見出し画像

インドの小袋ビジネス、健在

2年ぶりに、インドに出張しています。

昨日、デリーのインディラ・ガンジー国際空港では、到着便搭乗客の極一部を対象に実施される、RT-PCR検査を受検するハメになりました。係官が無作為に選びだすのですが、驚いたのは、300ルピー(約500円)を請求されたこと。勝手に選んでおいて、支払いまでさせるというところが、インド的な民主主義なのでしょう。早速に洗礼を受けたわけです。

今朝、電子メールで結果が通達され、陰性が確認されたので、外に出ました(とはいっても、14日間の自己観察が義務付けられています)。

久しぶりに歩く、インドの街中。相変わらず、「小袋ビジネス」が盛んです。

「小袋ビジネス」というのは、シャンプーや歯磨き粉(旧態依然の表現ながら)、スナックなどを小袋に入れて販売するビジネスです。量販店などで、大容量の容器に製品を入れて販売するビジネスの対極に当たります。

たしかに、日常的に使用する消耗品を大量に購入することが、結果的に「経済的」、安上がりになることは、私たちも体験的に知っています。

しかし、日々の収入が不安定で余裕のない人たちにとっては、小さい袋で売っているシャンプーなどを、数日おきに買い続けることしか選択肢がない、という状態であるわけです。

最近は、タイで小袋ビジネスを見ることはほとんどありません。中進国となった成果といえましょう。

インドも人口が大きい分、GDPでは世界第5位の経済大国となっていますが、国民一人当たりとなりますと、だいたい150位前後を動いています。世界的には貧しい部類に入るといっても過言ではないでしょう。その中でもさらに貧富格差が大きいので、1年の総収入が5,000ドル(約62万5,000円)未満で暮らす人たちが、全人口が60%を超えると推測されています。

こうした状況ですから、タイでよくみられる Big C や、日本のイオンに相当する大規模量販店は、インドにはありません。経営自体が成り立たないのです。

※日本でも街中でよく見かける「スーパーマーケット」規模の店舗であれば、デリーやコルカタなどの都市部で見かけることがあります。

そうした低所得者層の人たちにとって強い味方である小売り形態が、「小袋ビジネス」というわけです。

人びとの所得が上昇したり、安定していけば、おそらく衰退していくであろうこのビジネス。早くそうなっていくといいなぁ、という思いがします。

余談ですが、どうやらインド政府はロシアとの貿易を強化していくようです。ドルを介さず、ルピーやルーブルでの直接決済ができるよう、話し合いが行われているようです。インドが経済力を強めていくためには、世界第9位の人口をもつロシアの市場は、たいへん魅力的。人権問題などですぐに貿易縮小と脅しをかけてくる欧米より、より安定した貿易が可能だと考えているのでしょう。

ウクライナのことを思えば、インド政府のこうした動きは残念に感じます。

しかし中国を牽制したいインドにとって、ロシアとの関係を深めるいい機会であり、なおかつ経済にとってもメリットが大きいことは事実でしょう。

ユダヤ商人に負けずとも劣らない、と評価する声もあるインド商人。インド政府が、今回のロシアによるウクライナ侵攻を機会に、まずはロシアに対し、売れるだけの恩を売りこんでおきたい。「小袋ビジネス」を衰退させていくために、それが早道になる可能性がありますから、その気持ちはよく理解できるのですが…。感情的には、受け入れにくい事実です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?