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385防御の基本

「極超音速兵器 無人機で探知」という見出しの新聞記事を見た(『産経』2021年8月8日)。8月8日といえば、ソ連が中立条約に反して、わが国への騙し打ち攻撃を始めた日だ。76年前のことである。北方領土の不当占領もここが起点である。国恥記念日の一つとして忘れてはならない。
前置きはこのくらいにして、見出しの記事のなにが問題か。
極超音速兵器はマッハ(音速)5倍から10倍以上の速度で飛来するミサイル兵器。レーダー網で補足できなし、できたとしても対応措置をとる前に目標都市で炸裂している。記事は「先行しているのが中国とロシアで、中国は2019年10月の軍事パレードで極超音速滑空兵器を搭載可能な中距離弾道ミサイル「DF17」を登場させた。ロシアも同じ滑空兵器の「アバンガルド」を開発し、すでに実戦配備が始まっているとされる」と書いている。
これに対応する手段を防衛省が検討するというのが記事の内容だ。危機感ゼロの平和ボケの政党や政治家よりはマシだが、有効性の面ではほとんど意味がない。飛んでくる方面の海上に無人機を飛ばしておき、少しでも早く探知しようということのようだが、数十秒早く補足することにどれほど役立つのか。そもそも年中無休24時間体制で無人機を飛ばしておく経費をどう計算しているのか。悪天候時にはどうするのか。
予告なしに突如、何十発もが同時に東京に飛んでくるのだ。今どき宣戦布告をしてから始まる戦争や紛争はない。警報が出て、避難用具をまとめようとする前に、地域が火の海になっている。同省の幹部職員はこの規定をどのように読んでいるのだろうか。
国防関係者が運よく生き残った場合の「政府は防御手段を講じていましたよ」と言いするためとしか考えられない。
「匂いを絶つには元から絶たねばダメ」という消臭剤コマーシャルがあった。そのとおりで、防御手段のない兵器を配備させてはならないのだ。プーチンや習近平は「自分たちは侵略者ではない」と口にする。であれば極超音速ミサイルなど要らないはずだ。この論理を発展させれば、狙われる可能性がある国には、そうした兵器を破壊する防御権があるという結論になるはずだ。イスラエルがイランの核開発施設を無通告破壊するのはこのためだ。
中ロの攻撃目標に日本が含まれていないと国民に説明できる政党、政治家がいたら、その演説を聞きたいものだ。
防衛省設置法3条1項は「防衛省は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし…」となっている。ミサイルを撃ち込まれることは、平和とは相入れないはず。防御手段としては、少なくとも配備されている基地の事前破壊でなければなるまい。さらにその前には、発射基地の場所を補足しなければ話にならない。
中国は総延長5千キロに及びミサイル発射のための地下基地を作っているというし、南シナ海にミサイル搭載の原子力潜水艦を何十隻も潜ませている。その探知をどう進めるかの課題がある。そうするとこの種の兵器は開発しないという国際条約と国際機関による査察が必要になる。
原子爆弾廃絶の本来の趣旨は、非人道的な大量殺戮手段を開発しないことであるはず。ウイルスを用いた生物兵器、有害物質を都市で拡散させる化学兵器などもすべて同類だ。そしてそうした兵器開発に躊躇しないのが、人権感覚のない政治指導者ということは論理的帰結然である。

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