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着替えや移動がゆっくりすぎる子は、急かすべき?

発達障がいをもつ子の中には、園生活での着替えやお散歩準備など手順が複数あり、活動と活動の切り替えになるものの際に、どうしても行動がワンテンポ遅れる子がいます。前回の投稿では、行動が遅れる理由の1つとして、「行動を起こす前段階の理解に課題がある子」がいることを、解説しました。

今回は、同じ発達障がいのお子さんの中でも、「行動のプロセスに制限がある子」、つまり、行動がどれだけ頑張ってもゆっくりになったり、途中で止まってしまう子について、まとめながら対策を考えていきます。

※この記事は、小児科医石川道子先生と言語聴覚士ももさんとのInstagram Liveの内容を引用しています。
https://www.instagram.com/hattatsu.hoiku.gakkou/

複数あるプロセスが覚えきれない・定着しないタイプ

生活の中には、プロセスが溢れています。例えば、園での着替えであれば、着替え袋から着替えを出す→Tシャツを脱ぐ→肌着を脱ぐ→新しい肌着を着る→新しいTシャツを着る→ズボンを脱ぐ→パンツが汚れていたら変える→ズボンを履く・・・と細いステップの連続です。そこに、「服は畳んで袋に入れる」であったり、「服は床に置かずに机の上に置いて着替える」のような、年齢が上がるごとに、求められる課題が加わってくることもあります。

一般的には、3歳を過ぎてくると、一連の流れを毎日毎日繰り返し行うことで、ある程度ステップの把握ができるようになり、手助けがなくても自分で着替えができる子が多いと思います。

しかし、発達障がいを持つ子の中には、繰り返し練習をしても、なかなかステップを覚えられない子がいます。もちろん、発達障がいの子全てがステップ理解が悪いわけではないのですが、特段ステップ理解が進みにくいタイプの子がいるのも事実です。

ステップ理解が進まない理由はいろいろと考えられますが、頭の中のチューニングが合ったり合わなかったりすることで、全体を通して何してるかが掴みにくいことが、1つの理由であると考えられます。大人が横についている時で具体的に指示されると動けますが、所々大人が付いたり離れたりしていると、一連の流れが理解できなくなる傾向にあります。

だから、ステップをなかなか覚えられない子への対応としては、1つ1つのステップを全部本人に経験させることよりも、最後のステップだけを完成させる経験を優先させることが大事です。最後だけを完成させることで、「その行為に対してのイメージ」が深めていきたいのです。

具体的には、例えば靴下を履く行為だったら、靴下を広げて、足を入れる所は大人が手伝った上で、最後の引っ張り上げるところだけ本人にやらせて「靴下履けた(できた!)」とすることです。

次のステップとして、それが簡単にできるようになれば、1つ前のステップを練習します。靴下を大人が広げた上で、足を入れる所からやってもらいます。そうすると、だんだん順番分かってくるのではないかと思います。

実はステップ理解に乏しい、真似が得意なタイプ


よくよく子どもを観察しないと、ステップ理解ができる/できないを見誤ることがあります。

例えば、プロセスは分かってないものの、たまたまよくできる友達の側で動くことが多く、真似して動いているうちに、なんとか完成している子です。
しかし、その子に「次は何するんだっけ?」と聞いてみても、答えられなかったり、動けなかったりします。万が一、いつもくっついている友達と離れて動く自体が発生すると、途端に着替えができなくなる場合があります。

真似っこが得意すぎると、自分で考えたり、試行錯誤する経験が積み上がらないので、自分自身が理解できる体験を提供する必要があります。

例えば、1つ1つ着替えの工程での因果関係を大袈裟に教えていきます。服を着る時に目を瞑ってて着方が定着しないという課題があれば、首が穴から出た時に「んーー、バァ!」のように、穴に首を通した結果何が起こるのかを分かりやすく知らせていきます。

また、「先生がやるのを見てね」と伝えて、その場で真似させて、よくできる友達以外の人とも練習していくことも必要です。

体力的に完成が遠いタイプ

体をうまく使うことができなかったり、不器用で思い描いたように指先を動かせない子は、着替えなどのステップの途中で、疲れ果ててしまい、作業が止まってしまうことがあります

大体お散歩は午前中にいくので、お散歩のあとは、手を洗って、着替えて、食事の準備をして、とドタバタです。体の発達に弱さのある子は、そもそも散歩でエネルギーを使い果たした後に、このステップを全部乗り越えるというのは、すごく大変なことなのです。

体や体力に課題があって、行動が遅れる子への対応としては、ステップが止まった時に「そこで休憩してて良いよ」と言ってあげることです。休んで復活できたら、また作業を再開できるはずなので。

注意力の問題があるタイプ

着替えのステップ自体は理解できているのに、途中でいろんな刺激をみてぼーっと手が止まってしまう子もいます。このタイプは、また注意が戻ってきたら再開できるパターンが多いです。

園では、仕切りを置いて気が散る刺激を減らしたり、周囲の人が着替えおわり、気が散る要素がなってから着替えをさせると良いと思います。

着替えが遅い子の援助は、先にするのか、後回しにするのか

園の先生たちは、大忙しです。他のお子さんもいる中で、何かしらの理由で着替えに手助けがいる子の援助は、なかなか手が回らないことがあるのも当然です。

そこで、考えたいのは、援助のタイミングです。つきっきりでの援助が必要なお子さんは当然いるので、その子を真っ先に援助するのか、後で手が空いたタイミングで援助するのかを見極めていきます。

援助のタイミングを決める決め手は、「着替えが終わった後にどんな行動をするか」です。もし、1番最初に援助して着替えを完成させたとしても、そのあとの自由遊びで制御不能な行動につながる子は、着替えの援助を最後にするのがお勧めです。一方、ずーっとぼーっと座ってる子だと、着替え全体に時間がかかることが多いので、1番最初に援助をして完成しておくことで、次の活動でみんなが動くタイミングに合わせて一緒に動くことを教えていけると思います。

ステップ理解の有無の確認の仕方

ステップの理解ができる/できないを見分けるためには、言葉が喋れる子だと、「次何するのかな?」と尋ねてみます。もし、ズボンを取りに行ったりする姿が見られれば、流れは分かってると確認できます。

注意が逸れやすい子は、環境をスッキリさせてあげることで、動きが速くなれば、ステップは理解しているのだなと確認できます。これが理由で遅いのかな?という仮説をたてて、結果で判断していくことの繰り返しで、ステップ理解の有無や対策を確認していきます。

園でよく見られることとして、「ステップが分かってる」と見立てをされると、できる日やできない日がまばらだった時に、「やる気がある日はできるのに、ない日はできない」といった、子どものやる気の問題とみなされている場合が多いです

しかし、表面上は「行動が遅い」であっても、注意の問題、体の問題、理解の問題など色々な要因がある、実は複雑な問題なので、さまざまな角度から検討していく必要があると感じます。

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