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優しく見える人ほど、狂気に満ち溢れた人間かもしれない「死刑にいたる病」

感想述べる上で、軽いネタバレはします。

「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」「孤狼の血」「ひとよ」など人間のうちなる怖さや狂気を表現した作品が多い、白石和彌監督の長編13作目となる作品。

■あらすじ
教育一家の中、落ちぶれたことにより父から見放された息子の雅也(岡田健史)。ある日、24人の殺人を犯した連続殺人犯の榛村大和から会いたいと手紙が届く。会いに行くと、最後の殺人は冤罪だからと他に犯人がいることを証明してほしいと依頼を受ける。興味本位で事件を調べる雅也は、真相に近づくにつれて残酷な思惑に気付くことになる。

■感想
怖面白かった。

映画の冒頭から終わりまで、不気味な雰囲気に包まれた作品。
まさかあれが、花びらではないとは。。。

家族から落ちこぼれ認定されている雅也は、榛村大和から真犯人を探す依頼を受けて、真相に近づくにつれて優秀であることを榛村から褒められ、おそらく雅也自身に自信をつけていく姿が表れていた。しかし、それは全て榛村大和がこれまで犯行に及んだ経緯と同じであることに後半気付かされる。
この物語は、どこまでいっても榛村大和の遊びだったのだと。
原作とは異なる信じた相手さえも。。というラストシーンも見事だったと思う。

少し拷問シーンが過激だった。
指がアップになるシーンは榛村大和が綺麗な指を好んでいたと思われるが、拷問シーンの印象が残っているためか、その後の指がアップになるたび、ゾクっと恐怖が蘇る。
恐るべき演出だと思うし、拷問シーンは手で目を伏せる観客も少なくなかった。

工夫を凝らした面会シーンは本当にすばらしかった。
雅也が事件を調べていく中で、榛村大和という人物を理解するたびに面会シーンでのアクリル板ごしに写る大和の姿が雅也と重なっていく。まるでシンクロしている姿を見せていた。

信頼度が増すたびに、シンクロ度が増す。
雅也と観客は同じ思いで事件の真相に近づくんやけど、たどり着いた結果。
雅也も、見ている観客さえも、榛村大和に遊ばれている気がした。

キャストが素晴らしかった。
まずは阿部サダヲの見事な怪演。
地味で平凡な役から、コメディ役、知的な役とさまざまなイメージがあり、どうゆう人間が読み取りにくいイメージがある阿部サダヲさんだからこそ、今作の不気味さがより際立っていると思う。

そして、岡田健史さん演じる雅也も良かった。
落ちぶれて自信が無い所から、事件の真相に近づくにつれて人が変わっていく姿は良かったし、その演技によって観客も雅也と同じように榛村に翻弄されてしまった。

阿部サダヲさんのインタビューに書いてあった、拷問シーンで白石監督がどうしたら痛そうに演出できるか楽しそうだったというエピソードが怖面白い。

パンフレットのインタビュー記事も充実しており、読み応えありました。

拷問シーンや暴力シーンの撮影には、基本子供が演じるため、かなり注意深く演出していたらしい。
少し前に、全く別の映画で子供に対して暴力シーンを取るために思いっきり暴力振りまくっていた監督いて、炎上していたけど、白石作品ではそんなことはさせていないのも良いと感じました。

あっという間の2時間。
恐ろしすぎて、おもしろくて引き込まれます。
さすが白石和彌監督。

暴力とか過激なシーンが苦手な方は注意してください。

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