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働き方における自己責任感と分業性の意味 〜「主治医性」の日本、「餅は餅屋」のドイツ〜

先日こんな投稿をXで見かけた。
「某病院で、カテーテル治療中に状態が悪くなったためECMO(人工心肺補助装置)を導入、その後自院では管理がしきれないので転院させてほしいと連絡がきた。ありえない。自分で最後まで面倒を見れないのなら治療をするな!

という趣旨のもの。 
 
まあ簡単に言えば
「自分でやったことは最後まで自分が責任を持つべき。」
というものだろう。

似たような趣旨の話は、救急外来での患者受け入れでよく起こる。
救急車の受け入れ要請が17時、自分は17時30分まで勤務
こんな感じの状況だ。誰しもが経験あるだろう。

自分が知っている日本の典型的な模範解答は
「自分が見とくので大丈夫です。」
であって、
「あとはお願いします。」
は許されない風潮の日本。

自分が知っているドイツでの解答は
「救急車が来る予定だよ。****ってことだけど、詳しいことはまだわからない。一応関連のところには一言かけておいたけど、あとよろしくね。じゃあね〜。
「おお、ありがとう!後はやっておくよ!良い週末を!」


- 日本の「主治医性」とドイツの「餅は餅屋」を作り上げる、文化と社会の特徴

なぜ日本は主治医制なのか、なぜドイツは分業制なのか

日本社会では、コミュニケーションにおいて非常に優れたスキルが求められる。コミュニケーション能力の中でも、「相手の気持ちを察する能力」「空気を読める能力」「行間を読み取れる能力」が高く、そのように教育されてきており、そしてそのスキルが患者受けしやすい。日本の医療において主治医制度は、患者と医師が信頼を築き、適切に情報を共有し合うことを基盤としている。

ドイツでも医師は患者に対して親身に対話し、病状や治療計画を理解しやすく説明することが期待されている。ただその前提として、ドイツは古くから職人文化がある。

歴史的背景

ドイツは中世ヨーロッパで商業が発展した国の一つであり、中世から職人やギルド制度が根付いていた。中世のギルドは、特定の職種や産業を統制し、技術や技能の伝承を保護する役割を果たしており、これが分業制や職人文化の基盤となっているらしい。

教育制度

その中で、ドイツは高度な技術教育制度を持っており、職業教育が盛んである。若者は、高校卒業後に大学に進学するだけでなく、職業訓練学校で職業スキルを磨く道も選べる。このような教育制度が、職人や専門家の育成を支援し、それぞれの専門家による分業制を享受する文化の一因となっているように感じる。

経済的要因

ドイツは製造業が強力で、高品質な製品を生産することで世界的に有名だ。集約化と分業制は、効率的な製造プロセスを可能にし、製品の品質を確保するのに貢献している。また中小企業が多く、これらの企業は特定の分野に特化した製品やサービスを提供することで競争力を維持している。

文化的な価値観

日本文化でもドイツ文化でも、手作りの製品や職人の技術に対する価値観が根付いているように思う。品質や精密さに対する徹底したこだわりが、分業制度や職人文化を支えている。ドイツでは職人の技術や製品に対する尊敬の念が、職人文化を保持する要因とも言える。日本ではその一方で、「お客さまは神様である」の価値観も存在する。従って「お客さま」が家をリフォームしたい、といったらサービス提供者はそれを全て手配し提供することが期待されている。「それはウチではやっていません」は模範解答ではないのだ。そして自己責任感が強いのだ。海外に出て生活した人はよくわかると思う。日本人は自己責任感が強い。従ってその結果「できるだけ自分で完結するべき」とか「自分がもっとしっかりするべき」とか「他人には任せられない」という考え方になる傾向が強い。全員ではない、もちろん傾向だ。しかし間違いなくその傾向はある。

自己責任感と分業性のメリットとデメリット

自己責任感が強い担当者がいれば、サービスを受ける側の人間はメリットしかないようにみえる。いつだって対応してくれる、無理を聞いてくれる、阿吽の呼吸で意図を理解してくれる、などである。「神対応」という言葉もある。しかしそれを社会全体や国民が標準的に求めると、息苦しくなる。自己責任感が強い社会ではサービス提供者側の人間は責任の重さを感じやすく、過労やストレスが増える可能性がある。さらに、人間は神様ではない。全ての能力や知識を得ることは不可能である。さらにそこに疲労が加わると、実は標準的以下のサービスを提供していることに陥っているリスクがある。

分業制は、サービスを受ける側の人間には一見デメリットに見える。自分でいくつもの部署に連絡したり交渉したりする必要が出てくるかもしれない。しかしここを繋げる仲介する役割の人がいれば、ここは解消できるだろう。

そして分業制によって得られるメリットは、実はサービスを受ける側にも提供する側にとっても非常に大きい。十分休みの取れた後の健康な状態の担当者が、フレッシュな状態で対応してくれる。専門性の高い人間が配置されており、標準的以下の診療や対応のリスクが減る。当然、労働者側の過労やストレスは減り、効率化され、スペシャリストが専門知識を活用しやすい労働環境につながる。

自己責任感と分業性が結びついた新しい働き方、その重要性

自己責任感と分業制の融合、これが日本が目指す働き方の一つの形ではないだろうか。例えば、テクノロジーの発展により、個人が自己責任を持ちつつも、分業的な専門知識を持つ他の人々と連携しながら働くことは十分に可能である。例えば、個人が自己成長や責任を感じ、同時に他の人々との協力や連携を通じて大きな成果を生み出すことができる。
朝家族と時間を過ごし、働き、申し送りをして、十分休み、家族と過ごす。
リフレッシュした状態で次の日の労働を生産的なものにする。

自己責任感と分業性のバランスが取れた人間と職場が、継続的に成長する企業であり個人であろう。

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