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424総裁選と民主主義

与党自民党の総裁選が終わった。過程と結果は次のとおり。
立候補者は、河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4人。
1回目の得票は、
A河野255 (国会議員86+党員・党友169)
B岸田256 (146+110)
C高市188 (114+74)
D野田63 (34+29)
過半数獲得者がいなかったので直ちに二回目投票になった。結果は、
A河野170 (国会議員131+都道府県39)
B岸田257 (249+8)

どうしてこういう結果になったか、事情を知らない後世の人が見たらどう思うだろうか。党員・党友の支持が多いA候補が、議員というインナーサークルの駆け引きでひっくり返された。党員の民意を反映しないインチキである。そういう主張をする者が出てきそうだ。

党の代表を選ぶのだから、党員による直接選出があるべき姿である。これが大原則。ただし個々の党員の意思をどのように確認するのかという問題がある。末端党員は日々、自分の暮らしで精一杯。だれが党の代表にふさわしいか、どの人の政策が自身にとって都合がよいかは、絶えず揺れ動いている。投票日が変更になれば、投票先も変わる者が大半だろう。
告示日時点では党員投票で圧倒すると見られた候補が投票日に近づくと伸び悩んだなどがその一例だ。党員の直接選挙では、投票時点にピークを合わせたイメージ戦略が有効であり、詳細に検討すれば化けの皮が剥がれるトンデモ政策でも通用する。つまりポピュリストにとって有利ということになる。選挙には「クーリングオフ」というやり直しは組み込まれていない。投票失敗の結果を後悔しても遅いのだ。

では代議制、つまり国会議員だけによる間接選出がベターなのか。インチキ政策に騙される恐れは少ないが、党員の総意とは異なる結果になることを避けられない。今回も党員投票とは違う結果になっている。国会議員と党員の選挙結果が違うことが、さまざまな憶測を可能にする。

ではどうしたらいいのか。こうした場合、現代民主主義の発祥地であるアメリカの選挙システムが参考になる。党の代表を決めるという重大事項なのだから、人物を1年以上の期間、党員がじっくり品定めするというシステムが導入されている。
選考期間が短いと、候補者の人物や政策をよく知っている国会議員による選出方法を採択せざるを得ない。そうしなければポピュリストに党を乗っ取られる怖れがあるからだ。しかし党を構成するのが党員である以上、本来は党員による直接選出によるべきだ。
以上を総括すると、見えてくるのは次のような仕組みになるはずだ。
党の代表は党員が直接選出する。党首(総裁)の任期は固定の有期とし、任期終了の1年以上前から代表戦を開始する。自分がと思う人は幅広く立候補し、支持者拡大の選挙活動に入る。勝てないと思った者は降りていき、最後に残った数名で投票に入る。こうすれば状況によって政策を変える無節操者はおのずから排除されるはずだ。候補者の側でも選挙区以外の党員との触れ合いを通じて、自身の政策をより精緻に磨き上げる機会になる。
思いつき、つぎはぎの政策しか持ち合わさない軽薄な者に国家、民族の将来を託すほど恐ろしいことはないのだ。今は野党の皆さんにも、同様の予備選システムの導入を願いたい。

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