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第3回 生涯発達の理論

第3回講義は遠藤利彦先生が担当。先生の専門は、発達心理学。
講義動画のリンクはこちら
タイトルには「生涯」発達とありますが、
本講義の中心トピックは、一般的な発達心理学でした。
つまり老年期にフォーカスする話題はそんなになかったです。
それらは第4回にて扱われるのかもしれません。

<講義ノート>

・まずは発達心理学内での有名なトピック

発達心理学の従来の研究対象は幼少期~青年期。
 それ以降にはフォーカスしてこなかった。(今からみると不思議^^;)

ボウルビィのアタッチメント理論
  親と離別した子どもを対象には発達の問題がありがち。
  なので、その発達の問題を探ってみた。
  
  その結果見出されたのは、
  問題は、
  関係性の中での刺激の剥奪(母乳をもらえないなど)
  よりは、
  関係性そのものの剥奪(親とくっつけない)
  にあるということだった。

早期経験の影響メカニズム
  1高次レベルの影響経路
   心理行動的制御メカニズム
    子どもに心理的に必要なものが得られない
    ⇒発達に影響する(ex.虐待)
  2隠れた影響経路
   神経-生理学的基礎
    (ex.視床下部は恒常性などを司るが、
     それが影響を受けると、子どもが少しの刺激に
     過剰反応するようになるなど)
   

アタッチメント理論の対象
 母子関係および親子関係に関する理論、
 関係性とパーソナリティに関する生涯発達理論


 attachment and lossー大切な関係性とその喪失
 関係性もその喪失も、↑のものに、大きな影響を与える
 ーfelt security and anxiety fear grief

 というのも、人は
 特定個体とくっつくことで、情動制御(ネガティブな感情への対処)をしている。
最終的に頼れる人がいるという意識→主観的安全感を持てる
→人格の組織化・長期的適応(安心)

したがって、
特定のアタッチメント対象との緊密な関係性は、
生涯ずっと、重要である。

もしも、安全拠点を喪失したら
→傷→生涯を通して甚大
 ex.配偶者を亡くした時
・精神的麻痺→渇望→精神的秩序の崩壊
・絶望→立て直し


・年齢による「ソーシャル・コンボイ(護衛)」の変化
 年を取ると、親密な他者、関係性のある人が減っていく。
 友人の数、職場での関係性が減っていくとされる。

発達/成長/加齢の心理学での定義
「発達」=心身全般の時間的変化
「成長」=身体面の変化
「加齢」=中高年期以降の変化

「成熟」・「発生」
=遺伝的要因に由来する変化
(遺伝:親由来の遺伝子、ヒトという種由来の遺伝子)
「学習」
=環境要因・自律的活動に由来する変化

従来の発達心理学の対象
乳幼児期~青年期(成熟するまで)
ー中高齢期は対象しない

成人期:発達停止
中高年期:発達下降期
とされてきた。

中高年期へのイメージは、「暗くて魅力がない」
このイメージが広く根深く定着している。

しかし、転換点
・生涯発達心理学が必要とされた背景

社会通念と実体の解離ー中高年には充実した人もいる
高齢社会→高齢期の研究の必要性がある
高齢期における、人生の激変を余儀なくされるケースへの着目
(失職や知り合いの死)
発達心理学内部からの疑念:
幼児期に発達が決まってしまうというのはほんと?
生物学主義でよいか?

・高齢期研究はバックワード式の探求

生涯発達心理学の発想
1人間の発達のステージにおいて、完成体ってあるの?
発達はずっとあり続けるのでは?
2発達にはいろんな方向性がある。一様ではない。
人によってはこの方向、あの方向
3事象を「獲得」「喪失」の表裏一体で捉える
(ネガティブに喪失という一面だけで捉えない!)
ex. 忘れぽくなった(喪失)→記憶補助のためのメモを使いこなせるようになる(獲得)
4発達は死ぬまで起こる
5発達は文化や歴史に影響される
6発達は色んな要因が相互作用しながら進む
(標準的要因・社会的要因・個別的要因に分類される)
7アプローチは多分野連携で
高齢という事象ー政治、心理、経済などなどに横断
8自己主体性の復権
「こうだったら幸せだろう」と本人以外が押し付ける
のではなく、「幸せかどうか」は自分で決める、という考え。
自己への焦点を当てる。
9発達の世代継承性

・生涯発達心理学の関心

個人内ー誕生から死までの個人内の変化、一貫性

個人間ー人と人との間の共通点と相違点

・発達心理学の研究方法
横断法ー衰退に着眼しがち
縦断法ー維持に着眼しがち
時代差法ー複数コホートを同年齢時に調査
系列法ー横断法と縦断法を組み合わせる

研究手法の落とし穴
横断法ー個人間要因が統制されてない
縦断法ーサバイバー効果、練習効果がありうる

レトロスペクティブ:個人に過去について語ってもらう
→語り手のバイアスがありがち
プロスぺクティブ:
将来になって実証してみると、
レトロスペクティブの方向と違う結果がでるかも?!

<感想>

ジェロントロジーとの関連はまだそれほど登場してないですね。
次回に期待。
一般的な発達心理学についての所感は以下のとおりです。私の専攻は心理学なのですが、発達心理学を勉強したのは久しぶりでした。そこで思ったのは、発達心理学の研究は困難そうだな~ということでした。横断的研究や縦断的研究法はなかなか剰余変数の統制が難しいからです。研究者は頑張ってるんでしょうね。

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