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自宅で過ごそう?ふざけるな!

新型コロナウイルスの蔓延で、よく耳にするようになったのが「自宅で過ごそう(Stay at Home)」。

昨年の初春は、新型コロナウイルスによる致死率が不明だったうえ、とにかく武漢でおおぜいが感染し、亡くなられたことばかりがニュースになっていましたから、多くの人々は感染を恐れて自宅で過ごしていたかと思います。

しかし1年が経ち、ただの風邪だとまではいえないものの、かといって2012年に流行した MERS(中東呼吸器症候群)ほどの致死率(MERSはほぼ50%)はないことがわかってきています。それゆえ、長期間にわたる自粛生活に限界を感じ、ぼつぼつ外に出かける人も増えてきているようです。マスクや手洗いを徹底し三密を回避すれば、さほどの危険はないだろう。仮に感染しても、重症になるまでには至らないだろう、という考えからのことでしょう。

その気持ち、痛いほどわかります。

タイのバンコクに住んでいる私も、今年に入って居酒屋で酒を飲んだのは、片手ほどにもなっていません。こんな時代を体験するなんて、まったく予想していませんでした。それゆえ最近は、今年3月8日に友人と入った和風居酒屋で注文した中トロ刺身の写真を見ながら、「あの頃に戻りたい」とため息ばかりをつく日々です。

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でも、ここのところタイは感染拡大が深刻さを増す一方で、今日も新規感染者6,166人。亡くなられた方は50人と報じられました。

そうなると、やはり自宅で過ごそう!となりますか…。

自宅で過ごそう!

ま、それが大切だということはわかります。わかりますけれども…ね。でも、こんな「自宅で過ごそう!」が許されてはいけません。

それは、こちらの写真。

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バンコク都の北にあるノンタブリ県。仲睦まじく過ごしている、ひとつの家族。子どもは2歳で、この写真にはうつっていませんが、64歳の父親も同居しているそうです。しかしこの4人…全員、新型コロナウイルス感染者。生鮮市場で焼きイカを売っていた父親が、最初に市場のクラスターで感染が判明。すると同居してる家族3人も、次々と感染が確認されたそうです。

本来であれば、4人ともすぐ入院、となるはずですが…。ベッドが足りずに自宅待機を強いられているとのこと。この状態で、すでに丸2日経ったそうです。

感染が確認されたので、誰も外出できません。幸い、ご近所さんが玄関などに食糧を置くなどして、生活支援をしているそう。これがせめてもの救いですね。しかし64歳の父親は呼吸困難の症状が出始めているそうでなので、一刻も早く中等症患者用ベッドに入って欲しいという切実なコメントも。

自宅で過ごそう?ふざけるな!

このご家族のように、ベッド不足で適切な治療が受けられない人たちがおおぜい出てきています。中には、3日待ってもベッドが空かず、自宅で亡くなられたお婆ちゃんのこともニュースになっています。もはや自宅で過ごしている場合じゃない、すぐにでも入院して欲しいです。

医療ツーリズムを誇るタイ、東南アジアのメディカル・ハブを自称するタイで、まさかの状態。こんなこと、一刻も早く解消してもらいたい。

となると、私にできることは、やはり自宅で過ごそう…ですか。貴重な病院のベッドを私自身が使ってしまうことがないように。そう思うと、中トロ刺身を我慢することくらい、何の不満もありません。なに、いつになるかはわかりませんが、生きている限りは必ず食する機会が得られましょう。それまでマグロさんにはもうしばらく、インド洋を自由に泳ぎ回っていてもらいましょう。

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