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詩歌ビオトープ010: 結城哀草果

はい、ということで、詩歌ビオトープ10人目になりました。

そもそも詩歌ビオトープとは?
詩歌ビオトープは、詩の世界を一つの生態系ととらえ、詩人や歌人、俳人を傾向別に分類して、誰と誰が近い、この人が好きならこの人も好きかもしれないね、みたいなのを見て楽しもう、という企画です。ちなみに、傾向の分類は僕の主観です。あしからず。

この人は1893年生まれ、1974年に亡くなりました。山形県に生まれ、生涯をこの地で過ごした人です。山形を代表する文人として知られているそうです。

土岐哀果の影響を受けて作歌を始めたとのことで、哀草果の号は哀果から来ているのですね。その後斎藤茂吉に師事します。晩年の歌にこんなのがありました。

善麿の生活基盤に立脚し茂吉の実相観入実行したる作歌まさに六十年

さて、今回もネタ本は昭和文学全集35です。

本書には、昭和10年刊行の「すだま」から53首が収められていました。ちょっとこれまでの人と比べると少ないですね。

で、僕の分類では自然詠が24首、生活詠が16首、社会詠が13首でした。この人もまた、いかにもアララギって感じでした。というよりも、斎藤茂吉がほんとに好きなんだなあ、という感じ。その一方、本書には農村の窮状を詠った歌も比較的多く収められていました。その辺は、なるほど、土岐善麿の影響ですね、と言いたくなります。

ということで、位置はこの辺りにしました。

ただ、ちょっと収められていた歌が少なかったので、色々調べていると、下のようなサイトを見つけました。

で、このサイトの200首も分類してみたのですが、そうすると自然詠が98首、生活詠が91首、社会詠が9首、思想詠が2首でした。やっぱり、誰がどの程度選ぶかによって変わってきますね。

基本的には、もしも何もなかったならば、この人はもっと自分自身の感じた田舎の自然や百姓暮らしのことを詠っている人だったのだろうと思います。で、実際そういう歌こそがこの人の真骨頂なのだと思います。

たとえば、次の歌がとても印象に残りました。

荷を負ひて雨ふる山を下りゆく馬の尻より気(いき)しろくたつ

馬の尻からもわっと立つ白い何か。何なんでしょうね。もしかしたら、馬のオナラかもしれない。汗が蒸発したものかもしれない。分からないけれど、とにかくこの歌からは、雨のじめっとした感じとか、馬のにおいとか、体温とか、そういうのが伝わってくる感じがします。

あと、この歌。

暑き山くだりしわれら舌を鳴らし氷入れたる焼酎を飲む

めっちゃ美味しそう。真夏の最中の山仕事なんて、ほんとに相当辛いことなのでしょうけれど、でも、だからこそこの氷を入れた焼酎がめっちゃ美味い、というのもありますよね。そういう、ただ農村の暮らしは貧しい、辛い、きついっていうだけじゃなくて、だからこそ感じる幸福、喜びのようなことも歌っているのが、すごく印象に残りました。

ということで、11人目に続く。

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