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読書録~頭の中の声を味方につける~Chatter The Voice in Our Head By Ethan Kross

ミシガン大学の心理学、神経科学の教授が書いた、Chatterを読みました。

自分の頭の中で繰り広げられるモノローグのうち、負の影響があるものを筆者はChatterと呼びます。

本書は、そもそもどうしてChatterが起こるのか、そしてどのような対処の方法があるのかを解説する本です。

トラウマ的な体験をした際に、それについて周囲に話したり、自分の中で反芻することは、多くの負の影響を与えるそうです。

自分の中でChtterが止まらなくなったとき、冷静さを取り戻すのに役立つツールが挙げられていたので、いくつか印象に残ったものをメモしておきます。これは、自分に対してでなく、周囲でトラウマ的な状況にある人がいる際、頭にとどめておいてもよいのかもしれません。

  • 自分を第三者として語る:これは、例えば、「私はなぜこんなことをしたのか」の「私」の代わりに、「Aは(自分の名前)」「彼女は」、または「あなたは」と考えるようにすることだそうで、そうすることで没入を防ぎ、客観的に考えられるようになれるという実験結果がいくつもあるそうです。

個人的に、違う言語体系でも成り立つのかに興味を持ちました。英語は日本語に比べて、主語をはっきりさせる言語のイメージで、日本語を母語とする人でも当てはまるのか、どうなのかなと。

  • 友人にアドバイスをすることを想像する

  • 視点を広げる:これは、例えば過去のよりつらい経験を浮かべたり、同様、またはより大変なことを経験をしている他者の事例を浮かべたり、自分の個別具体的な体験を相対化するように考えるということかと思います。未来の自分は今の出来事をどうとらえるか考える、というのもありました。


  • ジンクスをつくる:多くのスポーツ選手が、それぞれの試合前の儀式をもっているのは、Chatterをコントロールするのに役立つからだというのは一つの見方としてとても納得しました。また、プラセボ効果について筆者は、私たちの心の持ちようがもつパワーを示すものだといいます。確かに。

筆者は、トラウマ的状況を抱えた人は、話を聴いてもらって受け止めてもらうという、心の支えとともに、問題解決への支援も必要なのだといいます。

トラウマ的な状況を抱えた人に対する傾聴は、本人に反芻を促し、一歩間違うと回復への悪影響を与えてしまうとも。

このバランスは難しそうだなあと。問題解決に対するアドバイスは求めていない、ただ話を聴いてほしい、という例をよく耳にしますし、誰かの経験を相対化しようとするのも、一歩間違うと、そんな出来事たいしたことない、と軽んじているように聞こえてしまいそうで。

ただ、少なくとも、自分の心の中のモノローグには、今後もっと注意を向けようと思いました。

本書は、この分野の権威の著者が、自分のChatterが止められず夜も寝付けなくなったという出来事のシェアから始まります。

心の声が止まらなくなることは、誰にでも起きうるということ。

この読書メモを残したことで、そうした時、対処法に戻ってこれるといいなと思っています。

https://www.amazon.co.jp/-/en/Ethan-Kross-ebook/dp/B087PL8YVQ


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