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装丁おぼえがき

はじめに

本記事は、2月に頒布した同人誌の装丁に関するおぼえがきです。
初めての同人誌を作るにあたり、noteをはじめツイッターやブログなどをかなり参考にさせていただきました。私もどなたかの参考になるような情報を少しでもご提供できたら嬉しいな〜と思い、今回筆を執ってみました。
使用した紙やフォント等に関しての所感から、デザインに込めた思いなども書いています。ちなみにまだまだ勉強中の素人ですがデザインも含めて全部やるタイプのオタクです。写真が多いのでちょっとページが重いかもですがご了承くださいませ。

なお、二次創作(男女CP)の要素を多分に含んでいますのでご留意ください。


『この身に流れるかなしみの味を知っているか』

【仕様】A6文庫/68p
表紙:ミランダ黒 170K
本文:淡クリームキンマリ 70K
カバー:雷鳥コートN 135K、マットPP
遊び紙:色上質赤 厚口(前後)
加工:パール箔

印刷:STARBOOKS様

主人公の「恋心(に限らず本音…)を包み隠したい心情」を表したかったのでカバー付きにしました。
かなり薄い本ですが、本棚に置いた感じや手に持った感じはそこまで違和感ないです。開く時にカバーがキシキシ言うのは表紙との相性なのかな。

もう少し薄い紙でカバーを作れたらよかったのですが、STARBOOKSさんのオンデマンドノベルズでは、キュリアスIRパール(厚さ0.15mm)かミラーコートプラチナ(厚さ0.16mm)か雷鳥コート(厚さ0.13mm)のみだったので、一番薄いこちらにしました。マットPPもかけたので、余計に厚みと固さが出てしまったんだと思います。まあ仕方なし。

本棚に並べるとこんな感じ。
(左)試し印刷版(中)頒布版 ※右はのちほど紹介する小品集


STARBOOKSさんは箔の種類がとっても豊富!パール箔が使えるというのも印刷所選びの際に重視しました。角度によって透け感が変わるので面白いです。タイトルの文字と重ねても可読性に支障はなかったです。
手袋は作中でキーアイテムになっているのですが、角度によって白っぽくなったり黒っぽくなったりしたらいいなあと思ってこの箔にしています。黒っぽい……かどうかは微妙なラインですが、揺れ動く心情なんかも合わせて表現できているんじゃないかな〜なんて思っています。

上から見たときの反射具合
下から見ると結構なパール


折り返し部分にはあらすじとシルエットを載せました。
フォントはタイトルと合わせてしっぽり明朝を使用しています。上品かつ雰囲気があって好きです。

折り返しの隙間から見えるミランダ黒のきらきらがいい感じ。恋心、隠したくても見えてきちゃってるよ。
遊び紙はシンプルな色上質の赤。画像だとかなりパッキリした色に見えますが、実物はもう少し落ち着いた赤です。吸血鬼ネタかつ恋のお話なので「この身に流れる」赤い血や気持ちを表現しました。前後に挟むだけでぐっと高級感が増しました。


表紙はカバーに隠されていた主人公の心情をイメージ。ミランダ黒に黒一色の印刷。角度によりますが、タイトルも全然読めます。
すこしおどろおどろしい血飛沫で抱えている黒々とした内面を見せつつ、ガラスフレークの煌めきできらきらした気持ちを表しました。イメージ通りになって嬉しい。
ただ、ミランダ(特に黒?)は結構かたい。薄い本だったからまだ大丈夫だったのかもしれない。厚めの文庫サイズの表紙にはあまり向いてなさそう。


本文用紙は淡クリームキンマリ70K。90Kも選べましたが、厚そうだったのでこちらに。透け感はちょうどいい感じですが、結構ツルツルしているのでラフっぽいざらざら寄りの紙も使ってみたいな。ラフ紙は劣化が早いとか黄ばみやすいと聞くけど実際どうなんでしょ。

フォントは凸版文久明朝(本文13Q、柱10Q)、欧文用はGeorgia。
しかしひとつ気になったのが、文字の濃さ。印刷所のクセなのか印刷機の問題なのかフォントの問題なのか分からないのですが、かなり黒々としています。文字も太っているような印象。次このフォントを使うときはせめてサイズを小さくしようと思いました。どっちにしても13Qは大きかったな。

扉は同時頒布の小品集と揃えたのですが、こっちの方が濃い
濃い。笑

本文の文字については改良の余地ありでしたが、その他はほぼイメージ通りに作ることができて満足。


『小品集』

【仕様】A6/132p
表紙:OKムーンカラー ホワイト 120kg
本文:書籍紙 72.5kg
遊び紙:キュリアスメタル レッドラッカー 84kg(前後)
加工:空押し
印刷:HOPE21様

OKムーンカラーに空押しはずっと憧れていたので実現できて嬉しい。
タイトルを全てインクなしの空押しのみにしましたが、思っていたより視認性◎です。そしてOKムーンカラーはとにかく柔らかくて扱いやすい!とても読みやすいです。
下の紙色が透けることもあるとどこかで聞いたりしましたが、透け感は特に感じなかったです。やっぱり透けさせるにはパチカですね。(次の再録本を出すならパチカ空押ししたいんだよね……でもたっっっかいんですよね……)

デザインは主人公の叙任式のドレスをモチーフにしています。高級感のある白地ドレスに、ゴールドの縁取りとボタン、黒と赤のレースやリボンがあしらわれているものです。ちなみに表紙には黒要素を入れることができなかったのですが、どうしても諦められなくなってしまい、直前になって黒の栞を作るという暴挙に出ました。そちらは本と一緒にノベルティとしてお付けすることにしました。

遊び紙はキュリアスメタルのレッドラッカー。色上質とは違った上品な華やかさがあります。ギラギラしすぎていないので、表紙と合わせてシックに仕上がりました。

空押し部分は表紙の裏から透けて見えるのもかわいい


本文は書籍紙。淡クリームキンマリとそんなに変わらない印象です。
フォントはリュウミンPr6N(12.5Q)。大きめにするなら12.5までがよさそう。今度は12にしてみようかな。でも小さいかな?
リュウミンは言わずもがな読みやすくてよかった。複数カプの詰め合わせ本なので、できるだけニュートラルな印象のフォントにしたいと思いこちらを選びました。大正解。
ノンブルはOptima。ちょこんとした丸いフォルムが程よく可愛いですね。

やっぱりこっちの方が線がすっきりしている…
版面のバランスはかなり好み
背幅はこのくらいあると文庫本!という感じでテンションが上がりますね


HOPE21さんは季節のセットだと安いし締切遅いし納品が早い(本当にびっくりするくらい早い)ので今後もお世話になりそうな予感。おすすめです。


ノベルティ

表面はこんなかんじ

用紙:ディープマットブラック 180kg
印刷:おたクラブ様

前述の、どうしても黒要素を入れたくて急遽作ったもの。
仕上がりサイズが148mm×48mmなので、結構大きくて文庫に挟むにはギリギリ。同人誌のノベルティでもらったことがないのですが、このサイズが主流なのかな。イラストも文章もたくさん載せられるのはいいですね。

ディープマットブラックは手元にサンプルもなかったので届くまでどんな感じになるか不安だったのですが、落ち着いた大人っぽい黒で小品集にはぴったりでした。あと補強用かってくらい厚いです。梱包時に薄い本を守ってくれました。

白版はおまかせ仕様でお願いしました。ご迷惑をおかけしてしまったのですが(その節は申し訳ありませんでした…)とても細かく作ってくださり感謝しかありません……。点描が細かすぎて?白いモヤがかかったような状態にはなっているのですが、それもまたいい雰囲気になりました。

表面の文字はくっきり濃くて綺麗です。フォントはりょう Text PlusN R。味があって好きなんですが普段の本文には少し使いづらい気がしています。今回使えて嬉しかった!


サンクスカード

用紙:ミランダスノーホワイト 170kg
印刷:おたクラブ様

そろそろバレているかと思いますがキラキラした紙が好きです。
ミランダ黒はキラキラの中になんとなく不穏な感じを受けたりもするのですが、スノーホワイトの方は夢のような幻想的なきらめきでとにかく可愛い。意外と柔らかかったです。

こちらは同人誌と一緒にランダム封入したカードなのですが、原稿から逃避しまくったせいで一番最初に出来上がってしまいました。
本ジャンルでは馴染みの深い馬車を推しカプ色で2種類と、季節に合わせて冬っぽいもの(カラーリングは主人公きょうだいイメージ)を1種類。

裏面にはグーグルの感想フォームQRコードを載せました。
今後の同人活動でずっと使いまわそうと思っています。フォームは回答の手間をなるべく省いたシンプルな作りにしたつもりです。恥ずかしいので全部は載せませんが、もちろん自分がもらえたら嬉しい言葉しか選択肢に入れてません。笑
頒布直後から回答いただけて本当に嬉しかったです!自由記述欄も設けたのですが、丁寧なメッセージもいただけたりして何度も読み返しては元気をもらっています……。ツイッターでも何度か言ったのですが本当にありがとうございます。

馬車に合わせて馬蹄


さいごに

まだまだ書きたいお話も使ってみたい紙も加工もたくさんあるので、いろいろ挑戦していきたいなと思っています。
再録本なんかは特にWeb上で読めるお話がほとんどなのですが、それでも本として手にとるとより多くの感覚で「読むこと」を楽しめるというか……。紙の感触やにおい、色味やデザイン。そういったいろんな要素がわくわく感や没入感を高めてくれるので、本が好きです。より魅せるためのラッピング、ひとつまみのスパイス、最後にかけまくるオーバーレイ……みたいな……そんな感覚……。あと紙をめくる行為が好き。

初めて同人誌を作ったレポのようなものはまた別途記事を書く予定なので、そちらも見ていただけたら嬉しいです。
ではでは、最後まで読んでくださりありがとうございました!