羨望と嫉妬
星の見えない夜は、静かに風の音を聴いた。
眠れない夜は、黙って月とにらめっこをした。
不安に押しつぶされそうな夜は、ただ、言葉を紡いだ。
書けなくなったその日が、きっと私の命日になるのだろう。そんなことを思いながら、今日もまた真っ白な画面と真っ直ぐに向かい合う。
変わりゆくものたちに失望しながら、変わらないものに触れて安堵した。
変わらないという事実に安心したのか、この先も変わらないような気がして安堵したのか。
答えはきっと後者だろう。
人の喜怒哀楽の変化や感情の起伏を可視化することができたら、今よりもっと、ずっと、生きるという行為が容易に思えただろう。そんなことを考えながら、錆でキシキシと鳴る自転車をゆっくりと漕いだ。
夕方の空は、あまりにも寂しくて、あまりにも美しかった。
大切なものが増えていくことが、時々、どうしようもなくこわく感じる。大切にしたいものを大切にできなくなった瞬間の恐ろしさを、私はすでに知ってしまっているからだ。
大切にしたいと思えば思うほど、手放さなければいけないような気がして、大きくなる感情にそっとブレーキをかけた。
アクセルの踏み方は、いつか君が教えてくれるといいな。
感情って、素直だなあ。
欲って、恐ろしいなあ。
頭できちんと理解しているはずなのに、心と身体が無意識に、ただずっとそれを求めている。
彼がふっと笑った瞬間、私の鼓動が早まるのを感じた。
手と手が触れた瞬間に、ひんやりしたそれが内側から温められていくのを感じて、ほっとした。
重なった肌がゆっくり、ゆっくりと同じ温度になるその感覚は、言葉のないコミュニケーションの最上級のような気がする。
彼の首筋の香りが、閉じ込めたはずのあの人との淡い日々を彷彿とさせる。
息を吐くように、嘘をつかないで。
独占欲と好きって、同じ感情かな?
ん〜、違うんじゃない?
じゃあ、嫉妬と独占欲って同じかな?
知らないが、知りたいに変わっていく。
おはよう。
今朝は冬の匂いがした。
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