策とか金融政策みたいな短期経済への政策じゃないよ。
 なにが言いたいかというと、環境の話です。

 僕はギリギリ1970年代生まれだけど、実質的には1980年代を生きた人間で、昭和末期の日本の環境がどんなものだったかをある程度見てる。当時はガムでもたばこでもポイ捨ては普通だし、うちの親父は外に出かけるとしょっちゅう電信柱に立ちしょんべんしてた。真っ昼間でだ。いまだったら捕まってもおかしくないが、その頃はそれが普通だった。
 で、それがいまや別次元にきれいになった。1980年代と2000年代では、日本の環境は明らかに激変している。その過程で当然ながら日本はかなりいろんな美化運動をやってきたんだけど、その中で僕が当時から気になっていたのが「ゴミ箱の減少」。
 これは僕、高尾山の運動から始まったと認識してる。ゴミ箱を減らしたらゴミのポイ捨ても減ってゴミ問題自体が解決したと、一時期喧伝してた。それからしばらくして町中でのゴミ箱が激減した。自治体がゴミ収集を有料にしたりもして、そのせいもあってコンビニが店頭にゴミ箱を出さなくなった。私鉄もいまやゴミ箱を置いている場所が少数派になり、JRもかなりゴミ箱が減ってる。
 美化運動としてはいいんだろうし、環境問題にも貢献してる。だけど、なぜか誰も指摘してないんだけど、これ、限界消費性向を下げてるよね。消費しにくくするんだから、当然ながら消費は減る。

 限界消費性向が下がるってことは政策効果に間違いなく負の影響が出るし、なんなら普通の均衡モデルだと消費者の選好が変化するわけだから均衡も変化して、自然GDPに影響を与えてる。たぶんゴミ箱の撤去はGDPにけっこうな悪影響を与えてるけど、誰もこれを指摘してないんだよね。
 最近はレジ袋の有料化もあったけど、ああいう政策は環境対策と引き換えに買い物の利便性を下げてる。買い物の利便性が下がれば限界消費性向はそりゃあ下がるわけで、やっぱりGDPに悪影響を与える。他にもいろいろあると思うけど、ゴミ箱の件はなぜか誰一人言わない。
 念のために書いておくけど、僕はGDPを上げるためにゴミ箱を増やすべきだとか、美化運動をやめるべきだとか、環境対策をやめるべきだとか、そういうことを言いたいわけではない。僕が言いたいことはもっと単純に、いまの日本はGDPを引き換えにして得た良質な環境下にあるということだ。その二つは緩やかなトレードオフの関係にある。失われた何十年とか言ってる間に、日本の環境は明らかによくなっている。それがGDPで測れないなら、それは単にGDPの欠陥でしかないので、気にしなくていいのでは? と思うのだ。
 それでもどうしてもGDPの世界順位なんてものが気になるなら、環境を80年代に戻したら? たぶんGDPは上がるよ。その代わり日本はいまよりずっと住みにくくなると思うけど。

 そういうわけで、GDPごときで大騒ぎするのはそろそろやめにしませんか、という話。
 付け加えると、僕はコロナ禍の時を除いてだいたい1年に1回以上は海外の学会で発表するために出張に行くけど、アメリカのGDPとかハリボテだと思ってるよ。あっち、そこそこ高級なホテルのレストランで50ドル払って、炭化したクソ苦いステーキが出てくるんだよ。僕はGDPがこういう品質の差を適切に測れてると思わないので、あんなもんをなんでみんな気にするんだろうなって。そんなとこです。以上。

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