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読書録~コンピュータサイエンスの知見を日々の生活へ Algorithm to Live By Brian Chritian and Tom Griffiths

アルゴリズム思考術として日本語への翻訳もされている表題の本を読みました。

コンピュータサイエンスの文脈での重要なアルゴリズムを、日常の場面の文脈で説明してくれて、それが凄く面白かったです。

何度も耳にして、普通に使っているけど、全然理解していなかったコンセプト(キャッシュ、パケット)なんかも、なるほどそういう風になっているんだと勉強になりました。


それから、今まで別の領域の学問で聞いたことがあるようなコンセプトに、コンピュータサイエンスの視点からの説明がされて、それも目からうろでした。

こんな風にかみ砕いて説明できるのって凄いなあと思ったら、著者の一人は一般媒体で科学に関する記事を多数書いてきたジャーナリストでした。もう一人の著者は、バークレーの認知科学の教授だそうで。二人とも領域横断的な知見や、様々な専門家とのネットワークがあることが本著から伺えます。

いくつか印象に残っている内容を上げると、例えば、マシュマロ実験。小さな子供にマシュマロを一つ与え、大人が帰ってくるまで待てればもう一つのマシュマロをあげるとし、マシュマロを食べてしまうか待てるかをみるという有名な実験です。

この実験のフォローアップで、大人が帰ってくるまで待てた子供群の方が、将来より良い状況にあることがわかり、意思や自己抑制の力が良い将来につながる、という解釈を私は過去に目にしてきました。

しかし、本書はこの実験とベイズの定理を絡めて、大人が帰ってくるか待てるかどうかは、大人に対する期待値の違いでも説明できるのではという見方と、それに関わる実験を紹介しているのです。

詳細はちゃんと読み返さないとなので、ざっくりですが、要は、大人が来るのを待っていられた子供は、大人が戻ってくるねという約束を守るという期待を持てる状況にある一方で、待っていらなかった子供は、大人が戻ってくるという約束を必ずしも守るとは期待できず、その状況を不確実なものと見做して、先に食べてしまったのではないかということです。

マシュマロ実験は、大人が信頼できると考えられる状況に幼児期にある子どもの方が将来安定しているという、なるほどという解釈でした。

これがどうベイズの定理とつながるのかは、是非本書を呼んで頂きたいです。

初めてベイズの定理を聴いたのは、大学生の頃。数式を眺めても感覚的によくわからなくて、モンテホールも当時は?だったような気がします。そんなセンスのない私でも、本書やら、How Not To Be Wrongやら、もっとずっと前に読んだ本やらで、少しだけ、何が頻度論と違うのか、どんな意義があるのかわかるようになったのではないかと勝手に思っています。

(タイトルが思い出せないのですが、人間は確率を%の計算ではなく割合で考えた方が、とくに条件付き確率は理解できることを教えてくれた素晴らしい本でした)

そして、これまた、非合理的な認知の特性と説明されてきた人間の思考の癖も、コンピュータサイエンス的にみると最適化されてるじゃんという話も、とても面白かったです。

読み終わると少しだけ賢くなったと錯覚できるような本でした。

https://www.amazon.com/Algorithms-Live-Computer-Science-Decisions/dp/1627790365


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