1万人のフォロワーがいてもいいねをもらっても、自己肯定感が満たされない女の話

私には1万人弱のフォロワーがいるTwitterのアカウントがある。
ある界隈では名前を知らない人の方が少ないくらい、有名なアカウントだ。

近年、"自己肯定感"という言葉が頻繁に使われるようになった。

SNSの流行に伴い、SNSは自己肯定感を満たすためのツールとして取り扱われる。
いいねをもらえると、承認欲求が満たされると言われる。

だが私は、自己肯定感とは、思春期までに形成されるものではないかと思う。

なぜなら私は、思春期に自己肯定感を感じられず、現在SNSで何千のいいねを貰おうと満たされない。

タイトル通りの可哀想な女なのである。

きっと、成長の過程で育まれるべき自己肯定感が欠如したまま、大人になってしまった。

思春期の痣

振り返ると、決して悲惨な思春期ではなかった。

幸いいじめに遭うこともなく、むしろ平均の部類に入る程度の幸せな生活を送ったと思う。
世の中にはもっと暗く、苦しく、悲惨な思春期を送った人がいるだろう。

しかし、私は確かに感じていた。
「自分は脇役の人生だ」と。

小学生までは伸び伸びと育ってきたが、私立女子校の中学校に入学した時に世界は一変した。

そこには"スクールカースト"というものが存在した。

クラスの生徒が、誰が決めた訳ではなく"陰キャ"、"陽キャ"と振り分けられ、"陰キャ"はまるで空気のように扱われる。

別にいじめではない、単に空気なのだ。

その時私は初めて、自分が一重で地味な顔で、平均よりも可愛くないことを知った。
面白くない、運動もできない、絵描きが趣味、ブスの私は所詮"陰キャ"なのだ。

中高生の純粋に悪意をはらんだ鋭利な、たくさんの傷つく言葉を言われた。
言葉でなくても、見下すような空気感がヒリヒリと心を痛めた。
なぜか、そんな言葉や空気ばかりは鮮明に覚えている。

塾で初めて好きな人ができた時も、勇気をだしてメアドを聞いたら、「〇〇ちゃん(友達)のメアド教えて」とメールが来た。
私はやっぱり脇役だと思い知らされ、泣きながら友達のメアドを教えた。

やっと付き合えても体目的で、拒否したら冷たくなって乱暴にされたり、いい思い出は全くない。

そんな人達心無い言葉や扱いは、ずっとずっと心の奥底で痣として残っている。

主役に躍り出た20代

そんな中でもどうにか生きていこうと、私は苦肉の策で、自虐するということを覚えた。
「私は馬鹿で、ドジで、何も出来なくて、こんなことやっちゃって~」と自虐することで、笑いが取れた。

当時はインスタより主流だったTwitterでは、そういうツイートがウケた。
「そういう飾らないところが好き」と言ってくれる人が増えた。

大学生になり、メイクやアイプチを覚えた。
周りの態度が一変し、初対面で「可愛い」と言ってくれる人が増えた。きっと、容姿は"平均よりも少しだけ上"になった。
今度はちゃんと心から愛してくれる彼氏もできた。

それでも、私の心は全く満たされなかった。
アイプチが上手くいかないと泣いて、鏡を見る度にブスな自分を呪った。
彼氏に対しても、なぜ自分が好きなのかわからなくなり、何度も試すような行動を取って困らせ、毎回自分から振ってしまう。

社会人になり、コンプレックスだった目元の整形をした。
周囲にはバレなかったが、さらに可愛いと言われたり、一目惚れされることもあるくらい、容姿が整った。きっと中の上か、上の下くらいの容姿にはなったかもしれない。

安定した大企業務めの彼氏ができた。
優しく、私ができない家事など全てやってくれる。何より本当に私のことを愛してくれている。

なんと、趣味のTwitterのフォロワーは、一万人ほどの規模にまで成長した。

誕生日には、盛大な誕生会が開かれ、たくさんのプレゼントをもらい、SNSのでも数百件の「おめでとう」というコメントが来る。
ファンと言ってくれる人もいるし、オフ会で会えば容姿を褒めてくれる人も多い。

普通の人ならきっと受け取れないようなたくさんの祝いの言葉、気持ち。
特製のケーキやプレゼントの数々。
ずっと思春期では脇役だった私が、今まで味わえなかったような"主役"の扱い。

全部が私の中では空虚に思えてしまう。

"私"じゃなくて、"SNS上の私"が好きなんだって、まるで幸せを感じとることが出来ない。

"整形した私"の容姿が好きなんだろうとしか思えない。

どんなお祝いにも、「どう反応したらいいんだろう?リアクション薄かったかな」としか考えられない。
彼氏には馬鹿みたいに「なんで好きなの?」と何度も何度も聞いてしまう。

そんな時にふと、自己肯定感ってなんだろう?と考えさせられる。

自己肯定感の欠如した可哀想な女は、今も不器用ながら生きている。

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