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読書感想文 23SS

'231001


1月

1月、雪国は難解だった

「ロング・グッドバイ」 レイモンド・チャンドラー
 あんなに分厚かったのに、無駄なところが一切なかった。
物語にずいずい引き込まれた。本当に名著。
実家のベッドの上で少しかじり始め、新幹線、上野東京ラインの中で読み耽り、昨日、今日とで一気に読んだ。
主人公は筋が通っていた。相手によって態度を変えず、皮肉も忘れない。
ドラマによくいるが絶対に実在しない人物だった。
再会した場面、ハッピーエンドになると思っていたのに。
自分の世界ではもうずっと経験していない、人間のすれ違いによる苦味だった。
テリーが死んだと聞いて言われた通りにしていたマーロウを思うと、
彼もそう望んでいなかったはずなのに。
「人は変わってしまうし、自分が思っていなくても自分自身も変わってしまっている」を再認識せざるをえない。必読。

2月

2月、生まれた時からアルデンテにより本格的に食へのこだわり始動

「どくとるマンボウ航海記」 北杜夫
最初は「気取った人」だと思っていたけど、読んでいくうちに「気取っていない人」なんだと思った。
大変な時にこそ、洒落に洒落を重ねるし、怒っているのに怒っていない。
自分を意識せずとも貫いている感じが良い。
解説での「斎藤茂吉の息子」というパワーワードも凄まじい。
なんか、どうでも良くなる気楽なファンタジーぽいノンフィクションだった。

3月

3月、違うところで暮らすことに憧れを感じる

「イリノイ遠景近景」 藤本和子
かなり社会学に近いものを感じた。表面をさらうのではない、深くまで入り込む感じ。
どの話も記憶に残るものたちばかり。
著者がフンボルト大学の食堂に行ったエピソードはなぜか印象に残っている。
人を盗み見て、あれこれ推測して、目的のものにありつく光景が、
私が外国に行った時のそれと完全に同期しているからだろうか。
ネイティブアメリカンの話は、なんだろう、
ストーリーに引き込まれるというより、インタビューの進め方に惹かれた気がした。
これが本当に交わされた言葉たちなんだ、と。
あとがきで「自国と住んでいる国のはざまで生きるというより、そこは繋がっている」という価値観に到達した彼女の好奇心・熱意に脱帽。
思いがけず良書に出会った。

4月

4月、旅のエッセイ大好き

「流浪の月」 凪良ゆう
本当に心に爪痕を残してきた本だった。
自分で選ぶことのない本はそういう出会いがあるから好き。
ヒューマンドラマは手に取らないから。読むのが苦しくて。
今回もやはり苦しかったけど、読む手が止まらなかった。
新宿→名古屋へ向かう高速バス、1番後ろの10D席でひたすら読み進める。
時々外を眺める。若草色の木々が萌えている。癒されてまた本に戻る。
ハーゲンダッツのストロベリーを素敵な器に乗せて食べたくなる。
最初の回想シーンはページ数こそ少ないけれど、キラキラした眩しい爽やかな世界だった。
あの短さであのインパクト、忘れられない日々。読んだ私も忘れられなさそうだ。
ストーリーには二度えぐられる。

5月

5月、ほっこりするフィクションが沁みる

「モモ」 ミヒャエル・エンデ作
名作というものはすごいのう。
時代を超えて響くものがある。
これを読んでから心に少し余裕ができた気がする。
平日は特に、時間ばかり気にしていた(仕事中は大事)けど、
これを読んで「一体何のためにこんなせかせかしているんだ?目の前のことを楽しまなきゃ」となった。
実際そうした方が心が充足した1日になった。
忙しい時こそ思い出したい。
友達との時間を大事に過ごそう。

6月

6月、作者の名前に緑が入ってると気になってしまう

「風神雷神」 原田マハ
小説は自由だ!と感じさせる本だった。
史実をベースに、人間の想像力によって、こんなにも壮大な物語が完成するのかと武者震いした。
まさにカラヴァッジョと原マルティノが出会ったシーン、史実上9日間だけ本当に同地域にいたということが衝撃。
教皇に謁見したくらいなのだから、カラヴァッジョが彼らを「認知」していた可能性もあると思うと、想像が膨らんでしまう。
日本の絵画に興味が湧いてくる。

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