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詩歌ビオトープ

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歌人や俳人、詩人の分布図を作るプロジェクト
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#毎日note

詩歌ビオトープ025:佐藤佐太郎

詩歌ビオトープ025:佐藤佐太郎

詩歌ビオトープ25人目は佐藤佐太郎です。

この人は1909年に宮城県で生まれました。大学卒業後に上京して岩波書店に入社、この頃斎藤茂吉に師事して「アララギ」に入会します。1945年には岩波書店を退社し、自らの第一歌集の名を冠した歌誌「歩道」を創刊しました。この「歩道」は今でも精力的に活動しているようですね。

さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。

本書には第一歌

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詩歌ビオトープ024:斎藤史

詩歌ビオトープ024:斎藤史

詩歌ビオトープ24人目は斎藤史です。

この人は1909年、東京都に生まれました。お父さんが軍人でありながら歌人でもあり、その影響で佐佐木信綱に師事して若い頃から「心の花」の同人だったそうです。その後、前川佐美雄らの新芸術派運動に参加しました。

若い頃はまるで絵本の世界のような幻想的でロマンチックな歌が多かったそうですが、27歳のときに二.二六事件があり、幼馴染だった青年将校の多くが刑死、父親も

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詩歌ビオトープ023:窪田章一郎

詩歌ビオトープ023:窪田章一郎

詩歌ビオトープ23人目は窪田章一郎です。

この人は、窪田空穂の息子さんですね。1908年に東京で生まれ、父である空穂に師事しました。空穂主宰の短歌雑誌「まひる野」発行の際は発行編集を務め、空穂没後は主宰となりました。この「まひる野」は現在も活発に活動されているようですね。noteもありました。

さて、今回も昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。

本書には、「ちまたの響」から57首、

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詩歌ビオトープ022:渡部直己

詩歌ビオトープ022:渡部直己

詩歌ビオトープ22人目は渡部直己です。

この人は1908年に広島県に生まれました。「アララギ」に入会し、土屋文明に師事。高校教師だった頃に日中戦争が始まり、招集されました。

この頃に詠んだ戦争詠が高く評価されているとのことで、昭和文学全集35にも53首の歌が収録されていました。

全体的には写実的な歌が多く、僕の分類ではxが20、yが11の「絵画的かつ自然主義的」な人となりました。

ただ、W

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詩歌ビオトープ021: 小暮政次

詩歌ビオトープ021: 小暮政次

詩歌ビオトープ21人目は小暮政次です。

この人は1908年、東京都生まれの人です。「アララギ」の同人となって土屋文明に師事、「アララギ」解体後はアララギ系の歌風を引き継ぐ結社「短歌21世紀」をつくりました。「短歌21世紀」は今も活発に活動している団体なんですね。

さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められている歌を読んでいきます。

本書には「新しき丘」から30首、「春望」から35首、「薄

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詩歌ビオトープ020: 葛原妙子

詩歌ビオトープ020: 葛原妙子

詩歌ビオトープ20人目は葛原妙子です。

この人は1907年に東京都(当時の東京市)で生まれました。でも、幼い頃に父方の伯父の家に育てられたのだとか。

高校卒業後に医師である夫と結婚し、3人の子をもうけます。そのうちの1人はサトクリフの翻訳なんかで有名な猪熊葉子なんですね。びっくり。

短歌を始めたのは32歳のときということなので、早くはないですね。潮音社友となって太田水穂、四賀光子に師事したそ

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詩歌ビオトープ019: 坪野哲久

詩歌ビオトープ019: 坪野哲久

詩歌ビオトープ19人目は坪野哲久です。

この人は1906年に石川県で生まれました。大学に行くために上京、大学生のときにアララギに入会して島木赤彦に師事しました。でも、すぐに島木赤彦が亡くなってしまうのですね。

その後は新興短歌連盟に参加、大学卒業後は東京ガスに入社します。で、労働組合運動に参加しながらプロレタリア短歌を推進していきました。この頃は、自由律短歌をしていたそうです。でも、労働組合運

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詩歌ビオトープ018: 木俣修

詩歌ビオトープ018: 木俣修

詩歌ビオトープ18人目です。今回は木俣修を取り上げます。

この人は1806年に滋賀県で生まれました。幼少期から「赤い鳥」や「金の船」などに詩や絵を投稿していたそうです。

1927年、東京師範学校入学とともに上京し、憧れだった北原白秋に弟子入りします。しかし、その頃白秋は自身の雑誌を持っていなかったので、白秋系である村野次郎主宰の「香蘭」に参加したり、前田夕暮の「詩歌」に籍を置いたりしたそうです

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詩歌ビオトープ017: 生方たつゑ

詩歌ビオトープ017: 生方たつゑ

詩歌ビオトープ17人目は生方たつゑです。

いやー、やっと女の人が来ましたね。

この人は1905年に三重県で生まれました。日本女子大学を卒業後、結婚して群馬県に移り住みます。その頃「アララギ」で活動していた今井邦子に師事します。そうして30歳のときに処女歌集「山花集」を上梓しました。てことは、最初は「アララギ」の人だったんですかね。どうなんだろう。

戦後は窪田空穂がつくった「国民文学」に入会し

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詩歌ビオトープ016: 柴生田稔

詩歌ビオトープ016: 柴生田稔

詩歌ビオトープ16人目は柴生田稔です。

この人は1904年に三重県で生まれました。東京帝国大学在学中に「アララギ」に入会、斎藤茂吉に師事しました。しかし、実は古典和歌については茂吉よりもこの人の方が遥かに博学で、茂吉の古典和歌研究をかなり支えたそうです。

大学卒業後は明治大学の教授となり、1975年の定年まで勤めて名誉教授となりました。

最初の歌集は1941年、37歳のときに出した「春山」で

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詩歌ビオトープ015: 前川佐美雄

詩歌ビオトープ015: 前川佐美雄

詩歌ビオトープ15人目は前川佐美雄です。

この人は1903年に奈良県で生まれました。高校卒業と同時に「心の花」に入会、佐佐木信綱に師事します。高校卒業後は東洋大学に入学、卒業後は奈良に戻りましたが、文学を志して再び上京、「心の花」の編集・選歌に関わりました。

「アララギ」の写生歌を批判し、土屋文明と論争をしたこともあったのだとか。その一方でマルクス主義に共鳴し、活動もしていたそうです。

処女

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詩歌の分類フォーマットver.2.0

詩歌の分類フォーマットver.2.0

先日、詩歌ビオトープの分類がこのままじゃ多分ダメなんだろうなあ、という話をしましたが、分類に使えそうなのをふと思い出しました。

それは、萩原朔太郎の「詩の原理」です。

僕はこの本がすごく好きで、ほんとに、これが無料で誰でも読めるなんて幸せだなあと思うのです。

萩原朔太郎って、かなりの理論派ですよね。で、この本以外にも結構哲学的エッセイのようなものをたくさん書いています。

この『詩の原理』は

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赤が過疎ってる件

赤が過疎ってる件

さて、順調に読み進めているプロジェクト詩歌ビオトープですが、ひとつ問題があります。

今の時点の分布を見てみましょう。ジャンッ

もうお分かりでしょう。

赤がいない!

あと、左側が混雑しすぎですよね。

うーん、そうなのか。僕は実は、短歌は結構赤の人が多くなると予想していたのですが、ならないですね。

まだ時代が古いからでしょうか。それとも、やっぱり全集という性格上の問題なのかなあ。

自然詠

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詩歌ビオトープ013: 吉田正俊

詩歌ビオトープ013: 吉田正俊

はい、というわけで、詩歌ビオトープ13人目です。今回は吉田正俊を取り上げます。

この人は1902年に福井県で生まれました。東京帝国大学法学部を卒業後、現在のいすゞ自動車に入社、出世して専務取締役にまでなったそうです。

大学卒業後の1925年、土屋文明に師事して「アララギ」に入会、後に選者、発行人にもなりました。

歌集は40歳のときに「天沼」を刊行。この歌集は同時代の歌人たちに大きな影響を与え

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