やさぐれ日記 #457 焚火
わけもなく、無性に泣きたくなる時がある。
いやもう、泣いている。
暖房が入らなくなったワンルームのアパートの、ホットカーペットの真ん中で。
わけもなく涙が出る、なんて言葉にすれば、やばい状態の人だ。
だけど悲しい。
世の中のことを考えても悲しい。
仕事のことを考えても悲しい。
お金のことを考えても悲しい。
恋のことを考えても悲しい。
例の『イケメン』に会ってから、どうも自分のやること成すこと全てが、生産性のないもののように思えて仕方がなくなってしまった。
むしろ生活というのは生産性のないことばかりで、そんな瞬間を愛おしめる自分が、好きだと思かけていたのに。
『イケメン』に言ってやりたい。教えてやりたい。
あなたのその真っ当な生き方の眩しさで、目が眩んで進めない人間も居るのだということを。
だけど、そんなことを知っても『イケメン』は、自分の人生は自分の人生で、他人の人生は他人の人生だと言うだろう。
真っ当だ。
眩しがっているのは私の勝手であって、彼のせいではない。
眩しいのは才能と努力であって、僻むべきものでなく、讃えるべきものだ。
それでも眩しい。
私の目が眩むのは私に原因があるけれど、私の意図ではない。
だから、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
目が眩むのは、私もどこかで輝きたいと願っているから、なのだろう、たぶん。
私も輝きたいと願ってもいいものだろうか。
例えそれが、誰かの目を眩ませることになったとしても、輝きたいと願っていいものだろうか。
贅沢を言えるのならば、目の眩まない、ずっと見ていたくなるような、焚火のような灯りになりたい。
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