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パラスポーツをさらに盛り上げる大きな車輪がもう一つあると思う

 パラアスリートを含めたすべてのアスリートの方々にリスペクトを込めて,

「障がいのない人もパラスポーツを本気で楽しめる世界」

はとても面白いし,パラスポーツをさらに盛り上げるための重要な車輪になるのではないかと思います.
 具体的な姿としては,「地域の高校に車いすバスケ部がある」,「週末に各地でボッチャの大会が開かれている」などです.

 なぜそう思うのか?についてこれから書いていこうと思います.

健全な事業を創り出すトリプルミッションモデル

 早稲田大学スポーツ科学部の平田竹男先生が提案したモデルとして,トリプルミッションモデルというものがあります.

図.トリプルミッションモデル図[1]

 このモデルはスポーツビジネスにおいて,勝利,普及,市場が互いに良い影響を与え合う姿が理想的であるとするモデルです.
3つのいずれかがポジティブな影響を受けると,右回りの好循環と左回りの好循環が起こり,競技の発展につながるという考え方だと僕は解釈しています.

 例えば,マラソン選手の活躍(勝利)の活躍により,シューズメーカーの規模が拡大(市場)し,市民ランナーが増加する(普及)という右回りの好循環や,
 高品質のシューズ開発(市場)により,日本人選手が大活躍(勝利)し,マラソン大会の視聴率が高まる(普及)というような左回りの好循環も考えられます.

トリプルミッションモデルの拡張

トリプルミッションモデルは以下の図のように拡張して考えられるのではないかと思います.


図.拡張したトリプルミッションモデル図

 「普及」は「するスポーツ」と「観るスポーツ」に分けて考えることで,より有効なモデルになると思うのです.
(2つの普及も矢印でつながるかもしれませんが,ここでは言及しないことにします)

 例えば,テニスの錦織圭選手が2014年に全米オープンの決勝に進出し,2016年のリオデジャネイロオリンピックで銅メダルを獲得しました.
 この頃,トリプルミッションモデルで起こっていたこととしては,以下の図のようになると思います.

図.テニスの拡張トリプルミッション図

 錦織選手の勝利をきっかけに,「観るスポーツ」としての左側の好循環に加え,「するスポーツ」としての右側の好循環も生まれたのではないかと思います.

パラスポーツの拡張トリプルミッションモデル

 パラスポーツの場合はどうでしょうか.「観るスポーツ」としての左側の好循環は生まれている競技が多いように思う一方,「するスポーツ」としての右側の好循環は生まれにくい現状にあるように思います.

 障がいの無い人が車いすバスケ部に入部するというような世界は描けないでしょうか?
 僕は拡張トリプルミッションモデルの,右側の好循環はパラスポーツの盛り上がりにおいて,強力な車輪として働くのではないかと思いました.

参考
[1]平田竹男. "トリプルミッションと国際政治からみた日本サッカー界の発展分析." スポーツ産業学研究 17.1 (2007): 10-19.


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