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「密着×モンスター井上尚弥」を観て感じた、ナレーターをキャスティングする時に必要なこと

先日、テレビ朝日で放送された「密着×モンスター井上尚弥」。
今や世界最強のボクサーとなった井上選手の750日間を追い、1週間前に行われたばかりの東京ドームでの試合まで入れるという速報性もあり、見どころの多いドキュメンタリーだった。
ただ、SNSでの視聴者の感想を読むと、その内容以上にナレーターを務めた石原さとみさんへのネガティブな声が多く見られ、そこは凄く残念だった。
その中に「下手」というあからさまな言葉もあったが、僕は単純に「スポーツドキュメンタリーと声質がフィットしなかった」ということだと思う。
番組に合わせて通常よりも低音で…を意識したことで石原さんの本来持つ魅力が削がれていたように感じたし、恐らく収録でもかなり苦労されたのでは。
例えば市井の人達を静かに追ったドキュメンタリーであれば、もっとその声が生きた気がする。
「本職のナレーターなら」という声もあったが、ナレーションを専属で行っている方々の中でも、「この人はこういう番組」という棲み分けがしっかりと行われている。
プロとしてどんなジャンルにも対応するスキルや備えを持っていたとしても、観る側の違和感は防ぎようがない。
大事なのは「声が番組の雰囲気に合うか」でしかない。
NHKでは「プロジェクトX」「プロフェッショナル 仕事の流儀」「サラメシ」など、俳優がナレーションを担当する番組が数多く放送されているが、どれもネームバリューで選んでいるというよりも、「この声が欲しい」でキャスティングしている印象がある。
アニメの声優にタレントが起用される時は大きなノイズが生まれがちだが、実は「番組全体を支配する」という点において、ナレーターの方が作品への影響は致命的に大きい。
だとすると最もやってはいけないのは、「この人にやらせたら箔が付く」のような思惑の、声と番組の相性を考慮しないキャスティングで、その責任は全面的にスタッフ側にあるはずなのだが、観る人にとっては「タレントが悪い」になってしまい、結果的に本人の世間的評価を大きく下げてしまう。
そういう意味でもナレーター選びは慎重に進めて欲しい。
番組の完成度が高いから誰でも大丈夫…ではない。

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