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川の絵ばかり描いた画家の話。

今日はすごく好きな画家の話をします。アルフレッド・シスレーという人です。ご存知でしょうか。

彼は印象派の時代の人です。なので、モネやセザンヌ、ルノワールなどと同世代の人です。でも、彼らと比べたら全然メジャーではないですよね。

彼の絵をいくつか紹介すると、こんな感じです。

お気づきになったでしょうか?

一般的に、彼は「空のシスレー」と呼ばれているそうです。うん、確かに、空の描写も素晴らしい。

でもね、違うでしょうがと僕は思うのですよ。彼は「空のシスレー」というよりも「川のシスレー」ですよ。そうじゃありません?

彼が遺した絵はそのほとんどが川の風景を描いたものなのです。

もう、本当に好きだったんでしょうね、川のある風景が。水面が映し出した空が。川の青と空の青とのコントラストが。川の先に微かに見える遠い景色が。彼の絵からは正にそのことが伝わってきます。

ところで、幸せって何だろうと考えたとき、その答えの一つは「自分の好きなものを知ってる」ということではないでしょうか。

たとえば、どんなに凹んでいるときだって、好きな食べ物を食べれば気が紛れるし、好きな景色を見れば嫌なことを忘れられるし、好きな音楽を聞けばその瞬間は楽しい気分になれるし、好きな人と会えたらもうそれだけでその日はむしろいい日に変わります。そういうものですよね。

では、幸福な芸術家ってどういう人でしょう?

僕は思うんです。それは、自分が描きたいものが何なのかを知っている人だって。別に、世間や批評家から高い評価をされているとか、それでめっちゃ儲けてるとか、そんなんじゃないって。

このシスレーという画家も、画家の評価としては辛うじてAくらいのものでしょう。それこそ同時代人であるモネやセザンヌやルノワールと比べたら。

でもね、彼は多分、画家としては、そんな美術史的に偉大な画家たちと同じくらい、もしかしたら彼らよりももっと幸せだったんだろうなって僕は思うんです。

だってこんなに同じような絵ばっかり描いてよくまあ飽きないよなあって思いません? きっと周りから何度も言われたはずですよ。もっと色んなモチーフに挑戦した方がいいとか。

でも、彼はそうしなかった。きっと、この川というモチーフが本当に好きだったから。彼は知っていたんです。自分が好きなものは何かを。どうすれば自分は最高に幸せに絵を描けるのかを。

なんか、絵画でも音楽でも小説でも詩でも何でもいいんですけど、たまに受け手として「ああ、この人めっちゃこれが好きなんだなあ」って感じることありません?「まったく、仕方ねえなあ、こいつは」って。

僕はそう感じる瞬間がすごく好きで。なぜなら、そう感じる瞬間って、こっちもなんだか楽しくなるし、幸せになるから。

そして、そう感じさせてくれる作品やアーティストは僕にとって、上手いとか下手とか、評価されてるとかされてないとか、そういうのが全部どうでもよくなるくらい大切な存在です。

まあ、ある意味わがままな考えかもしれませんが、でも、別にいいでしょう? 誰も傷つけないし、誰も損しないんだし。

もうね、そういう人たちがいるから、僕は芸術が好きなんです。

だから、これから先も、もっと彼のような芸術家と作品を通して出会いたい、そう思います。

そして、僕自身も誰かに「ああ、もう、こいつ本当に仕方ねえなあ」って思われたら最高です。

ということで、今日はここまで。

おやすみなさい。

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