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386LGBT濫訴の危惧

身内の者がLGBTをカミングアウトしたら、あなたはどうする? ちなみにLGBTとは、次の四つの総称。すなわちL:レズビアン:女性同性愛者、G:ゲイ:男性同性愛者、B:バイセクシュアル:両性愛者、T:トランスジェンダー:心と身体の性が一致しない人。
胸に手を当てて考えた。悩んだ末ではあろうが、「キミの人生なのだから」と認め、それまでどおりの親族付き合いをするだろう。宗教的、民族的に、同性愛などを認めない集団もいるが、日本人の場合、そこまでの厳しさはない。戦国時代の織田信長と小姓の森蘭丸との関係がそうだったという説もあるし、「当人同士がいいのであればかまわないのでは」といったところあろう。ところでこの説が正しいとすると、織田信長か子どもをのこしているから、バイセクシュアルだったことになるのだろう。

ところがLGBTを「容認」するだけでは足りない。「積極的にLGBTを支援しない者には社会的制裁を加え、抹殺しなければならない」と言い出す集団が登場してややこしくなっている。それでは行き過ぎではないかと思うことすら、彼らは「差別」であるとして攻撃する。LGBTだけが正しい道であり、そうでない者は異常者と言い出す者すら出てきそうな勢いである。そしてあろうことか、そうした過激な思考法を日本国内に定着させるべく、法整備を試みる者が少なくないところまできている。

島田洋一さん(福井県立大学教授)が産経新聞の「正論」(2021年8月5日)の論考が参考になる。読むチャンスがなかった人のために要約紹介をしよう。
アメリカ・コロラド州にケーキ店を営む菓子職人のジャック・フィリプスという人が暮らしている。自らをケーキ・アーティストの名乗る腕前で、オーダーメイドの注文客が多くて繁盛していた。2012年のある日、“ウェディングケーキ”の注文を受けた。聞いてみると同性婚カップル。フィリプスさんが信仰する宗教では同性愛を認めない。そのことはお店のホームページで「ジャックはどなたにも喜んでケーキを作ります。しかし、私の宗教的信念と相容れない注文には応じられません」と明記してある。フィリプスさんは理由を述べてケーキの注文をお断りした。
ところが、である。このカップルはケーキ屋風情(ふぜい)が生意気だとして州の公民権委員会に訴えた。そうしたらなんと委員会は、フィリプスさんの注文お断りを「性的指向を理由とした差別に当たる」と認定し、同性愛カップル用のケーキ制作を命じたばかりか、LGBT専門家による教育を従業員にも受けさせ、四半期ごとに改善状況を報告すべしとしたのだ。
フィリプスさんはどうしたか。「信仰に反して同性婚への祝福を強要するのは憲法違反」だとして訴訟を提起した。泣き寝入りしなかったわけだ。そしてケーキ制作命令に対してはウェディングケーキ作りを事業から取りやめることにした。売り上げは40%減になり、訴訟費用はかかる。それでも理不尽な“人権論”に抵抗した。天晴(あっぱれ)な自由論者である。
訴訟は2018年に連邦最高裁が「公民権委員会は同性愛者の尊厳と信仰の自由の両立を図るべきだった」とフィリプスさんの勝訴判決で決着した。6年かかったが、アメリカ司法には良心、良識が残っていた。

ところが過激な左翼活動家が、フィリプスさんへの執拗な攻撃を加えるようになった。例えば「性転換7周年を祝うケーキ」の政策をフィリプスさんに注文する。フィリプスさんはその宗教理念に即して断ることになる。すると「ウェディングケーキとバースデーケーキは別物だ」として改めて人権侵害事件として持ち出すのだ。
“人権派”と称する弁護士グループが背後にいて、さまざまな法令を持ち出してはフィリプスさんを公的な場に引っ張り出して糾弾する。そのたびにマスコミが取り上げ、攻撃する側(つまり運動団体と弁護士事務所)には支援金が集まる。しかしフィリプスさんの闘いはすべて自腹の負担。本業や家計への障害は大きい。それがこの種の運動体の目論見である。

フィリプスさんが屈服して謝罪するか、事業そのものを畳むか、精神的に追い詰められて自殺するか。そうなれば攻撃側は大勝利。その様を目にした国民は委縮し、いわうる“人権派”への批判を差し控え、口をつぐむだろう。それが意味することは、発言の自由の封殺、そしてその先にあるのが思想の自由の死滅。政治的には民主主義の終焉である。これこそが運動グループの背後に隠れている黒幕の真の目的であるとしたら。彼らが扱いやすい素材の一つがLGBTだとしたら?
民主主義が崩壊して専制主義に移行したらどうなるか。専制的で自由が存在しない社会ではたいがいLGBTは禁止されている。タリバン支配のアフガニスタンでは、今後どうなるのだろう。ウィキペディア等で同性愛などの項目を引き、禁止国と許容国の色分けを、政治体制での民主派と専制派の色分けと比較して見るとよいと思う。

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