見出し画像

青年海外協力隊 活動編 #6「PISA学力調査と算数教育の現状」

PISAとは何か

 PISAとはOECD(経済協力開発機構)が3年に1度、義務教育修了段階の子供たちを対象に読解力と数学的・科学的応用力を測るもので、2018年のテストには、約80か国から男女約60万人が参加しました。日本からは全国6100人の高校1年生がテストを受けました。

 このテストについて詳しく知らない方も、国際的な学力調査の順位が上がった、下がったとニュースで大きく取り上げられているのを聞いたことがある方もいるでしょう。

ドミニカ共和国の結果は?

 昨年12月にこのPISA2018の結果が出ました。この国に到着して、すぐにドミニカ共和国は数学的リテラシーの分野において、3回連続で最下位だった(つまりこの10年近く)という話は聞いていたので、配属先での仕事が始まってすぐに報告書を読み始めたのですが、やっぱり結果はかなり厳しいです。

数学的リテラシーの結果について

 具体的に、どう厳しいか、日本の結果と比較しながら説明します。テストの結果は、レベル1~6までに分けられ、上位層のレベル5・6は「複雑な状況を数学的に形式化することができ、それらを用いるための適切な問題解決の道筋を選択・比較・評価することができる」ということが求められます。
 そして、ドミニカ共和国の生徒の中でレベル5以上に達した生徒はなんと、1%!!ちなみに、日本は18%。上位層が日本は約20%居るのに対して、ドミニカ共和国にはわずか1%しかいません。
 では、残り99%の中間層以下はどうなっているのかというと、これも現状は厳しいです。「直接的な支持なしに、どのような状況が数学的に表現されるかを解釈し、認識できる」というレベル2以上の生徒が、日本は89%なのに対し、ドミニカ共和国はたったの9%。15歳の日本人の9割が理解できていることを、この国の1割の子供たちしか理解できていないということです。

大学の授業を見て思うこと

 大学においても、数学の先生が新入生に実施したというテストを見せてもらいましたが、基礎ができていないことがよくわかりました。
 例えば、「3リットルのガソリンで5キロ走るバイクがあります。バイクが500キロ走るのに、何リットルのガソリンが必要ですか?」というような内容の問題に対して、空欄の学生がかなり居ました。

 また、大学の数学の授業でも、学生たちは相似や合同、対称な図形(線対称や点対称)について学んでいましたが、条件や定理を確認しているわけではないので、その理解度がどの程度なのかはよくわかりません。確かに図形なので、何となく見れば合同や相似というのは分かると思いますが、その辺の長さや角の大きさに注目することが大切なのでは?と思いながら授業を見学していました。
(実際に作図をして、切り貼りして分類するという授業の進め方は、学生も楽しそうに授業に取り組んでいてよかったのです。)
 このように、大学の授業だけ見ても、基礎学力に課題があることがよくわかります。

小学校の授業を見て思うこと

 小学校の授業をたくさん見たわけではないですが、今の段階で思うのは、「具体物の操作が足りない+計算の練習が足りない」ということです。
 日本では低学年のうちから、ブロックやおはじき、数え棒を使って学習します。また、紙を切って図形を作ったり、切ったり、貼ったり、重さや長さを実際に測ったり、何か物を使って算数の時間に学習した経験は誰しもあると思います。これは、物を操作しながら数や量の概念を作っているのです。 
 1㎏がどのくらいの重さで、100メートルがどのくらいの長さでというのは、みんな体験しているからわかるのであって、紙と鉛筆だけを使って教えても、子供たちはイメージできません。
 この国の先生たちは、一生懸命分かりやすく説明しようとしているのですが、30分近くほぼ先生が説明しっぱなしだったり、具体物も全体への説明の時に使うだけだったりします。


 やっぱり、子供自身が物を使ってじっくり考える時間であったり、練習問題に繰り返し取り組む時間であったりが45分という限られた授業時間の中に必要だと思うのですが、そこが課題かなと思います。

まとめ

 これだけ下位層の子供たちが多いことを考えると、きっと小学生の算数レベルから課題があると思います。算数の全ての基礎である四則計算はもちろんですが、具体物を効果的に使って、数や量の概念を作っていくことが必要でしょう。
 ここまで課題ばかり書きましたが、学生は一生懸命だし、先生たちも明るく楽しく授業をしようとする様子も見られます。だから、私自身はこの大学で学生にTaller(講座)をするのがとても楽しみです(緊張しますが)。
 一つの単元や45分という1時間をどのように構成したら良いのか、どのような手立てを取れば子供たちが理解できるようになるのか、具体物をどう効果的に使うべきなのかなど、何か将来授業をするときにためになりそうなことを伝えられると良いなと思います。

 まずは、来週月曜日と火曜日に「日本の教育制度」について話します。これから私が話すのは、日本の教育や自分自身の経験をもとにすることが多くなると思うので、ここで私自身の背景を知ってもらえるのは良い機会だと思って、頑張りたいと思います!
 スペイン語がグダグダの中、一番の不安は、学生の質問に答えられるか…彼らは、本当によくしゃべります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?