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組織風土改革日報№.11_描き出した組織管理者達

①前回のあらすじ

2021年4月から自律分散型組織の企画運営リーダーとしてアサインされた私(キタ)
自律分散型組織って何ぞや。
組織風土改革として、どの様に実現するか。
考え、行動していくうちに、これまで消極的に見えていた管理職メンバーに変化が見え始める。

②遅々として然り

2021年9月。
私が自律分散型組織の事務局としてアサインされ、異動してからもうすぐ半期が過ぎようとしていた。

実にあくせくと、新たなチャレンジを繰り返してきたものだが、泥臭くも、欠かさず定例的に行っていた事がある。
それは自律分散型組織導入に向けて、1回/週の組織管理者との雑談/相談、いわゆる雑相会だ。

電子部品業界の製造企業は、概ね多機能型であり自己完結式だ。
(もちろん完全ではないが。)

例えば製造部というモノづくりに近い現場でも、製造課はもちろん、要素技術から改善をアプローチする組織や、設備保全、装置開発、品質管理、生産量管理、生産ラインの設計改善、DX推進などなど。

実に多くの役割を備え、企業内で事業運営が、一定完結可能となるよう、構造化されている。

つまり、私の所属する製造部だけでも、概ね10~20の課を備えている。その全ての課の組織管理者と、地道に雑相を続けていた。

これがまた。。。私にとって苦痛の時間だった。

何が苦痛だったか。
理由は2つ。

●管理者達が、この新しい組織論を理解する時間が、とにかく長い
●正解のない組織開発というテーマにおいて、正解を求められる

これをお読みの組織管理者の方で、管下メンバーが担当される組織開発/風土改革のフォロワーは、これらを是非知っておいてほしい。


③咀嚼する時間を共に味わう

まず”この新しい組織論を理解する時間が、とにかく長い”という点で、私が経験した代表的な事例をお伝えしたい。

雑相会の一幕で、私が自律分散型組織を語るに、余談として、ある会社のCEOとの会話を紹介した時の事である。

「自律分散型、もっというとティール組織は、まだまだ実験的な部分はあるのでしょうが、私が最も最先端だと感じた組織は、完全に従業員の個人目標が、企業目標になっている組織です。」

「その企業さんでは、入社半年ほどで、自主経営可能となるだけの知識を、従業員へインストールしちゃう。その上で、全員が経営者として活動する。あくまでお互いの人的リソースを補完し合う為、組織体として成り立たせ、どちらかというと後付けで会社という括りがあるそうです。」

さらに語る

「その企業では社長という存在自体が曖昧だそうです。元々はそのCEOの方が社長だったそうですが、やーめた。といって社長を交代したり、その後1年毎に立候補制で社長を代えたりするそうです。凄い世界観ですよね。私の知る限り、今最も進化している企業はこんな状況らしいです。面白いですよね。」


繰り返すが、余談として。
最先端ってどんなの?と聞かれたから、この話をしたわけだが、、、これがまた大火事になる。

『そんな会社あるわけない』

いや、あるんだって。

『社長がそんなに軽い立場で、どうやって運営しているんだ』

え、今言ったけど。。。全員経営者なんだって。

『けしからん!』

おっと、どうした?何を言ってる?

何やらおかしな反応もいくつか。だが、中には対話可能な反応もある。

『会社は利益追求を目指して然るべきじゃないか?』
うん、そうなんだよね。そこ説明するね。

「はい。私はその会社のCEOと話をしましたが、前述の通り、当初は現CEOが社長として君臨なさっていて、トップダウンで運営していたそうです。ですが、もっと従業員のウェルビーイングを実現したい。という想いから、その様に変容したそうです。細かい背景は知りません。ですが、つまるところ色々あって、利益よりも同志として集まったメンバーの社会貢献意識そのものを尊重するという理念がある様に思います。結果的に収益性は継続的に上がっているとの事です。これはCEOも最初は驚いたそうですね。」

『運営成り立つわけがない。そんな会社まともじゃない』

もう!運営成り立ってるし、稼いでるし、従業員が楽しく働いてるんだって!というか俺に不満をぶつけるんじゃない!
と思いつつフォローを。

「確かに変化の過渡期は、かなり人の出入りがあったそうです。これまでの社風が合ってた人にとっては、新しい社風は耐えかねるというのも、反応としてはあり得ますよね。」

『やっぱりそうだろ。自律分散型組織で離職率は伸びるってことだろ。』

違いますって。変化へのリアクタンスだってば。おかしな解釈やめぃ。

とまぁ、こういった余談だけで30~60分大盛り上がりの議論が成立してしまうわけだ。

何事も咀嚼には時間がかかる。特に組織管理者としての経験的理解と、こういった新しい情報が、かけ離れていれば、その時間はさらに膨れる。
だけれど、それは知らないなら黙ってろ、という話でもない。
受け取れない=”今”受け取れない であって、一生受け取れないわけではないという事を、我々は信じなければならない。

その時間を共に味わってこそ、その先にイメージの共有があるのだろう。

不満をぶちまけ、どんなに抵抗を示したところで、
時代は勝手に流れているのだから。


④正解を求めがちなメンバーを引き戻す

”正解のない組織開発というテーマにおいて、正解を求められる”という点についても触れておこう。

簡単に言うと、従来型の組織管理者は、
『キタがリーダーなんだから、目標決めて、KPI設定して、皆を指導せよ、スケジュールを管理せよ、マイルストーン決めて報告せよ』
なーんていう指示をしたがるのだ。

その時は毎回これをお伝えする。

自律分散型組織の概念は
『組織の目標 と 自分の目標を統合し、実現に向けてメンバーと協力して自ら進んでいける様な、独自の工夫や仕掛けを、自ら生み出す組織』

だから、組織管理者が目指す姿と、皆のありたい姿が原動力なんだって。
キタ一人で決めない方がいいのよ。今まで組織開発は組織管理者のタスクになっていて、それであなた達苦しんできたでしょ?

とやんわりお伝えし、毎回本線に引き戻す。
私の役割はこの組織概念を浸透し、各組織や組織間連携での取り組みをバックアップする事であると。
(つまり、この活動の主体は、あくまで私ではなく貴方なんですよ。)

もちろん私にリーダーシップはある。
だが統率/引率ではない。共感なのである。
ロバート・グリーンリーフのサーバント・リーダーシップ。まさにそのイメージである。

サーバントとは召使いという和訳だが、これは”人”に対して召使い的に何でも言う事を聴き、ペコペコと遜(へりくだ)る事ではない。

達成したい目標に対してサーバントであり、関係するメンバーを勇気づけ、目標を共に目指す。というリーダーシップスタイルである。

自律分散型組織の導入および達成に向けて、このスタイルを発揮する事が、重要だという点。

そして、このスタイルを発揮し続ける為には、やはり組織概念が決まっていてこそなのである。

これを強調しておきたい。


⑤ついに描き出した組織管理者達

こういったやり取りを重ねていくうちに、一人の組織管理者がアクションを起こす。

『こういうことなのかなぁ~』と言いながら、イメージ図を描き、組織管理者間に共有し始めたのである。

はいーーーそのアクション待ってましたーーー!!

これが潮の変わり目となった。

これまで発散と収束を繰り返していた管理者が、このイメージ図を中心に、自分達がどうやって自律分散型組織に成るかを、具体化し始めたのである。

『これがあると分かりやすい!ここに落としていこう!』

『ティーチングが必要なメンバーは、無理に自律させるのは無理だよなぁ。』

『教育なり啓蒙啓発って事務局がやってくれるの?』

・・・

ジーーーーン。。。

ここまで半年掛ったが、漸く全員がポジティブに語りだしたのである。
もちろん未だネガティブな意見はあったが、実現可能性を見据えた上だった。
自律分散型組織の存在そのもの、あるいは実現可能性自体への疑いを感じさせる発言は、そこにはもう無かった。

我慢して続けてきてよかった( ノД`)
私は身震いをした。
もちろん嬉しくて、というのもあるが、どちらかというと武者震いだった。

実は既に決めていた。
もし管理者が自行自走し始めた場合、私の活動は、より具体的な土台作りになるだろう。

いよいよ対話から活動へと、移行する時が来たのである。

来週からこの雑相会のファシリテートを、私の上司である林さんに預け、私自身の活動に関して、新たにtoDoとプランを引き直した。

丁度10月となり、大いに学び苦しんだ半期が、それとない顔をして私の横をツルッと通り抜けていった。


日報№.12へ続く

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