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SRIが開発した新しい溶接ヘルメットの技術は、溶接作業中に鮮明で高精細な3Dビューをリアルタイムで提供します

SRIはこの技術のライセンスを川田テクノロジーズ株式会社に供与、このヘルメットを世界中に向けて商用化へ

SRIの研究者たちは、溶接用の工具から発生する煙や火花、閃光の向こう側を効果的に見ることができる次世代溶接ヘルメットを開発しました。この新しいヘルメットは、作業環境を正確に視覚化することを可能にし、溶接技術者の作業性と安全性、そしてパフォーマンスを向上させます。

日本を拠点とするKTI川田グループとのコラボレーションは2017年に始まりました。このコラボレーションの集大成である新しいヘルメットは、拡張ダイナミックレンジを用いた溶接可視化技術(XDR: Xtreme Dynamic Range)という、SRIが開発した映像処理プラットフォームを採用しています。この技術は、ヘルメットに搭載された複数のカメラからの映像をシームレスに融合させて一つの映像に合成し、着用者に見えるディスプレイに表示します。このカメラは、溶接作業時の明るい部分と暗い部分を同時に映し出すことができ、コントラストの高いステレオビューの映像として融合させます。ここで重要なのは、映像の融合が、作業員にとって意識できるようなズレ(遅延)なしで表示されることです。

正確な奥行きの把握と詳細の部分を失うことなく、かつ、実質的にリアルタイムで作業空間を3Dで動的に見ることができるという機能が、今回の開発で得られた最終成果です。

SRIのCenter for Vision Technologies(ビジョンテクノロジーセンター)のシニアテクニカルディレクターであるMichael Piacentinoは、次のように述べています。「川田テクノロジーズと共同で開発したこのXDR溶接ヘルメットは、溶接の現場で重要な視覚的詳細を動的に捉え、溶接作業者に遅延なしで表示するという、この種の製品としては初めてとなるものです。このヘルメットを使用すれば、溶接作業員は建物や橋などの溶接をより精密に、かつ容易にできるようになることから、建造物の構造的一貫性と公共の安全がより一層高まることにつながります。」

この新しい溶接ヘルメットは、エクストリーム・ダイナミック・レンジ
(XDR: Xtreme Dynamic Range)溶接可視化技術を利用

溶接技術の習得をより迅速に

このヘルメットを導入すれば、溶接作業における数多くの未解決課題に対応できるとともに、現行のアプリケーションの強化にもつながり、新しいアプリケーションを開拓することも可能になります。

こうした未解決課題で最も深刻なものは、世界的に深刻化している溶接作業員の人材不足と、その専門技術の不足です。溶接は高度な専門技術を必要とする職人の仕事であるため、作業員がそのスキルを身につけるためには長年の経験を必要とします。しかし、従来のものとは異なるこの次世代溶接ヘルメットを用いると、着用者が自らの作業内容をより効率的に確認できることから、訓練の効率が上がり、より早く技術を身に着けることができるのです。

近年、研究者は従来の溶接ヘルメットにカメラと高度な画像修正ソフトウェアを装備することに注目しています。しかし、一般的にHDRレベルの映像を提供する際の大きな課題は、許容できない程度のレイテンシー(データ転送にかかる遅延時間)にあります。結果として、実際の動きと表示される映像の間に遅れが生じてしまいます。

Piacentinoと研究者たちはこのレイテンシーの課題に取り組むべく、ヘルメットに4台(左右の目の前に各2台)のカメラを設置しました。そしてグラフィック処理のハードウェアとソフトウェアを使い、複数枚の映像をステレオペアに融合し、3Dディスプレイに50ミリ秒未満のレイテンシーで表示させます。つまり人間の脳の視覚処理システムが動きと動きの認識との間で、「動きが断絶している」と認識できる間隔の閾値で、自然なステレオビジョンを得ることができます。加えてこのヘルメットの商用化を考慮する上で重要なのは、低コストかつ信頼性の高い汎用画像センサーを使用しているということです。

「溶接をしているときは、溶接を両目で見ている感覚がなければなりません。同時に、精度の高いシステムである必要があります。溶接マスクを装着した状態で自分がどこを見ているのかを空間と時間という観点から認識できることで、画像上で溶接チップをどこに置けばよいのかが、1インチの何分の一という単位でわかるのです。」とPiacentinoは述べています。

人間と機械の共同作業へつながる恩恵

XDR溶接ヘルメットの中核をなす技術は、人間の新人溶接作業員の訓練に必要な時間を短縮するだけでなく、工場の組立ラインなどで活躍している大型ロボット溶接工の性能を向上させることにも活用できます。

溶接部はすぐに冷えて固まるため、監視システムを使って精密ではない溶接箇所を特定すれば、人間が行うか機械が自動で行うかを問わず品質管理を改善し、再加工にかかるコストと時間も削減できます。

「問題が見つかれば、品質の劣る溶接が固まる前にすぐに戻って修正することができ、その後の再加工を減らせます。XDR溶接ヘルメットの技術によって、人間の検査担当者や自動化されたコンピュータービジョンベースのシステムが、溶接を行っている最中にその溶接の正確性を評価することができるため、問題をより迅速に特定できるのです。」とPiacentinoは述べています。

Piacentinoは、ユーザーのディスプレイに追加情報を組み込むことも想定しています。「溶接の業界において、XDR溶接ヘルメットは長い間求められてきたソリューションです。私たちはこの最先端技術を支えていることを誇りに思いますし、川田テクノロジーズとのコラボレーションを通じて、世界の溶接業界にインパクトを与えられることを楽しみにしています。」とPiacentinoは述べています。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社