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売れるために重要なのは「技術力」or「マーケティング」???

こんにちは!
(株)スーパーソフトウエア東京オフィス 広報です。

弊社(スーパーソフトウエア東京オフィス)は、2012年にスマートフォンアプリ「漫画カメラ」をリリースしました。
当時、1週間で100万8ヶ月で600万ダウンロードに迫る勢いで大流行しました。

なぜ、漫画カメラはこんなにも流行したのでしょうか?

今回は、
なぜ漫画カメラが話題になったのか、企画・開発・広報マーケの切り口から解き明かしていきます。

アプリ開発に興味があるエンジニアも多いと思います。
しかし、
「おもしろいアプリを開発したら何でも売れる!」
残念ながらそんなに単純な話ではないようです…

ではどうしたらよいのでしょうか…

漫画カメラの始まり→会社としての変化→認知拡大の戦略
という流れで紐解いていきます。


スーパーソフトウエア東京オフィス代表 船木俊介

プロフィール

上智大学在籍中からスタートアップ企業でシステム開発に携わる。
2000年には後に東証マザーズに上場するマーケティング企業の立ち上げ、フリーランスエンジニアを経て2010年に株式会社スーパーソフトウエア東京オフィスを設立。
ITコンサルティング事業を行いながら、2012年には750万ダウンロードという当時として驚異的な数字を記録したアプリ「漫画カメラ」を開発してリリース。
2014年、日本最大規模のC2Cベビーシッターサービスを作る。クライアントの課題解決をテーマにしたITサービス事業を行い、現在もエンジニアとしてAI(人工知能)やアプリケーションの開発も行っている。



___漫画カメラとはどのようなアプリですか。


写真を撮ると一瞬で劇画風の漫画になるアプリです。
当時は今のようなAIによる画像加工も無く、スマホ自体がようやく普及し始めて、持っている人も30%ほどでした。
それこそ、まだ電車で新聞を広げる人もいて「いまは邪魔な紙を広げてる人も、将来はスマホで見るようになるだろう」と言われ、今でこそ当たり前のことがこんな時代が来るよと言われているくらいで、スマホでどれくらいのことができるのか、世間もよく分かってないようなの時代した。
その時代背景の中で「一瞬で写真が漫画になる」アプリをリリースしたので話題になりました。



___漫画カメラを作成しようとしたきっかけを教えてください。


きっかけは単純で、自分たちの技術力を使って何かできないか、技術で会社の知名度を上げるようなことができないか、というものです。
当時、東京オフィスを立ち上げたばっかりで、社員が2~3人とアルバイトの計5人くらいしかおらず、仕事量も大してないような状況でした。
ただ、技術力には自信があったので、「どういう風にそれを知らせていくか」ということと、「最近アプリっていうのが出てきたよね」っていうところの掛け算で開発していこうってなりました。
10本ほど開発しようとしたうちの2本目が漫画カメラでした。

___ちなみに1本目はどのようなアプリだったのですか?

twitter(現在のX)に流れてきた投稿を曲に置き換えるという音楽アプリでした。
文字を譜面に置き換えるってアプリなんですが、それはもう全然ダウンロードされなくて…。
当時来ていたアルバイトの子に「なんでだろう」って聞いたら、「何が楽しいのかわかんないっすよ。難しいっす。」って言われて、このアプリの内容は難しいのかと衝撃を受けました。
僕は音楽をやっていたので、身の回りのものが曲に変わるっていうのはおもしろいことだと思っていたんだけど、音楽やってない人からしたら意味不明なものだったんですよね。
じゃあもっとわかりやすいものにしよう、写真を撮ったらすぐ漫画になるってドラえもんの道具にありそうな感じにって。
みんなが興味があって、触れたことのある漫画でっていうところが刺さったのかもしれないですね。



___どのように世間に広がっていったのでしょうか。


最初は「漫画カメラ」っていう名前なので、プレスリリースを出してすぐにそれを見た漫画家の方が使ってくれました。twitterで見てたんですが、苦労して紙とペンで書いているのが、写真を撮って漫画風になるっていうのがどんなものか…という雰囲気でしたね。
その漫画家の方が結構有名な人で、ロックバンドのGLAYさんとも絡みがある人だったんです。そして、それを見たGLAYの方が使い、GLAYさんが使うとファンの方や、他のミュージシャンなど様々な人も使い始めて、例えばきゃりーぱみゅぱみゅさんとか!
初日からこのようなスピード感で、その後もサッカー日本代表の方とか、海外ではウォーキングデットのノーマン・リーダスさんとか有名なあらゆる人が使ってくれて…といった感じでした。
幾度となくTVにも何度も取り上げていただき、番組の中で使ってもらったりしましたね。

___そんなにたくさんの有名人に使ってもらえるってすごいことですよね。

そうそう、それこそタイアップでお金払ったら何十億とかしてしまうんじゃないかな…。
やはり当時みんなの発想の外にあったっていうことが大きかったのではないかと思っています。
「2時間しか寝てねぇ」とか文字がついてるからちょっと笑えるし、人に見せたくもなるキャッチーさとか。



___漫画カメラをリリースしたことで、社内外での反響や与えた影響を教えてください。

これは、本当にたくさんあって書き切れないくらいなんですが…
リリースした日にプレスリリースを打ち、twitterで反響を見ながら「ちょっとずつ使われ始めたね」って話しをしていて、帰りに電車乗ろうとしたら、もう恵比寿駅で学生が使ってるみたいな状況だったりとか。
あとは、リリースしてからいろいろな人と会うことになるのですが、その時は「キャバクラでめちゃくちゃウケるからありがたい、話のネタになる」とよく言われたものです。こういうアプリをよくぞ作ってくれたーっていうサラリーマンに20人は会いましたね。
そんなにみんなキャバクラ行くのかっていうそっちの方が衝撃だったけど。僕はキャバクラは一切いかないので。一切。

他には、当時新進気鋭でTwitterの対抗ぐらいのtumblrという会社があったのですが、そこから買いたい(買収したい)って連絡が来ましたね
こちらとしては売っても良いけどややこしいしなと思い、「売りません」という回答をして、その話をまたインタビューの時に使わせてもらったりしましたね。

それ以外だと、大企業からアプリ開発の依頼が増えました
大手メディア系企業からはこういうアプリを作ってくれないかという話をいただき…。
あと、アプリ開発をしている大手海外企業から企業提携の話があってニューヨークとか韓国にも行ったし。
リリースしたことで、本当にいろんな発展がありました

___会社自体としての知名度だったり、業績にも影響があったんですね。

もう大きく変わりましたね。
他社が漫画カメラを模倣したアプリをいっぱい出してきたり。



___どのようにして漫画カメラの知名度を上げた(多くの人に使ってもらえるようになった)のですか。


僕自身がマーケティング業界の経験があったので、まずTVや雑誌などのメディアに取り上げられるための材料を積極的に提供していこうというスタンスがありました。
メディアが記事や番組にするためには、トレンドや消費者動向といった大きな流れが客観的にわかる必要があります。
いくら主観的に「うちの商品はこんなに良いですよ」と言っても、企業側の広告宣伝になってしまって、メディアからは避けられて終わり。当然、それは企業がお金を払って広告として出してくださいって感じですよね。
やはり今のトレンドとか動向とか世の中の流れっていうのがこうなってますよというところが大事で。
あくまで客観的なデータをなるべく即時に透明性高く出していく方針で進めました。

具体的には、AppStoreのダウンロード数をほぼリアルタイムに毎週のようにプレスリリース出したり、ネットでの画像投稿数をカウントして数万件になったということや、海外企業からアプリ買収の話があったらビジネスモデルの話として記者に伝えたり。世の中が動いてるよみたいなことを材料としてどんどん出していくっていうことをやっていました。
こういったことを他にやってる開発会社はあまりいない時代だったので、100を超える多くのメディアに記事や番組にしてもらったり紹介してもらったりしました。
記者の人が毎日のように取材に来たりとか、テレビカメラ、大阪の番組が東京まで来て取材したりとか、そんなこともよくありましたよ。

しかし、アプリがヒットしたところでその盛り上がりは1年2年と長期で続くわけではないことはわかっていたので、数ヶ月の短期間でいかに集中的に、ニュースバリューのある消費者動向、普及し始めたスマホを使ったライフスタイル、新しい楽しさという切り口で出せるか…に賭けてましたね。

___私だったら10年くらいこれで稼いでいけると思ってしまうかもしれません…。

これうまくいけるわ!とかって思ってしまう人もいるのかもしれないけど、僕は全く思わなくて。
経営者の先輩や仲間、仕事で関係のある監査法人や会計士の方など、あちこちで「すごいですね」って言ってくれたんだけど、「いや、こんなものは半年後には忘れられるんで」って返してました。なんでそんな冷めてるんですか?って言わましたが(笑)
本当にこのアプリがヒットしたのは、技術だなんだっていう演出は当然してるけど、8~9割マーケティングでしかないと思ってます。
もちろん建て付けとしては、うちの会社の技術を広めるためっていうので喋りますよね。喋るんだけど、それでも実態はやはりいかにそれを届けた、情報を届けたかっていうところが大きいんですよ。



___開発して良かった点と苦労した点を教えてください。


営業、採用、思ってもみなかった展開など全てが良かった
ですね。

苦労したことというか、マーケティングや営業含めた人材がもっといればもっと別の展開も作れたかなとは思います。
こういったアプリは、今でいうSaaSや自社サービスと同じで開発サイドの役割よりもビジネスサイドの役割が大きいわけです。
マーケットニーズに基づいて、開発する内容に落としていくという順序のため、「顧客の感想や、顧客がこうしたいというところを考える→開発タスク」という流れで、つまり技術者きっかけで何かできるのではなく、ユーザや顧客との対話で相乗効果というか小さなイノベーション的なものが繰り返されて発展していきます。
技術的にアプリだけみてると現状の改善という小さい範囲の行動になるので、技術ではなく人の動き、人がどう感じてるかを観察していかないといけません
ただ、当時の社内は僕以外は技術者だったので、僕が対応できる範囲でやるしかない、という苦労がありましたね。
良いもの作ったら売れるっていうのってよく間違いだって言われますが、本当に間違いで。良いもの作ったからって売れるのであれば苦労ないんですよね。マーケティングとか世の中からなくなりますし、テレビとか、要は広告とかも全部なくなってしまいます。
良いものを作ったって売れないから大変なので…だから、大きな市場の中で良いものっていうのを判断するために、広報含め、マーケティング、広告で情報発信しているわけです
やっぱ人に情報を届けるっていうところのすごさや大事さがあるよねっていうことですね。知らなければ買えないし、良さもわからないので。
どんなに良い商品でも、やはりマーケティングってところに負けて消えていくっていうのもよくある話です。
それはアプリ開発だけではなくて、いろいろな商品に言えることです。



___他媒体では話していない、初めて話す秘話をください。


漫画カメラを実装したのが、実は当時のアルバイトの学生でした。
企画とかデレクションとか、こんな風に作ってみたいという部分は僕がやれたんだけども、それを伝えて「そうですね」って言える社員が誰もいなかったんですよね。
というのも、OpenCVなどの画像処理のライブラリーを使って作ったりしたのですが、マニアックなライブラリーなので業務をしてる人だと知らなくて。個人的には結構好きなので色々使っていたのですが。
当時アルバイトで来てた人に、「このOpenCVはこういう処理ができるから、こういうロジックでやってみて」って言ったら、もう翌日には形がある程度できあがってて。
で、そのできあがってきたものが背景画像もない、本当に漫画になるだけっていう感じなので、じゃあこれこういうエッジ検出の戦略で背景切り抜いて、別の面白いやつに置き換えてってやって、そしてら2、3日でできたんじゃないかな。
それができた瞬間にもうこれはいけるわ、おもしろいなと思いましたね。
見せて伝えやすいし、ウケもいいし、とにかくその後の展開の流れのイメージができましたから。
とはいえ、会社の技術力をアピールするという大本来の目的があるので、アルバイトが実装したとは言えず、社員のAさんが実装したみたいな演出はしてました…まあロジック含めて考えてるのは僕なので外部したら大差ないかもしれないですが。

___今後開発してみたいアプリはありますか。

これは近い将来OpenAIなんかが実現しそうですが、「専属秘書的なパーソナルアシスタントをしてくれるアプリ」。
40代になってきて、あれなんだっけ、あれどうなった、という「あれ」が多くなってきたので、普段の会話を全部聞いてて、いざというときに、この「あれ」は「沖縄出張のチケットのことです」、この「あれ」は「新宿二丁目のおかまバーのことです」と代わりに言ってくれるやつ。

___おもしろそうです!よくそういったアイディアが浮かびますね。

いや、普段くだらんことしか考えてないので、まぁ関西人の話のネタですよね。関西人って面白いこと探して生きてるから。
だから面白いアイデアがあったら、それをアプリにしようとか話そうとかいろいろ思うじゃないですか。そういう性分なんでしょうね。


お話を伺っていて、天狗にならず、俯瞰して物事を考えられているんだなと感じました。

アプリを開発してリリースして終わり。こんなに面白いアプリなんだから勝手にダウンロードさえれていくだろう!…そんな上手い話はそうそうないということですね。
アプリ開発に限らず、どの商品においても消費者に存在を知ってもらう工夫、良さを届ける工夫をマーケティングという戦略のもと実行していく必要があることがわかりました。

また次の記事でもお会いできますように🌟



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