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チャームが潰される世界ではいけない


このたび養成講座(全8回各2時間、時には有志で深夜まで議論を通しつつ!)を終了し、第5期シン・ニホンアンバサダーに就任しました。私に行動のきっかけと勇気を与えてくれた、『シン・ニホン』についてどう読んだかを書きました。

ー日本を変えたい。

その思いは、明るい日本の未来を作りたい、という希望に満ち溢れた思いからではなかった。私は日本に怒っていた。「日本」という対象はよくわからないけど、何かよくわからないことに対して私は怒っていた。

大企業で働く「もやもや」

いわゆる日本の「大企業」と呼ばれる会社に入社した。「誰もが明るく前向きにハッピーに暮らせる世界をつくる」。日本の隅々にまで影響力のあるシステムを支える会社に入り、この日本自体をいい国にしたいという思いが強かったことが入社の理由だ。

入社した会社は、日本の総合エレクトロニクスメーカー、総合ITベンダーであり、長年ICTの力であらゆるお客様に価値を提供してきており、国内外の様々なシステムプラットフォームを支えている会社である。

しかし、一生懸命働く傍ら、「もやもや」が大きくなっていった。

「この会社はこのままでいいのか」
 ー文句は色々言うくせに、その現状を変えようと行動する人は多くはない
 ーほうぼうで聞こえてくる「この会社は終わりだ」の漂う悲愴感(若手さえもそう言う)
「目の前のビジネスばかりに追っていて、未来を描いているのか?」
 ー既存のビジネスで精一杯なことを理由に、新しい価値を生み出そうとする人はどれだけいるのか
 ー目の前の数字をあげるだけの人が評価される
「そもそも、自分は『未来』に対して何か残せているのか?」
ー「もやもや」を行動に移せないのであれば、自分も「そっち側」と同類の人間だ
ー「会社」が主語ではない、「」が主語の、未来をつくるべきなのではないか

そんな「もやもや」に対して、未来を変えたいという思いから、自分ごととして行動を仕掛け始めていたときに出合ったのが、『シン・ニホン』という本だった。

当時の自分は、未来を見つめ行動する人は、もしかしたらただの夢を描くハッピー野郎かもしれないと、自分の抱いている思いに対して不安を持っていた。「未来を変えたい!」と宣言すること自体が怖かった。それでも、どうにかしないといけないという思いを持っており、『シン・ニホン』というワードを見て、一瞬で飛びついた。

『シン・ニホン』を読んで

もうそろそろ、人に未来を聞くのはやめよう。
そしてどんな社会を僕らが作り、残すのか、考えて仕掛けていこう。
未来は目指し、創るものだ。

安宅さんの冒頭のメッセージで、私は、泣きそうになった。(泣いたかもしれない)
そこから吸い込まれるように、この分厚い400ページを超える本を一瞬で読み切った。こんな経験は、人生で初めてだ。ボリュームもさることながら、決して平易な内容ではないし、「それはどういうことだ?」と止まるポイントも多い。それでも、無我夢中、気づいたら読み切っていた。

『シン・ニホン』ではファクトに基づき、日本の現状を冷静に見つめ、そのうえで、「残すに値する未来」をどう描いていくか、どう未来に対して仕掛けていくかを明確に示している。そして、未来に対しての「行動」を重要視する。

もちろんこの本を読んで「日本ヤバイな」という現実に衝撃を受け、大きなショックも受けた。しかし私はこの本を読み、「応援されている!」というメッセージを一番強く受け取った。自分の感じている「もやもや」は事実だ。そのうえで、自分の足りないところもはっきりわかった。まずは、データ×AIの時代にあたり、基礎教養となるスキルは確実に身に着けておくべきこと。そして、何よりも「自分自身」が変わること。自分が周りを変え、会社を変え、日本の未来を変える。思いの実現には、熱量だけでなく、実力も伴わなければいけない。地道に進むしかないが、確実に前に進む意志を持とう。そして、次の世代へ何を残すか。自分の勝ち筋を描いて行動しようと、勇気付けられたのだ。


私の原点

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さかのぼると、私の家族はとっても仲のいい幸せな家族だった。父、母、妹、私、の4人家族。小学生の頃は、毎年夏はキャンプに行って、日本の自然を満喫した。テントで眠りながら、外から風がガサガサ音がすると、「トトロが来た!!」と大騒ぎした。

私は、特に父と遊ぶことが大好きだった。家で学校の宿題である手芸をしていると、父は外に遊びに行こう!と誘ってくれた。「しー(私)は外で思いっきり元気に遊ぶとき、とってもいい顔をするね!そのほうが、しーらしいよ!」と言ってくれた。

私の父は、日本人だが、背が高くて、彫りが深いイケメン(街中で、外国人に見た目を間違えられて、英語で話しかけられてしまう笑)。しかも優しくて、面白くて、周りの友達からも大人気だった。学校行事にもよく参加してくれて、周りのお父さん、お母さんからも好かれていた。そんな父親のことが私はもちろん大好きで、心から自慢の父親だった。

「こんな毎日幸せでいいんだろうか!」と幸せを噛み締めて、生きていた。


ある日、父が死んだ。


小学校5年生のときだった。何回もうそだと思ったし、棺に入っている人は、ゴム人形でたぶんまた帰ってくると思った。でも、帰ってこなかった。

父が死ぬ前、顔に元気がなくなっていて別人のようだった。当時の私は、なぜ父親がそんな風に変わってしまうのか、あんなに自然のなかで生き生きしていた父親の表情が消えてしまうのか、全く理由がわからなかった。

父は、学生の頃から勉強も真面目にがんばって企業に就職し、真面目に働いていた。悪いことは何もしていない。ただただ、真面目に働いた結果が「死」だった。

誰に怒りを向ければいいのかわからない、理由もわからない、許さない、誰のせい、返せ。しばらく自分のなかでぐるぐるぐるぐる黒い感情がまわった。

それでも、時間は前にしか進まない。悔やんでも、怒っても、いくら泣いても、もう過ぎ去った時間は帰ってこない。過去は過去。だから、どうにかしないといけない。こんなことを繰り返してはいけない、こんなことで悲しむ人が増えてはいけない。変えるべきことがあるなら、「誰もが明るく前向きにハッピーに暮らせる世界をつくる」。これが私の使命であり、生きる意味だと、子どもながらに決意した。

中学生からは祖父母の家に同居することになった。母親が一人で働きながら妹と私とを育てるのが大変だったからだ。
 
「負けたくない」という思いが強かったと思う。
大人たちが言ってくる、「かわいそうだね」「がんばってね」という言葉。
 
「かわいそうな子」の生きる世界。
 
今までのびのび生きていた自分の外側に殻を作って、本当の自分を閉じ込めた。傷つかないようにした。
 
勉強をがんばって、クラスの委員長になったり、中学校の生徒会副会長になったり。 
先生には、「あなたはなんでそんなに真面目なの?」と聞かれるほどのクソ真面目な優等生だった。
 
高校、大学と、学校にしかれたレールにきっちり沿って進むことが、期待にこたえることであり、他人に認められる方法だと信じきっていた。

そして、今の会社に入社した。私も父親と同じように、真面目に一生懸命働いた。

一方で、実は、面接では言わなかったけど、父親が亡くなった原因を追求し、日本の企業自体に問題があるのなら、それを変えてやるというひそかな思いを持っていた。

『シン・ニホン』で示された「チャーム」

『シン・ニホン』で最も印象に残ったのが、第3章で書かれている「求められる人材」についてである。

これからの未来のカギになるのは普通の人とは明らかに違う「異人」と示されている。そして、こういう人の多くは異物として排除されるか、秩序を乱す人として潰されてしまいがちだ。だから、価値観の変容と彼らが生き延びることのできる空間が必要なのだ、と述べられている。

また、人の魅力「チャーム」も重要な要素としている。

明るさ、前向きさ、心の強さ、信じられる人であること、人を傷つけたり騙したりしないこと、包容力、愛の深さ、心の優しさ、その人らしさ、真正さ、独自性、エネルギー、生命力、リスクをとって前に進める提案力、実行・推進力、建設的な発言、協力し合う、助け合う人柄、耳を傾ける力、ユーモア、茶目っ気、素敵な裏表のない笑顔」と様々なチャームが書かれている。

異人

私は優等生的に学生時代を過ごしてきたり、会社でも真面目に働いてきたと書いたが、本質はエモーショナルで自分に対してふつふつとわくエネルギーに歯止めのかけられないタイプである。思ったら発言しちゃう、行動しちゃうタイプである。特に社会人として過ごす中では、こういう部分は隠すべきだという思いが強かった。けれど、シン・ニホンアンバサダー養成講座では、「自分のありのまま」で対話、議論を心がけた。

会社や社会の中では、決まった枠から外れると「変わってんな」と思われたり、言いすぎたら「干されそう」という思いがある。(実際、言いすぎたら「浮く」。言いすぎた日には、「ああ、今日もやってしまった」と反省する日々)だから、あんまり自分のエモーショナルな部分は好きな部分ではなく、もはや弱みとさえ認識しかけていた。

しかし、養成講座が終わったとき、講座メンバーから私のチャームは、「熱量・エモーショナルな一面と共に内省する・笑顔・考えながら体当たり・熱を持つ純真・自分の限界突破・塊魂 etc..」とフィードバックをいただいた。そこが、チャームになりうるの?!と自分のなかでは衝撃だった。

自分の好きな部分ではなかった部分、隠したかった部分をチャームと言ってもらったこの経験は、今後の人生の中できっと残り続け「自信」となると思う。これからは、みなさんに認めていただいた自分だけのチャームを思いっきり発揮していきたい。

私は何を仕掛けるか?

『シン・ニホン』を読み、「日本」を変えたいという思いは、「自分」を変え、自分の周りの人を変えるんだという思いに変わった。

『シン・ニホン』は、「自分が変われるチャンス」と「日本を変えるチャンス」を与えてくれた。いますぐ行動しなくちゃならない。ぐずぐずしている場合じゃない。変えるべきことがあれば、変えなければいけない。

そして、絶対に無駄にしないと誓った、父の死。大好きな私の父親。私の父親は、まさにチャームに溢れる人間だった。あらゆる年代の人から好かれ、愛され、包容力のある、チャーミングな父親であった。

チャームが潰される世界であってはいけない、日本社会ではいけない。 

多様なチャームを持つ人たちが、のびのび生きられる社会を作りたい。お互いのチャームを認め合い、尊敬しあい、発揮しあえる社会を、未来を、よりよい日本の未来を作りたい。

私は行動する。


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