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小匙の書室91 黒猫ミステリー賞一次通過作

 2021年に創設された『黒猫ミステリー賞』(産業編集センター出版部主催)。
 その第1回目の受賞作はミナヅキトウカの思考実験』(佐月実 著)。こちらは怪異とミステリがうまく組み合わさった面白い作品で、続編を望みたいな……と思っている次第。
 そして今回。第2回目が開催され、先日、その第一次通過作が56篇紹介されました。
 それがこちら⇩

[R]から始まる物語 相生逢

大蛇の雪 司丸らぎ

桂馬は見ていた けやきラブ

薫子さんは食人鬼 月島有記

ストイシズムの礼儀作法 夏門柚宇

デスサイズ変奏曲 黒澤主計

存罪証明 飯島西諺

隠者 長瀬美葉

天方のペルソナ・ノン・グラータ 雪路雨

死んだことしか知らない 風川一夏

エデンの林檎を摘みし者 蒼木ゆう

ふりむかないでください 冴守三冬

汚れなき天使たち 原稔宏

探偵になるまでの二、三の事  渡瀬水葉

ハロウィンミッドナイト 3×4=12

ロマン・シンドローム 野口祐加

不当な成果 小鳥遊蒼

夫を刑事にしてください! 三岡雅晃

告解 森水

アルマー・トイフェル 川屋幹大

ある怪物 川屋幹大

僕のホームズ、紹介します! 吹井賢

胸底のレクイエム 眞木山郷

ネイビーカラード・モダンガール 本庄照

Black Puzzle 小寺無人

Out of the blue 葉月一葉

ホテル・ファントムワールドのスナイパー ――そこに死体はなかった―― 明日乃

軟骨の耳冷ゆる日よ 烏丸健三

特撮専門エキストラ探偵 梶研吾

島詩と百年の女 蒼木ゆう

不知火の殺人 渡橋銀杏

さよなら、カメレオン。 カマチ

シャーロック・ゲーム 田島巧仁

残酷な夜明けの来るまえに 帆摺櫂人

謎解く僕を殺せ れもんサワー

Dr.ニコルの検死FILE 切り裂きジャックの復活 今岡英二

笑う魔人 猫飼よわし

アイス・トラッカー 谷門美昌経

ラプチャーを待ち続けて 上田周平

ひるがえす 後藤健児

クリミナルズ・ジャム 京弾

失せ物探し・一ノ瀬至遠のカノウ性~謎解きアイテムはインスタント付喪神~ 湯野静真

思い出せない未来の記憶 秋山聖斗

ブルー・スモーカーズ・ナイト 大塚

Mission Failureー任務失敗ー 西野伊織

秘めた手紙 七獅

船橋の下にて鬼の哭く ―住之江吉彰の亡霊事件簿― 千崎翔鶴

せめて君だけは思い出さないで 山橋和弥

イカロスの呪い 田井庸介

大谷家のミステリーな生活 小山ゴロ

イーリス、不撓不屈の女神 蒼峰天嶺

廃墟の案内人 先川佑介

Autumn w/ a Stranger  半田一人男

妻が私を殺そうとしている 佐田休意

球団の虚像 工藤才蔵

死神のプレイタイム 雨籠もり

黒猫ミステリー賞サイトより

 ずら〜っと並んでいる作品の中から、直感で気になったものをピックアップし、コメントしていきます(本当は全部にコメントしたいけれど流石に数が多すぎた)。
 ※あくまでも個人の主観です。実際の作品内容と関係ない話をするかもしれません。


◯月島有記さん『薫子さんは食人鬼
 特殊設定ミステリの匂いがぷんぷんしてますね。
 タイトルを見て『人間の顔は食べづらい』(白井智之 著)が浮かびました。
 エグい要素のあるミステリになるのか、はたまた意表を突いて日常の謎を展開するのか。
 なぜ、人を食べるのか。というそもそものホワイないしは設定が気になります。

◯飯島西諺さん『存罪証明
 まずね、タイトルの語呂がいいですよね。存在証明とかかっているのでしょうか。
 “罪”とあるからにはリーガルミステリになるのでしょうか。
 そこに罪が存ることの証明とは果たして
 パッと浮かぶのは未必の故意や緊急避難ですが、存在の意もあるならば幽霊……とか?
 想像が膨らみます。

3×4=12さん『ハロウィンミッドナイト
 こんな著者名は初めて見た。サンシジュウニ、さんと呼べば良いのでしょうか。
 ともあれ、ハロウィンミッドナイトというタイトルからは「血の香りが強い、ホラー/スリラーテイストのミステリなのかな?」という想像が働きます。
 舞台が海外である可能性もありますね。
 子供達が元気に家々をまわっていく……とは考えにくそうです。

森水さん『告解
 社会派ミステリっぽいタイトルだなあ……というのが第一印象でした。こういう、2文字でバシッと決めてくるタイトルは割と好きです。『方舟』(夕木春央 著)や『絶叫』(葉真中顕 著)、『分身』(東野圭吾 著)などなど。
 告解……すなわち犯した罪の告白
 勝手な予測でしかありませんが、靴底を擦り減らす刑事やマスメディアなんかも登場していそう。

梶研吾さん『特撮専門エキストラ探偵
 ミステリにおいて、何か一つでも“専門”や“特徴”を持つ探偵というのは、それによって魅力的に引き立てられることがあります。
渡部(紙鑑定士の事件ファイルシリーズ(歌田年 著))の紙鑑定湯川学(ガリレオシリーズ(東野圭吾 著))の物理学水無月透華(ミナヅキトウカの思考実験(佐月実 著))のオカルトマニア……など。
 エキストラ……『重要な役ではない』が意味するように、あくまでも“致し方なく”探偵業に加担する探偵が脳裏に描かれます。
 特撮専門なので、不可思議な変身ポーズをした遺体とか出てくるのでしょうか。

れもんサワーさん『謎解く僕を殺せ
 謎解く、はすなわち探偵なのだろうか。
 ならば探偵である僕を殺せということなのだろうか。そう考えるといろんな理由が浮かんできます。
 例えば──謎解きによって周囲に少なくない被害を与えるために、これ以上犠牲者を増やさないために殺してほしい、とか。
 探偵の人柄も様々。
 自ら進んで『死』を懇願するのは珍しいです。

今岡英二さん『Dr.ニコルの検死FILE 切り裂きジャックの復活
 これは間違いなく医療ミステリですね。そんでもって、『FILE』とあるからにはシリーズ化も視野に入れているのでしょう。
 検死と聞いて、真っ先に光崎藤次郎(ヒポクラテスシリーズ(中山七里 著))が出てきました。
 こういった作品は、主人公がどこか奇抜な印象が多い気がします。
 ニコルは果たしてどんな人柄なのでしょう。
 切り裂きジャックの復活とあるからには、凄惨な殺人が行われるのでしょうね。ホワイダニットに注目したい。

山橋和弥さん『せめて君だけは思い出さないで
 青春小説を読みすぎて、タイトルに『君』あるいは『僕』とついていたら、どうしてもそれの色合いを見つけようとしてしまうのは悪い癖ですね。
 せめて君だけは。
 『君』が思い出せば、とんでもない苦痛が待ち受けているのだろうか。事件の記憶を失った被害者なのか、過去の誤ちが露呈するのを恐れているのか。
 いくらでも想像してしまいます。

小山ゴロさん『大谷家のミステリーな生活
 ぼくのミステリな日常(若竹七海 著)が脳裏を過りました。
 大谷家が迎えるミステリーな生活とはいかに。
 普通の営みを過ごしたいだけなのに謎の方が向こうからやってくるトホホ系なのか、行く先々で謎に見舞われる探偵の因果をめぐるコメディなのか。
 シリアスなイメージを抱かないので、気持ちを楽にして手に取れそうなタイトルですよね。
 で、最後には大谷家の大きな秘密が明かされる……みたいな。

佐田休意さん『妻が私を殺そうとしている
 ある日、妻の犯罪計画を発見してしまった。
 そういえば、ここ最近の妻の様子はおかしかった。もしや……。
 と勝手にあらすじを推測(ごめんなさい)。
 タイトルを文字通りに受け取るなら、逆倒叙ミステリっぽいですよね。
 犯人は自明。では、被害者はどのような行動を選択するのか。
 一見シリアスのようでいて、案外コメディタッチだったりするのでしょうか。
 「どうなっちゃうの?」と思わせるのは強いです。


 というわけで、気になる作品に簡単なコメントをしていきました。

 ここから二次選考でどれが通過するのか。

 読んでみたい作品が実際にお目にかかれるようになる、というのは、これ以上ないくらいの嬉しさを運んできてくれるでしょう。

 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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