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(第5回は無し)第6回疾病・障害とヘルスプロモーション

第6回講義の担当は、秋下雅弘先生。
高齢者の医療に携わっておられる方です。
講義のリンクはこちら
※第5回講義「身体機能の変化と適応」は配信がありませんでした。

本講義のテーマは、
疾病・障害を防ぐためには何が必要か?
でした。
第2回の講義でも、老化の中での機能低下が取り上げられましたが、
今回は更に詳しく、疾患・障害が詳しく説明されました。

<講義ノート>

・まずは、日本の高齢者のマクロな状況
後期高齢者(75歳以上の人)が増加していくー将来は20%を超える

次に、
・その医学的な問題

統計データから、
後期高齢者の50%は重篤な疾患を持つ。
30%は障害を持ち、介護を必要とする。
(ということは、将来、
日本人の10人に1人は重篤な疾患を持つという状況に?!
医療ニーズが高そう)

では、介護が必要になる原因は?

・要介護3大原因疾患
 - 脳梗塞ー脳血管の病
 →麻痺、認知症へ

 - 骨粗しょう症
 女性に多い
 →骨折→動けない→介護が必要に

 - アルツハイマー病
 男性より女性の方が多い

・高齢者の疾患、病態上の特徴
- 病気を合併している人が多い
- 症状がイレギュラー
 「●●病だから、こういう症状」のような定型的診断が通用しないことも
- 薬物への反応が一般と異なる
- 老年症候群が増える
- 認知機能など生活機能が低下しやすい

・前期高齢者と後期高齢者の一般的なちがいー医学上の差ー
 前期高齢者
 - 老化の徴候(白髪など)、老年疾患の増加
 - 元気で活動的 (病院に一人でいけるなど)
 - 中年期からの切り替え
 ※医学的には前期は「高齢者」といわなくてもいいかも?
  ↓
 後期高齢者
 - 老年疾患の重複
 - 日常生活機能障害
 - よくある虚弱な高齢者のイメージに似てるよ(これ、偏見では?)

・寝たきりへのプロセス ー老化⇒疾患⇒障害ー
ケース1
骨量低下 (30代から徐々に進行)

骨粗鬆症(ある程度を超えると、病気レベルに)

骨折、症候あるいは障害 →寝たきり

ケース2
動脈硬化(20代でも進みつつある)

脳卒中

麻痺、失調 →寝たきり

ケース3
神経変性(20代初期から潜在的に進行)

アルツハイマー病(ある程度以上になると病気として顕在化)

認知症 →寝たきり


・疾患・障害への解決策
- 予防
アンチエイジング =老化そのものをふせぐ
生活習慣病予防
EBM=イベント予防
介護予防

- 事後
要介護高齢者のケア


・高齢患者が、医療サービスに望むものは?

病気を回避したい、長生きしたい?
実際は、それよりも重視していることがある。

それは、
生活機能障害の軽減、QOLの改善、介護者の負担軽減など。

まとめると、
自立、周囲の人に迷惑をかけないこと
をより望むものらしい。

つまり、
長生きできる治療を提案が、ベストとは限らない。
(本人の目線を持つことが大切なのでしょうね)


・高齢者は、複数の疾患を有する 
大学病院老年科外来患者での調査によると、
患者は平均で3.5種類の病気があり、4.5種類の薬を飲んでいた。

事例)
糖尿病、動脈硬化、骨粗しょう症、白内障、抑うつ、足の障害....
それら全てを持つ人がいた。
→毎日それぞれの専門に診てもらうのか?
 本人の希望に沿う、必要なケアを検討せねばならない。

更に、疾患は単なる合併ではなく、症候と複雑に絡み合っている。

・自立できているかどうかを評価する
日常生活機能:低下すれば要介護となる
料理、移動、掃除などの身辺が自立して行えるかを評価する

手段的ADL:日常生活機能を測るための尺度
Lawton とBrodyによる。
公共交通機関を使えるか、お金の管理ができるか、
電話を使えるか、などの項目からなる。

基本的ADL
移乗、移動、食事、排泄、更衣などができるかの項目からなる。

以上の機能は、
65歳以降で落ちはじめる。
75歳以降になると、損なわれてくる。


・薬に対しての反応の仕方が異なる とは?
高齢になるほど、副作用が出る頻度が高くなる。
さらに、
服用している薬の数が増えるほど、頻度が高くなる。

それはなぜなのか?

①疾患上の要因
複数の疾患を有する →多剤服用、併科受診
慢性疾患 →長期服用
症候が非定型的 →誤診による誤投薬

②機能の要因
臓器予備能の低下 ex.)腎機能は低下していく
→薬が効きすぎるなど

③医療の要因
合併症の配慮、服用歴への配慮不足による、投薬過誤も起こる...。

だから、高齢者への処方の原則があり、
それは、医療側の注意と患者側の注意の二項目からなる。

患者側の注意に挙げられるのは、
- 薬をほしがらない
- 他院の処方を正確に報告する
- 出された薬をきちんと飲む
- 薬が病を治すとは限らない。病はそもそも治らない類のもので、
   経過を良くする効果だけということも多い。

・症状が非定型的とは?

事例) 食欲が全くない...という異常→診療
   →実は肺炎だった!

高齢者の非特異的症状
- 発熱のない感染症
- 呼吸器症状のない肺炎
- 胸痛のない心筋梗塞

このような特徴があるので、
なんとなく元気がない、食欲がない時には慎重に対応する。

・後期高齢者医療制度もある
後期高齢者にマッチする医療のための取り組み。

在宅療養生活の支援ー訪問看護の充実など
外来医療での工夫ー慢性疾患等に対する継続的な管理の評価
終末期医療ー終末期における診療方針等について評価

・加齢にともなうホルモンの変化と健康
加齢にともなうホルモンの変化は重要。

女性ホルモンは血管障害を防ぐ効果をもつ。
女性ホルモンエストロゲン ー閉経を境に、濃度が低下していく
⇒血管運動性障害など様々な障害が起こりやすくなる

では、ホルモンの投与をしたら、効果あるの?
→実際は、投与した方が心筋梗塞などのリスクが上がってしまった
→投与には時期などの工夫が必要なようだ。

次に、男性ホルモンの濃度の低下と疾患はどうか。
男性ホルモン濃度の低下の時期は、女性と違って個人差が大きめ。

徐々に下がっていく→精神神経機能、血管機能が低下、認知機能低下?

・ホルモン補充療法の課題
 日本人のデータが少ない 
 基礎研究の不足 
 ホルモン投与の時期、成分、量?有害作用は?など未解明の点が多い。

・代替療法は?
ホルモン様作用をもつ成分を摂る ex. )ポリフェノール?

ホルモン濃度を自力で高める工夫 ex.)運動?栄養療法?

・ヘルスプロモーション

推進のための施策に、「健康日本21」がある。

地域運動教室が、認知機能・運動機能の向上につながることを
示唆する研究もある。

ホルモン濃度が運動療法期間中のみで上がったことを示す研究もある。

・要介護の性差
女性の方が男性より一般的に7年くらい長生き。
だが、女性の方が要介護に陥りやすい。

・要介護に至る原因の性差
男性ー脳血管疾患の割合多め
女性ー認知症、骨折、衰弱の割合が多め

<感想>

老化に伴う疾患、そこに至るプロセスがよく分かりました。
疾患を持つ高齢者の方の深刻さも感じました。50代で元気そうでも、
徐々に身体の衰えは進んでいて、ある程度の時点で顕在化するということなのですね。健康を志向するために効果的なのは、健康のために何が必要なのか?を知ることだけでなく、どのようにして健康が損なわれていくのか?を知ることもなのではと思いました。実際、今回の授業で自分の将来の健康状態が怖くなりましたね。

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