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419総裁選で基礎年金議論

自民党総裁選の争点として、基礎年金を全額税方式に変える主張をしている候補がいる。「最低保証年金」制度を作り、消費税を財源に支給する。ただし一定以上の所得、資産がある者には支給しないという。
これについて年金制度を実施する厚労省は「税方式の最低保証年金は昔からある議論だ。財源をどうするかに尽きる。生活保護のような救貧政策との関係も整理する必要がある」と評論している(「年金改革総裁選争点に」産経新聞2021.9.24)。

税方式の最低保証年金議論が昔からあるという指摘はそのとおりだ。現行の基礎年金導入時点(1986年)にもあったし、もっと昔、国民皆年金(1961年実現)のベースとしての国民年金創設時にもあった。ざっと言えばこういう主張だった。
「公務員には政府資金による恩給が支給される(当時。今は公務員も社会保険年金)のだから、国民に食料を提供している農民にも同じく政府から恩給が支給されるべきだ」
そして1959年に実施された国民年金に「福祉年金」が盛り込まれた。この時点ですでに高齢になっていて、これから国民年金保険料を払い込むには間に合わない世代の日本国民を対象に、政府資金による老齢福祉年金を支給する。ただし高額所得がある者は別というものだった。他に障害福祉年金、母子福祉年金も同時実施されたが、説明すると長くなるので省略する。
 老齢福祉年金の構造を分解すると次のようになる。
①この時点ですでに高齢者になっていた者に限定した経過的な制度
②対象は国内居住の日本国籍者に限る
③消費税といった特定財源によらない
④世帯、家族にそれなりの収入がある場合は支給しない
 
 今回総裁選候補の構想を老齢福祉年金と対比すると、
①制度を恒久化する
②国籍を問わない
③財源を消費税とする
④世帯ではなく、当人の所得による支給制限、さらに資産も不支給理由にする
 ということのようだ。
 他候補は財源を指摘している。消費税率の8%上昇が必要になるなどだ。それも重要だが、その前に構想の発想自体を議論する必要がある。すなわち政治観に関わることだからだ。厚労省が「生活保護のような救貧政策との関係も整理する必要がある」としているのがまさにその点。
①高齢者になれば政府から定期、終身のカネが配られるのはなぜ?
②もらえる資格は何? 
③消費税と年金との関係性は?
④現役時代に老後準備をした高齢者をなぜ除外される?
 
 若干の事例を考えてみよう。202×年に新制度が施行されたとする。いずれも70歳の次の人に新年金を支給されるのか。
Aさんは連続殺人事件の犯人で死刑判決を受けて刑の執行待ちで刑務所にいる。○
Bさんは外国人で不法滞在歴20年。偽造住民票で世渡りしてきた。○
Cさんは若いときから外国で事業を営み、国内で暮らしたことがない(から日本の消費税を払ったことがない)。そろそろ事業を畳んで日本に帰ろうかと考えている。○
Dさんは中国人。日本国籍を取得した孝行息子の誘いがあり、来日して老後を日本で暮らすことにした。○
Eさんは海外渡航歴もない純粋日本人。コツコツと懸命に働き、老後に必要とされる額の資産を作っている。×
 
 制度の魂は細部に宿る。こうした限界事例を突き詰めていけば、その制度構想の本質が見えてくる。

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