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国吉選手のマリーンズ入り

 千葉ロッテマリーンズが横浜DeNAベイスターズから国吉佑樹選手をトレードで獲得しました。トレード相手は有吉優樹選手です。note名に反してNPBのトレードを取り上げます。

〇ファーストインプレッション

 先発投手不足からベイスターズ側から申し入れたと思われるトレードですが、足許を見られるにしても見られすぎかなと感じます。一軍戦力を放出してのトレードなので、有吉投手がどのようなポジションで投げるにしても、国吉投手を残した場合と同等以上のパフォーマンスでなければ失敗ですが、同等以上のパフォーマンスを残す公算は小さいと思います。一方、マリーンズ側が有吉投手をどの程度戦力として見込んでいたかは分かりかねますが、二軍の扱いを見る限り、ローテのデプスと推測されます。二軍成績は良好ながら過去の実績と既に一軍である程度計算の経つ国吉選手との差し引きを考慮すると、リスクが小さいディールではないでしょうか。

6/14夜追記

〇マリーンズサイド

 先発投手を欲していたベイスターズ相手に吹っ掛けたら応じてくれたというところでしょうか?ローテ投手は美馬投手はじめ4人は確定しているようですし、中村投手、本前投手、佐々木朗投手といった若手投手も控えている点や、石川投手や鈴木投手の復帰待ちも考慮すれば、有吉投手が二軍ローテで好投しているとはいえ、中々登板機会を与えられないような状況に見えます。マリーンズには詳しくないので、適切な見方ではないかもしれませんが、個人的にはそのような印象です。一方、リリーフの層は薄いわけでもなさそうですが、リリーフはいくらいても困らない点を考慮すれば、余剰戦力でリリーフを厚くした巧い動きだったと思います。

〇ベイスターズサイド

 先発投手が必要な状況ではあり、足許を見られるのは分かるのですが、それでも有吉投手に国吉投手は出しすぎではないかと思います。また、国吉投手を放出したがためにトレードのハードルも高くなっています。国吉投手を残した場合に見込まれるパフォーマンスを超えるだけのものを残さないと、このトレードは正当化できないと思いますし、それがかなり難しいと思うところです。ただ、有吉投手にはチャンスが多くあると思うので、是非とも掴んでベイスターズの戦力になってほしいです。

〇総評

 結論から言うと、足許を見られすぎており、マリーンズ優位のトレードだと思います。シーズン途中に先発を補強するなら出血は必要という意見も一理ありますが、2年前に巨人が楽天から古川投手を獲得したときの見返りは、和田選手でした。和田選手の二軍では好成績でしたが、純然たる一軍戦力ではありませんでしたし、国吉選手と比較すれば、戦力としての価値は段違いです。また、その他の先発投手”候補”を獲得するトレードでも、福井投手、山田大樹投手、榎田投手といった実績ある投手の見返りと比較しても、国吉投手の価値はずば抜けています。有吉投手の価値を高く見積もりすぎな印象です。もちろん、例示したトレードはシーズンオフなので足許を見られる局面ではありませんが、足許を見られるにしても国吉選手を出すのは明らかにやりすぎです。もっと低い価値の選手を提示してマリーンズ側が応じないのであれば見送っていいトレードだったのではないでしょうか。

〇個人的所感

 トレードに納得感が出る理由を挙げてくださった方がいるので、一つ一つ考えましたが、やはりトレード自体に肯定的な印象は持てませんでした。以下、トレードに対するポジティブな理由と、個人的な感想です。

・DeNAベイスターズは藤田放出以外のトレードはほぼ成功している。
 この理由でよく挙げられるのは、伊藤光選手やエスコバー選手を獲得したトレードで、それぞれのディールは当時のフロントの素晴らしい動きだったと思います。ただ、そもそも獲得した選手が既に一軍で実績ありの伊藤光選手、MLBでトッププロスペクトだったエスコバー選手という時点で、見込めるパフォーマンスは有吉選手と段違いだったと思います。また、放出したメインの選手が、それぞれ白崎選手、黒羽根選手なので、国吉選手ほどの一軍必須戦力ではなく、放出した選手の質から見てもトレード成功のハードルは低かったと思います。極端な話、伊藤選手やエスコバー選手が成功しなくてもトレード自体、失敗ということにはならなかったと思います。

・リリーフ投手はさっさとトレード放出した方がいい。
 リリーフはいつ劣化するか分からないから、早めに売った方がいいという理屈で、これはMLBであれば諸手で賛成する理屈なのですが、NPBにおいてはそうとも言い切れないと思います。前提としてMLBの場合は中途半端な成績のリリーバーでも40人枠に入れっぱなしにしていれば自動FAになるので、契約延長の価値無しという投手はさっさと売った方がいいということになります。しかし、NPBの場合、国吉投手レベルのリリーバーは便利でありつつも、FA宣言したら引き取り手があるかというと、疑問符のあるレベルでもあります。つまり、FA権を取得後も宣言するとは考えにくく、戦力外にしない限り、長期保有できるという計算が立ちます。逆に宣言できるであろうレベルまで成長すれば、そのときにトレードを検討すればいいと思います。

 さらにリリーフ投手のキャリア曲線を見ると、MLBでもNPBでも怪我等で一度戦力として計算できなくなったリリーフが、2~3年後に復活とまでいかなくてもある程度の戦力になる事例は少なくありません。MLBだとマイナー契約から這い上がるというルートになりますが、NPBの場合、多くはドラフト指名された球団に残留して、そうした局面を迎えています。制度としての善し悪しは別としてパフォーマンスの落ちたリリーフに対しては減俸しながら、二番出汁的な活躍を待つという手法がNPBでは使えます。

 具体例としては、かつての中日の高橋投手(阪神移籍前)や、今の横浜でも今年の砂田投手や三上投手はそうした例に該当するのではないでしょうか?MLBとNPBで保有権に係る制度が異なる点を考慮すべきではないかと思います。

 最後にこの件で最も残念なのは、国吉投手を先発で試さないまま、放出するに至ってしまったということです。カッターやフォークといった速い変化球だけでなく、ブレーキングボールもよくなってきた一方、短いイニングをピシャリと抑えるアウトピッチに不足していた国吉投手は、ちょうど先発再転向前の山口俊投手に重なると個人的には思っていました。先発投手として試すという段階に至らないまま放出となったのは、フロントだけでなく投手出身の三浦監督も何とかしてほしかったなという印象です。

※画像はwikimediaより

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