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【それ日本語で言うと?】協会理事にカタカナ禁止でミーティングをしてもらう


スタートアップに関わる仕事をしていると、たまにこう叫びだしたくなることがあります。


「カタカナ語が多すぎる!」


IT業界やスタートアップ業界で働いていると、さけて通れないのがカタカナ語の大洪水

グローバル規模でデジタルトランスフォーメーションが進む中、ウェブサービスではよりデータドリブンPDCAサイクルが求められています。マーケットイニシアティブを取るためにも、チームコンセンサスの取れたKPIを設定し、クリティカルソリューションを考えていくべきです。

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しかも、最初は違和感があったはずなのに、いつの間にか自分もカタカナなしでは仕事ができない人間になっているのが、この業界の真の恐ろしいところ。

3ヶ月も経たないうちに、当初の気持ちをすっかり忘れ、「いまコミットしてるサイトがローンチするから、サードパーティでコンバージョンのチェックしたい」とか息を吐くようにすらすら言ってしまうようになるのです。



しかし、我々スタートアップスタジオ協会は、「スタートアップスタジオのことを、できるだけたくさんの人に知ってもらう」ことが目的です。

こんなカタカナ語が大氾濫の状態では、スタートアップスタジオのことはもちろん、そもそも何を言っているのかわかってもらうことすら出来ません。


このカタカナ中毒から抜け出して、スタートアップスタジオのことを誰にでもわかるように紹介するため、今回は本協会の理事を集めて「カタカナ語禁止ミーティング」をやってもらうことにしました。

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カタカナ禁止ミーティングのルール

1. カタカナを言ってはいけない(ただし人名の場合はOK)
2. 喋らなさすぎてもいけない
3. 一番カタカナを言った人は、理事の間で「カタカナマン」に認定される


渋谷のオフィスの一室に集まった、協会の理事たち。

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ここから、仁義なきカタカナ禁止ミーティングが始まります。


1. カタカナなしで自己紹介ができるのか?

ーーまずは、それぞれの自己紹介をお願いします。

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佐々木:こんにちは。佐々木喜徳です。

中村:中1の英会話みたいな自己紹介だ。

佐々木:僕の会社は、「社会課題を解決するための新規事業」を生み出す取り組みをしているところです。

永野:NHKのアナウンス?

佐々木:今日は皆さんと一緒に、知見を深められる談義をできればと思っています。よろしくお願いします!

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※よけいなことを喋りたくないので、目配せをして「次は他の人しゃべってよ」感を出す佐々木さん

永野:永野です。渋谷にある新興企業に勤めています。僕らは、大企業や行政や新興企業を「共創」させるための仕組みづくりをしています。

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※確かめるようにめちゃくちゃゆっくり喋る永野さん

佐々木:永野さんは、おしゃれですよね!いつも。

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※ここで佐々木から永野へ突然の攻撃!

永野:ちょっと急に話しかけないで!

佐々木:その上着はどこのですか?

永野:えっ...白い服です!

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※突然の質問に元気よく「白い服です!」と答える永野さん

佐々木:笑 ごまかしましたね

中村:僕は、娯楽系の分野で新興企業を支援している会社にいます!中村です。

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※どさくさに紛れて一瞬で自分の紹介を終わらせる中村さん

及部:次は僕ですね。「東京の赤坂にある広告会社」の子会社で、新興企業を生み出す会社を経営しています。

永野:「東京の赤坂にある広告会社」って、漢字の名前のとこですよね

佐々木:僕と永野さんは(所属している会社の名前がカタカナなので)肩書言っちゃダメですけど、及部さんのところは大丈夫ですよ。

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※「カタカナ禁止」を恐れるあまり、「漢字の社名」もいえなくなってしまった及部さん

及部:「社名を言っちゃだめ」って気持ちになってた.......。

中村:漢字は言えますよ!

及部:「固有名詞がダメ」っていうのがすりこまれてる...。

永野:大丈夫ですよ!

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※恐る恐る自己紹介を始める宮原さん

宮原:次は僕ですね。宮原です。新興企業に投資会社とは別の形で、お金であったり、人材であったり、技術であったり、知見であったり...

中村:教習所の授業みたいな喋り方になってない?

宮原:こういう授業ありますよね。

中村:入社したての採用担当の説明を思わせる。

宮原:カタカナなしが難しいんです!

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※自社名が言えず、頭を抱える宮原さん

宮原:うちは(新興企業から)株式を取得させていただいて、投資というよりは共同経営者として、伴奏しながら会社を育てていく会社です。

及部:わかりやすいね!

中村:どういう新興企業を支援することが多いんですか?

宮原:日本に眠る技術を持った会社や、日本で創業される外国の方に投資をさせていただくことが多いですね。

永野:たとえば?

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※永野から宮原への攻撃!

宮原:たとえば?!  

永野:たとえばどんな?具体的に?

宮原:あのー、電球、あの、電光っていうか、あの、光とかその。

佐々木:落ち着いて!!

宮原:光を扱う新興企業です!

永野:あやしすぎる

宮原:あやしくないです!えーっと、光を当てるだけで除菌ができる技術です!目に悪いと言われる青い光を含まず、光の波長を自由に組み替えられる技術を持ったスタートアップ....

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ーー宮原さん、アウトです。

宮原:あああああ

及部:途中まで完璧だったのになぁ。

佐々木:かなりいい説明でしたよ。

中村:すごかったのに。

永野:いや、でも(この展開は)めちゃくちゃ良いです。素敵ですよ!

一瞬の油断したスキにカタカナ語を言ってしまった宮原さん。果たして本題のミーティングは大丈夫なのか?!


2. カタカナを使わずに「ウェブサービスを開発するときに気をつけること」を説明できるのか?

ーー次の議題です。最近はIT系の起業が多いですが、そんな起業家のために「新しいウェブサービスを開発するときに気をつけること」を教えてください。

永野:えっ?

ーーえっ?

永野:(カタカナ語に気を使いすぎて)頭に入ってこなかった!もう1回言ってください!

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※うっすら余裕がなくなってきている永野さん

ーー「新しいウェブサービスを開発するときに気をつけること」を、起業家に参考になるようにお聞きしたいです!

佐々木:それでいうと「画面に映るもの」を作る前の段階が大事ですね。

永野:わかります!

中村:(起業家は)作る前に必要最低限の機能がなにかを考えた方がいいと思ってます。そうじゃないと、機能を盛り込みすぎて開発に時間がかかってしまうんですよね。

佐々木:でも、その必要最低限の機能を見つけるのが難しいんですよね〜

及部:僕が起業家によくいうのは「市場が欲しいものがなにか、仮説を立てて検証してください」ってことですね。

宮原:大事ですね!

及部:.........他の人は?

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※できるだけ喋りたくないので、固い決意で他の人に話をふる及部さん

中村:雑な芸人みたいな話のふり方だ

ーー「絶対に喋らない」という及部さんの決意を感じます。

佐々木:笑 よくあるのは「起業家が思っている課題が本当は課題じゃない」ことですね

永野:あ〜。確かに「起業家本人は別に困ってないけど、なんとなく課題だろうと思ったからこれにした」という場合は、課題がずれることが多いんですね。たぶん、(起業家が)使う側の気持ちになり切れていないんだと思います。特に気をつけた方がいいのは、いま持っている技術から考えた事業アイデアのとき...

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ーー永野さん、アウトです。

永野:えええええ

中村:けっこう喋るなーと思いました

永野:何がだめだったの!?

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※カタカナ語を使ったことに気づかず、みんなの説得を試みる永野さん

佐々木:自然に(アイデアって)言ってましたよ

永野:まじで難しい。

佐々木:いまのは乗り切ったと思ったのに。

中村:話を戻すと、僕の会社は娯楽系が多いので(※注:中村さんの所属するStudio ENTREはエンタメ業界に特化している)、他の業界と違ってそもそも解決する課題がないことが多いんです。でも、娯楽系の場合も「友達がほしい」「自慢したい」みたいな「人間のどの欲求を解決するのか」から考えれば、課題解決型の事業が思いつくパ......

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※自分が「パ」というほとんど日本語にない言葉を言ったことに気付いてかたまる中村さん

ーーパ?

永野:パ?

佐々木:パ?

中村:パターン......。

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ーー「パ」から立て直すのは難しいですね

中村:「パ」って。

永野:でもさ、いまの話聞いてて思ったけど、(どの人間の欲求を解決するかから考えた事業の例として)つぶやきアプリがある......

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宮原:なぜ?!

及部:「つぶやき」は思いついたのに?

中村:ただただ避けきれてない

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※なぜか「Twitter」ではなく「つぶやきアプリ」でアウトになる永野さん

永野:だめだ、全然喋ってない人を狙おう!及部さん!なにか喋ってください!

及部:.........。

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※沈黙をつらぬく及部さん

佐々木:及部さんの会社(※注:quantum)は、大学発の起業を扱ってますよね!

及部:.......。

中村:及部さん!会話に参加してください!

及部:.......。

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※意を決してミーティングに参加する及部さん

及部:......じゃあ、今の質問の回答を、します。

佐々木:お願いします!

及部:大学発の起業の場合、「市場がその開発者を認めてくれるか」が大事なんです。

佐々木:どういうことですか?

及部:「市場に本物の研究者だと思ってもらえるか」ということですね。しっかりした論文が出ている、市場と発明者の相性がいい、ちゃんとした研究者である、といったことが達成できていると、大きな成果につながります。

中村:なるほど。

佐々木:大学発の起業の場合、大学も新興企業の株主に入ってくるんですか?

及部:入りたいとは思っています

宮原:大学が単体で株主になるケ......

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※「ケース」と言いかけてフリーズする宮原さん

中村:そこからどうするんだ

宮原:.......形態はあるんですか?

佐々木:すごい!立て直した。

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※ちから技で、カタカナ語をなかったことにした宮原さん

及部:いまはないですね。大学は個別で投資ができないんです。なので(大学とは別に株式会社などの)法人を作って、基金化していくなどが考えられます。

中村:特許は大学が持っているんですか?

及部:そうです。大学発の起業の場合は、起業家に大学が持っている特許をお貸しするんですよ。そして、製品化して収益がでたら貸出料をもらいます。

佐々木:なるほど〜!

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※普通におもしろい話が聞けて満足する一同

及部:けっこう喋った.....。

佐々木:けっこう喋ったけどまだまだですよ!

中村:次のアジェンダはなんですか?

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疲れが出たのか、だんだんミスが目立ち始めたメンバー。最後のアジェンダを乗り越えられるか?!


3. 自分のスタートアップスタジオをカタカナ語なしで売り込めるか?

ーー最後のアジェンダは「自分のスタートアップスタジオのいいところを説明する」です。

佐々木:じゃあ僕から。あっ...

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※急に口をおさえて黙りこむ佐々木さん

佐々木:うっわ〜あぶなかったー

中村:なにが?!

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※ひとしれずカタカナ語を飲み込む佐々木さん

佐々木:えーっと、弊社(※注:Gaiax)のことを話したとき、周りからよく「いいね!」と言ってもらえるのは、中学生ぐらいのすごく若い人達むけの支援をしていることですね。

永野:たとえば?

佐々木:...たとえば?

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※自分のミスがけっこう溜まってしまったので、佐々木さんをあおって挽回をめざす永野さん

佐々木:えー、中高生に対して、起業の授業をやってます。学校の授業の中でやることもあるし、授業とは別で、土日にやるパ...

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※「パ」の呪いにかかる佐々木さん

中村:ひっこめちゃだめです!

宮原:持ち直せます!

永野:でも「パ」はむりだよ。立て直せないよ。

佐々木:.......だめだ

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佐々木:じゃあ次は永野さんでお願いします

永野:えっ!

佐々木:永野さんのところ(※注:Creww)は「こんな事業があるよ」って公表して人を集める掲示板を持ってますよね。あれ、なんていう名前でしたっけ

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※佐々木の逆襲、始まる。

永野:あれは............ 「場」です

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※突然うまれた謎の単語、「場」

及部:場?

永野:「場」です

中村:....場?

永野:事業の協力者を集める「場」です。

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※何を言われても「場」で押し切る永野さん

永野:社内起業家と投資組合の接点をつくるための場ですね。うちは、(社内起業家と投資家の)お互いにとって一番いい支援の形をつくりたいという思いがあるんです。もともと、僕たちは「本業を続けながら起業できる」というのを自分たちの推し文にしてますしね。

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※突然あらわれた2つめの謎の言葉、「推し文」

佐々木:推し文?

中村:もとは何だったんだ?

永野:推し文ですよ!

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※身振り手振りで「推し文」を伝える永野さん

及部:(佐々木さんにこっそり)....推し文ってなに?

佐々木:.....なんとなくわかったんですけど、言いそうになるから聞かないでください

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※ひっそり「推し文」をめぐる攻防を繰り広げるふたり。

宮原:それでいうと、僕の会社は販売促進の支援が得意なんですけど、新聞社がとりあげたくなるような「推し文」を考える支援もやっていますね

佐々木:確かに、宮原さんのところは「販売促進」が強みですよね!

及部:.......販売促進?

永野:........推し文?

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※「わかっている人」と「わからない人」で分断されたまま、どんどん複雑になっていく会話。


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会話がどんどん空中戦になってきたこともあり、1時間以上におよんだカタカナ語禁止ミーティングはここで終了。

ここに記録しなかった会話や、細いミスも計算し、誰が一番の「カタカナマン」なのかをあぶりだします!

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というわけで...

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Gaiax佐々木さんと、Creww永野さんには、栄えある「カタカナマン賞」が贈られました!


ちなみに、今回のカタカナ禁止ミーティングをやってみた結果、「自分が普段どんな喋り方をしているのかがよくわかった」「普通の人にどう思われてるのかに気付いた」という感想が寄せられました。


自分たちがどれくらいカタカナを使っているか、実は客観的にはなかなか気づかないもの。これを読んだ人も、ぜひ一度カタカナを使わずに自分の仕事を説明するのにチャレンジしてみてください!


今回紹介したスタートアップスタジオ一覧

以下、ミーティングの順位でご紹介します。

■及部さん(quantum)

■中村さん(Studio ENTRE)

■佐々木さん(Gaiax)&永野さん(Creww)


まずは「ちょっと相談してみたいな」ぐらいの気軽な気持ちでも大丈夫!

気になるスタジオがあったら、ぜひ遊びに来てみてください!


スタートアップスタジオ協会とは、スタートアップスタジオ(同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織)に関する発信や、起業に関するイベントの企画運営をしている団体です。詳しくはこちら https://startup-studio.jp/

文・画像:まいしろ(Twitternote

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