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【読書】「コンテナ物語」マルク・レビンソン著 村井章子訳

「なんで地球の裏側からやってくる肉のほうが国産の肉より安いんだ」デフレの恩恵を享受する生活が当たり前になって忘れがちだけど、ふとした際に頭に過ぎるクエスチョン。いつの間にか私たちの着るもの、日常用品、おもちゃに至るまで外国のどこかで作られたものに囲まれて暮らすようになった。

様々な要因があるにせよ何故このような生活が可能になったのかに答えてくれたのが本著「コンテナ物語である」。そう、街で物置になってたり、トラックに連結されて運ばれたり、下手すると野積みで捨てられてたりらする、そこら中で見かけるありきたりなあの「コンテナ」だ。

時は1950年代のアメリカ東海岸で、一人の天才マルコム・マクレーンの革命的ともいえるアイディアによって物語が動き出す。トラック会社を運営するやり手のマクレーンは年々増える渋滞に悩んでいたが、船にトレーラーを丸ごと乗せてしまうことを閃く。思いついたら止まらないこの男は船会社を買収して海運業を始めてしまう。泳ぎ続けないと死んでしまうマグロのごとく、創意工夫やアイディアが浮かんでは実行に移すアンストッパブルな性格なのだ。船のことを全く知らないトラック野郎で門外漢のマクリーンが海運業で成功していく立身出世の物語は読んでいて面白い。

コンテナによって繁栄したポートエリザベス港と対岸で寂れていくニューヨーク港の比較や、コンテナ港としてグローバル経済と結びついたシンガポールやドバイの飛躍、世界の港の栄枯盛衰の歴史を学ぶこともできる。シンガポールはいち早くコンテリゼーションを取り入れる先見の明があってアジアのハブ港となった。しかし、先行者だけが成功するというものでも無いらしく、コンテナ港をつくるために浚渫したにもかかわらず全く船が来なくなり寂れてしまった港もあるようで、これらは自治体の大きな負担となっているようだ。

「コンテナ」による世界を変える革命の物語は今現在も進行中である。中国では国際貿易の貨物は2000年までは香港が全部捌いていたが、2014年には世界のコンテナ扱い量トップ10に7港までが中国のコンテナ港で占められている(ヨーロッパやアメリカはトップ10に入っていない)。このように、コンテナは実働から半世紀以上を経てもなお影響をもたらしているのである。

目次

第一章 最初の航海
第二章 埠頭
第三章 トラック野郎
第四章 システム
第五章 ニューヨーク対ニュージャージー
第六章 労働組合
第七章 規格
第八章 飛躍
第九章 ベトナム
第十章 港湾
第十一章 浮沈
第十二章 巨大化
第十三章 荷主
第十四章 ジャストインタム
第十五章 付加価値

メモ

・マルコム・マクリーン

・TEU

・浚渫

追記 

*2020年コロナの影響によりコンテナ不足問題が顕在化するようになった


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