見出し画像

データプロダクト、データ活用アプリケーションを提供した未来に思いを馳せる

はじめに

Sansan技術本部研究開発部の猿田です。2023年の6月から研究開発部で研究員として働いています。研究員といってもリサーチをして論文を書くような研究職ではなく、技術ドリブンで新しいアプリケーションや事業を作っていくようなポジションで働いています。研究開発部所属のプロダクトマネージャーと言ったほうが近いかなと思うので自己紹介ではそう言っています。Sansanに入社して約5ヶ月経過したので(早い・・・)振り返り的な意味も込めて筆を取りました。

この記事の3行まとめ
・社内データ活用とSansan Labsとグローバルビジネスに挑戦中
・類似企業事例提供アプリを社内リリース、GPT活用アプリケーションをLabsリリース予定
・データプロダクト、データ活用アプリケーションの先にデータプラットフォームを創出したい


これまでのキャリア

キャリアについては以前書いた私の以前のnoteに詳しく書いてあるので詳しく知りたい方は参考にしてください。ここでは簡単に述べます。

2007- キヤノン本社R&D部門 コンピュータビジョン/機械学習エンジニア
2018- Preferred Networks AI開発プロジェクト プロジェクトマネージャー(エンジニアリングマネージャー兼務)
2021- CADDi 図面活用SaaS (テクニカル)プロダクトマネージャー→技術組織マネジメント
2023- Sansan 研究開発部 研究員

AIスタートアップのPMが製造業の変革を志した話 〜 PFN to CADDi 〜(一部追加)

やりたいことはキャリアの中であまり変わっていなくて、技術(シーズ)とニーズが合わさったところで事業価値を創出したいと思っています。その中で役割だったり環境を変化させていっています。またそういった役割を選べるようになるためには一定程度の市場価値は必要だとは考えています。

下記の図は技術シーズとニーズ領域に対する企業のR&D領域を示しています。これは私がキヤノンに新卒で入社したときに研究所の所長が書いていたものです。企業のR&D領域は技術的にもう少しで達成できそうでニーズがある狭い領域を実施しなければならないという話をされていました(10年以上前なのでだいぶ意訳されてるかも)。ただ、近年では特に技術的な進歩が早いので、ニーズが顕在化していないニーズの境界を超えるところもカバー範囲かとは思います。

企業のR&D領域を示した図

どういうチャレンジがしたいのか?

現在の技術シーズで代表的なものはやはりLLM(Large Language Model)やStable diffusionによる画像生成などのAI技術のブレークスルーや、それらを用いたChatGPTのような新しいアプリケーションであると思われます。さらに各社自社が持つデータをデータプロダクトとして昇華させることに取り組んでいると思います。
その中で私がチャレンジしたいのは「データプラットフォームによる価値創出のFlywheel(弾み車)を創出すること」です。もちろんAI技術活用による新しいサービスやプロダクトを作ることにも興味があり、それも行っているのですが、未来に向けてもっと大きな仕組みを創出したいと考えています。イメージは下記になります。

データプラットフォームによる価値創出のFlywheel

詳細を説明する前にデータプロダクトとデータプラットフォームを定義しておきます。データプロダクトは以下の資料にとてもよくまとまっており、その中でも触れられているようにデータを使って最終的な目標を達成することを第一の目的とする製品を定義されています。(この資料を作った吉田さんのPodcastにゲスト出演させていただきました)

弊社が扱うSansanというプロダクトも名刺管理サービスから営業DXサービスへアップデートをしているところで、名刺だけではなく、顧客との接点情報や多くの企業情報をデータとして一元管理して営業DXを達成するためのプロダクトになっています。

Sansanの特徴(会社紹介資料から抜粋)

次に、データプラットフォームについて説明します。プラットフォームの定義は文脈によって異なってくるかと思いますが、ChatGPTに聞くと、基本的には「上に何かを構築・展開するための土台や基盤」としての役割を持つと教えてくれます。もちろんその要素も重要になると思いますが、ここでは下記のように定義します。

  • 複数のユーザで共通に利用され、プラットフォームが提供する機能が第三者によって拡張可能なもの

  • ユーザによってプラットフォームに価値が追加され、またその価値が他のユーザが利用可能になっていること

では、この定義に基づいてデータプラットフォームを定義します。

  • 複数のユーザで共通に利用され、プラットフォームが提供するデータやデータアプリケーションが第三者によって拡張可能なもの

  • ユーザによってプラットフォームに価値(データ)が追加され、またその価値(データやデータアプリケーション)が他のユーザが利用可能になっていること

  • ただし、個別のデータにおける利用ポリシーやセキュリティ要件を満たしていること

基本的にはプラットフォーム上にあるデータをユーザが自由に使うことができ、さらにはユーザから新しい価値を生み出すデータを提供可能である、データを使った価値の循環が回るような仕組みを作り出したいと考えています。もちろん、個別のデータが安全に活用されないといけないため利用ポリシーやセキュリティ要件が厳格に守られている必要があると思います。現在企業の持つデータを整備してそれらからデータを使ったアプリケーションをユーザに提供し価値創出している例は多くあると思うのですが、価値が循環している、もっと言えばFlywheel(弾み車)が回っているような例はあまりないかなと思っています。事業領域で見ても、toC領域においてはユーザの購買履歴に応じて他の多くのユーザの情報を使ってレコメンドする例はあると思うのですが、toB領域ではあまり例はないかなと思っています。

Sansanで挑戦していること

では、現在のSansanにおいて私や私の周りでチャレンジしていることについて説明します。先ほどのデータプラットフォームの図にチャレンジをマッピングした図が以下の図です。
ちなみにSansanが現在データプラットフォームを標榜しているわけではないです。私なりにSansanのビジョンである「ビジネスインフラになる」を解釈していると思っていただければと思います。

私のSansanにおけるチャレンジ

ここでは大きく分けて4つ記載しています。特に私が今力を入れてるテーマを太字にしています。いきなりFlywheelが回る訳ではなく、あらゆる角度で施策を実行する必要があると思いますし、その1つ1つの施策がちゃんとユーザに価値提供できていることが必要です。一方でSansanはある程度プロダクトが定着しておりそこのフェーズをスキップできることは自分にとってはとても魅力的でした。

  • 社内へのデータを用いた価値創出)社内のデータ活用、営業DX

  • 社外へのデータを用いた価値創出)Sansan Labs、新機能 on 既存プロダクト

  • 社外からの新しいデータ取得)グローバルビジネス、新規プロダクト

  • 社内)全社横断データ基盤構築(めちゃくちゃ利用しています)

次の章からは私が今力を入れているテーマのうち社内のデータ活用、Sansan Labsについてそれぞれ説明します(グローバルビジネスに関しては詳しく聞きたい方はカジュアル面談しましょう)いずれも下記に示すように多くのプロダクトで溜まったデータを名寄せ技術によってデータ連携されており多くの価値提供がやりやすい状況になっています。

パイプラインで見るデータプロダクト

また、データ構造化についても多くのチャレンジがあるので興味があれば聞いてください。名刺、請求書、契約書、メール、ニュースなど企業が作成・発信するありとあらゆるドキュメントを構造化、意味理解するチャレンジがあります。

Sansan Labs

Sansan Labsは現在Sansanユーザーであればどなたでも使うことができる実験的な機能を提供するサービスです。すべてのアプリケーションを無料で使うことができ、Sansanに蓄積したビジネスの接点にまつわるデータが様々な切り口で分析・可視化される実験的な機能をいち早く利用できます。プロダクトだとなかなか対応することが難しい課題やアプリケーションにも、研究開発メンバーが開発・リリース・運用しているため、直接ユーザからフィードバックを得ながら検証を進めることができます。下図は営業の各フロー(営業戦略・ターゲット選定、商談準備、営業・マーケティング活動、アップセル・アカウント深耕、タレントマネジメント・人脈共有)におけるSansan Labsのアプリケーションをマッピングしたものになります。

Sansan Labsアプリケーションとその活用シーン

毎月数個のアプリケーションをリリースしており、100個を目標にしています。Sansan Labsではプロダクトだと解決しにくいようなロングテールの課題を解くようなアプリケーションだったり、ボトムアップに仮説検証を行うようなアプリケーションをリリースすることも可能です。図にあるようにGPTを活用したアプリケーションもあります。現在はAI企業検索、5分で読める業界動向、5分で読める有価証券報告書、セミナー集約メールメーカーをリリースしており、近日中にもGPT活用した別アプリケーションがリリースされる予定です(11月1日に議事録メーカーがリリースされました)

社内データ活用:類似企業事例提供アプリケーション

次に、直近私が力をいれている社内データ活用のアプリケーションである類似企業事例提供アプリケーションについて説明します。また、この章のなかで価値が循環する予感を感じたことがありそれも説明します。

類似企業事例提供アプリケーション

類似企業事例提供アプリケーションは上図にあるように類似企業検索と顧客事例をつなぐアプリケーションになっています。営業やインサイドセールス、カスタマーサクセスのメンバがターゲット企業を入力することで類似企業を検索し、その類似企業群のなかで、弊社が提供するプロダクトを契約している会社やプロダクトの導入効果がまとまっているWebページなどを見つけることができます。例えば、これをインサイドセールスのメンバーが架電の際に活用することで、いわゆる"4つの不"のうちの"不信"をクリアすることが可能になります。また、営業メンバーが商談資料内でこれらの顧客事例を活用することで”不要”、”不適”を解消することが可能になります。("4つの不"についてはDJ141さんのnoteがよくまとまっています)

この取り組みはマルチプロダクト戦略や既存のプロダクトのアップセルや更なるカスタマーサクセスを狙っている弊社にとっては必須なものになっています。実は最初は営業やインサイドセールスへのヒアリングの中で営業メール生成や過去の顧客とのやり取りの分析(要約)をやろうとしていました。(GPT活用やりたいという思いもあり失敗し、途中でピボットをしました)

データ価値の循環

このアプリケーションは元々1プロダクトのインサイドセールス向けにリリースしていました。それが同プロダクトの営業やカスタマーサクセス、別プロダクトへと勝手に広まって行きました(社員アカウントがあれば誰でも使えるため)。また嬉しいことにカスタマーサクセスの事例リストを作成する動きが加速化され、それらの事例も今はアプリで参照することができるようになっています。この循環はごくごく小さな1歩だとは思いますが、データプロダクト、データ活用アプリケーション、それらの価値を更に向上するような人や組織の動きが同時多発的かつ相互作用するようになればと思っています。

データ価値の循環

今後の発展の方向性

アプリケーションの今後の発展の方向性としては以下の4つを考えています

  • 類似企業事例提供アプリの社外提供(Sansan Labs or Sansan)

  • 類似企業検索の改良(より細かい、柔軟な検索)

  • 過去の顧客とのコンタクト(商談や電話やメールなど)の分析・活用

  • 営業活動のなかでData Platformにデータが貯まる仕組みの創出

類似企業事例提供アプリは社内の多くのメンバーに使ってもらっていますが、これを社外に提供するための実現方法を検討しています。社内の場合にはある程度データソースを自由に使えるのでデータ理解をしてしまえばある程度簡単にアプリを提供することができました。社外の場合には場合によってはデータを取得する仕組みも必要になります。

類似企業検索の改良も検討しています。自然言語で類似企業を検索したい、「物流業で倉庫を国内に持っている企業」「食品卸業を国内でおこなっている企業」など条件を付与した業種検索など色々なニーズがあります。また、AI技術やデータを使ってユーザが気づいていない類似企業を提示するようなことも考えられます。

過去においては惜しくも契約に至らなかった、様々な理由で解約になってしまった顧客もいます。また、長い時間をかけて契約に至る顧客もいます。それらがどういった理由だったかは現在の営業活動にとっては重要な情報ですが、これらのノウハウは大体属人化しています。また、そのノウハウは大量にあるコンタクト情報(顧客との電話、メール、ミーティングなどのやりとりが保存できるSansan機能)のなかに埋もれています。昨今のAI技術によりこれらにアクセスできるようになったので進められればと思っています。

最後に営業活動のなかでData Platformにデータが貯まる仕組みの創出です。日頃営業のメンバーはとても忙しく、とても高い目標を追っています。Sansanは営業DXすることが責務であるのでデータ活用のためのデータ取得・整備することに対して協力的ですが、その負荷を本業務とは別に課すことは難しいです。そのため日頃の営業活動の中でData Platformにデータが貯まる仕組みがあるといいと考えています。例えば、社内のsalesforceから顧客データを加工して営業メンバーに提供した場合に、顧客データが間違っていたり、更新が反映されていないケースがあります。そういった場合にデータ更新依頼はslackなどで実施されていますが、非常に手間がかかっています。こういったことも改善できればと考えています。

Tips) 過去のデータ活用について

どの組織においても過去のノウハウを現在の取り組みに活かすというのは非常に難しいことだなと改めて思いました。前職では製造業における図面活用SaaSを展開していましたが、過去の図面群を活かせていないケースが多く、同様の課題でした。特に、人の入れ替わりや経験の浅い人の割合が相対的に高い営業のインサイドセールスではなかなかナレッジが溜まりにくく活用が進んでいないことが多いのではないかなと思います。それらの課題をデータやそれらを使ったアプリケーションやAI活用により解決していければと思っています。

Tips) 類似検索 x XXX

類似検索はパッと思いつきやすい機能であるし、ユーザからもよく言われる機能だと思います。ただ類似検索でユーザに価値を提供することは思った以上に難しいと考えています。ユーザによって類似の定義が違う、曖昧であることが多いことと類似検索だけをしたいケースは実はあまりないからです。ただし、類似(企業)検索 x 顧客事例にすると価値になりやすいかなと思います。これにより類似企業や同業種の競合へどれだけ導入できているかが明確になり営業活動で使いやすくなります。また前職でも類似図面検索 x 図面の発注実績で(より大きな)価値になっていたかなと思います。また、技術的に見ても類似検索の曖昧性を顧客事例でフィルタリングすることでよりユーザに価値のある類似検索リストにすることもできていると思います。類似検索 x XXXはいいかもという仮説を持っています。

最後に

Sansanに入社して約5ヶ月が経ち、自分のキャリアなどを振り返り、長々と近況について書いてきました。データプロダクト、データ活用アプリケーションに携わりながら短期的に事業価値を創出しながら、中長期的には新しいグローバルビジネスやデータプラットフォームの創出に携わっていきたいと考えています。
そんなSansanでは多くの仲間を募集しています。最近中途採用のページが刷新されました。

研究開発部でもJDを少し見直しして再アップロードしています。こちらもし興味があればご応募いただくか私のX(旧Twitter)にDMいただければカジュアル面談など対応いたします。note読んで話してみたい!っていう人ももしいればご連絡ください。

研究開発部門 データエンジニア [全社横断データ分析基盤]
研究開発部門 アナリティクスエンジニア[全社横断データ分析基盤]
R&D MLOps/DevOpsエンジニア
機械学習エンジニア
機械学習エンジニア[自然言語処理分野]
研究開発部門 データプロダクトマネジャー[ 全社横断データ基盤 Sansan Labs]
研究員[Sansan Labs](Webアプリケーションエンジニアに変更予定)

研究開発部採用ポジションから抜粋

宣伝

最近多くの登壇や発信の機会をいただきましたのでまとめて貼っておきます。興味あれば見ていただければ&聞いていただければと思います。

11/10(金)Tech Showcase#2では多くの研究開発部メンバーの取り組みについて聞くことができます。私は「営業DXのためのアプリケーション提供で見えてきたデータ活用、データプロダクトマネジメント」と題しまして直近私が携わったSansan Labsアプリケーションや社内データ活用アプリケーションについて技術的なところも含め、お話できればと思っています。

11/5(日)も弊社でコンピュータビジョン勉強会 ICCV2023読み会を主催いたします。弊社研究開発部メンバー2人も登壇する予定です。私は会社説明をさせていただければと思っています。ちなみに、社内のCV勉強会も毎週開催しています。私は最近「Borrowing Knowledge From Pre-trained Language Model: A New Data-efficient Visual Learning Paradigm」を読みました。事前に学習された言語モデルから、次に学習するVision Modelに知識を転移させるための新しい学習方法を提案している論文です。
当日懇親会などでお話できれば嬉しいです。

以下は登壇資料や出演したPodcast


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?