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Vol.014 それでも人は惹きつけられる〜光の向きの話 逆光編〜

光の向きの話も、今回で3回目。
今回は一度は聞いたことのある「逆光」のお話です。

逆光とは?


逆光
(ぎゃっこう)とは、被写体の後ろから光が当たる状態のことです。
逆に言うと、カメラに向かって太陽やストロボやLED照明の光が射し込んでいる状況のことです。
真後ろから少し前、斜め45°後ろくらいまでの「半逆光」を含め、おおよそ
後ろから光が当たることをまとめて「逆光」として良いでしょう。

夕暮れのように太陽が低い位置での逆光は、このように太陽が画面内に映り込みます。

逆光の特徴

逆光の特徴として、まず被写体の輪郭が浮かび上がるように明るくキラッとします。これが、最大の特徴です。おなじみ羊さんに登場してもらいましょう。

羊さんの輪郭線が際立って輝いて、浮きあがるような印象ですね。
輪郭のアップ

「透過光」とは?

後ろからの光ということで、透明感を出したい場合には逆光はプラスに働きます。たとえば、コップやボトルに入った水の透明感や植物の葉っぱの透明感を出したいときは、後ろから光を当ててやればいいのです。
これらの光は逆光の中でも「透過光」と呼ばれる光で、スタジオライティングでは多用される光です。

スタジオで撮影しました。光は真後ろから来ています。


この情景はよく目にしますね。葉っぱの透け感は逆光がもたらしています。

逆光は柔らかな表現に適している

逆光のもう一つの特徴としては、後ろから光が当たるの陰影は手前に出ます。つまり、サイド光のような強い陰影は出ません。したがって、陰影の目立たない柔らかい印象になるので、例えば女性の柔らかな雰囲気のポートレートを撮りたい時には、逆光を取り入れてみると良いでしょう。
顔に直接光が当たらないので、シワや陰影は目立ちません。

ストックフォトから。逆光で撮ると、髪の毛の輪郭もキラキラとして透き通る印象です。顔の質感も柔らかですね。


窓からの柔らかい逆光なので、全体としてもふわっとした印象になりますね。

逆光とシズル感

もう一つ、様々な料理を美味しそうに撮りたいとき、逆光は強い味方となります。よく「シズル感」(詳しくはこちらを参照)という言葉を聞きますよね。このシズル感をより訴求できるのが逆光です。もちろん、逆光プラスαの工夫は必要なのですが、美味しそうに撮りたいなと思うときは光を逆光にセッティングしてみたり、撮影の位置を変えてみるなどしてみてください.

うなぎのタレの照り感が逆光でキラリと光っていますね。
炊きたての御飯のアツアツ感がよく出ています。湯気を出したい時には逆光を使いましょう。

逆光の欠点

逆光の欠点としては、やはり手前が暗くなってしまうということです。
これはもう、仕方がありません。
なので、逆光で撮影の場合に考えることは

  • 手前が暗くても良いと割り切る

  • 手前を工夫して(自然に)明るくする

どちらか絶対ということはもちろんありませんが、選択肢としてはこの2つがあります。

手前を極端に暗くして、シルエットとして見せる。これも立派な表現手段です。見えないけどもそれが逆にイマジネーションを膨らますことになります。

これは典型的なシルエットの写真です。顔がわからなくても全然問題ないですよね?


雰囲気出し過ぎな気もしますが。(笑)でも、逆光の利点をよく生かしています。


手前を明るくしたいときは?

手前をあまり暗くしたくないときは、手前を明るくする工夫をする必要があります。具体的には

  1. 露出補正で全体的に明るくする。

  2. ストロボやレフ板などを用いて、物理的に明るくする

  3. photoshopなどソフト上で後から部分的に明るくする

一番簡単なのは、露出補正でより明るめに撮ってあげることです。
ここで注意が必要なのは、手前を明るくしようとカメラの設定で明るくしようとすると、必然的に後ろも明るくなってしまうことです。
明暗比がそれほど無い場合は、それで問題ないですが例えば下の写真

外の景色の明るさはいい。でも、中はもうちょっと明るくしたいなあ。

このような状況はよくあります。中を明るくしたいと単純に露出を明るく補正して撮ると

中は明るいけど、外の景色が消えてしまった・・・

このように、肝心の外が明るすぎて白っちゃけてしまいました。

なので、この場合は室内を明るくする工夫をしてあげる必要があります。
この場合は、例えばストロボやLEDライトを使って明るくします。
(室内に蛍光灯などがあってついていなかったら、つけてみる)
こうして、中と外の明暗差をなるべく少なくして上げることが重要です。
ですが、ストロボを使うにはある程度のテクニックがいります。
また、「過ぎたるは及ばざるが如し」という言葉もあるように、ストロボなどの光が強すぎると、せっかくの逆光の雰囲気がぶち壊しになり、なんともつまらない写真になってしまいます。

難しい場合はソフト上でなんとかしよう

なので、逆光を補正する場合におすすめなのは撮影後のレタッチで補ってあげるということです。

現像時に補正すると、ある程度までは明るい暗いを調整できるので便利です。

上記の写真は、現像ソフトで調整した場面のキャプチャーですが、このように外は白く飛ばさず、中は黒に潰れないようにコントロールできます。

下の写真は、現場で室内を少し明るくするために照明を使用し、なおかつ現像時に明暗比を更に調整しています。このように、最終の絵から逆算して撮影時にはどうするか?現像時にはどうするかを、ある程度シミュレートしておくことが肝心です。

外の緑と室内の黒の椅子。どちらの質感も重要なので、色々と気を使います。

RAWで撮ることの優位性

この場合に必要なことは、「RAW」で撮影しておくということです。
「RAW」が何であるかは、下記のリンクをご覧ください。

JPGで撮ると、カメラの中で綺麗に調整をしてくれます。ただ、後から補正しようとするとその余裕がないので、ちょっとしかできません。
明るく撮りすぎた、暗く撮りすぎたを後からなんとかしたいと思っても、JPGだと厳しい。ですが、RAWはそもそも後から補正する前提のデータですので、幅広い調整が可能なのです。そのかわり、RAW自体はのっぺりとした締りのない淡い画像です。

商品撮影などでは、逆光を用いたイメージカットを撮ることがよくあります。ただ、手前が暗すぎたり、色があまり出ていないとなると広告表現としてはあまりよろしくありません。
カメラマンは、そのあたりを解消するために、レフ板や照明、後からのレタッチなどのテクニックを駆使しています。
逆光をいかにうまく使えるか?このあたり、カメラマンの上手下手がよく現れる場面かなと思います。


普通なら顔は暗くなりますが、現場で少しだけ顔に光を当てています。当てているとわからない程度がポイントです。


逆光と手前からの光を駆使して撮っています。ジュエリーは難しいです。(笑)

まとめ

逆光は印象的な絵になりますが、明暗差の激しい状況だとなかなか難しい光です。効果的に使おうとすると、やはりある程度の経験と知識はひつようとなります。

これは僕の考えですが、人が
「いい景色だな、美しいな。」
と思う景色は、振り返ってよく見てみるとそれはおおよそが逆光なのです。やはり、逆光は人をを魅了する光だなと思います。
なので臆せず、どんどん逆光を利用していきましょう!
なんとなくでもコントロールできるようになれば、もう立派な中級者です。









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