’’musyoku’’


ずっと働いてきた私は初めて社会から離れ半年間の休暇をとっている。

壊れていた富士通のクソスペックなパソコンを新型MACに買い替え、お家にあった無用な物を全て捨てて売って新しく必要なデスクワーク用のものたちを集めた。どうしてか溜め込んでしまう使わないiphoneは高く売れた。少しは食費に回す。

YOUTUBEを見ながら聴きながら別のモニターで友達からオススメされた外国為替の何やかんやをいじくり回して膝に愛犬のイタリアングレーハウンドを乗せながらドンキホーテで買ったインスタントコーヒーを飲んでいる。そしてふとこれはなんというかすごく生産性のない生活なのではないかと思ってくる。お酒が飲みたくなったりすることもある。外は明るい。タバコが吸いたくなることもある。あの吸い終わった後に舌の上に残る気持ち悪さを欲してみたりする。お昼から夕方になるにつれてホッとすることもある。陽が落ちると目が冴えてきてよしこれからが私の時間だと意気込んでみたりもする。気分の上昇はすごいけど落ち込むことは減ったように思える。それはとても幸せな事なんだと思う。

これっぽちも興味のなかった料理、自炊も始めた。奥が深い。油で生姜やニンニクの香りを出してから肉を炒めたり、蒸したり、下味を漬け込んだり、ヨーグルトの水を切ったり。レシピにしっかり沿って行う事によって安心して他人に提供することもできる、そしてその人が笑顔になってくれると作ってみてよかったと嬉しくなる。この気持ちは初めてのものだから、しばらく大事に抱いていたいと思える。

家の中とか身近な世界の中を知った気でいた。まだやったことないこと盛りだくさんの若輩な自分と向き合うことがmusyokuだとできるのである。これまでで大事なものだけを残して新しい大事なものを得た今、私は昔の奴隷であった自分と決別したのだと言い切ってみる。そしてこれからmusyokuが終わった時に起こるであろう他人から搾取される痛みを同時に思い出す。願わくばこの幸せの種を壊されてしまわぬよう。

愛犬が最近重くなってきて親心でとてもほんわかする。健やかに育ってほしい、いい人生だったと思えるように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?