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「仕事と介護の両立支援、最初にやるべきことは?」

社会保険労務士の山地です。

しばらく育児と仕事の両立支援のお話が続きました。
従業員満足度を上げて気持ちよく働いてもらい、生産性を上げて業績向上につなげるのは育児との両立支援だけではありません。介護も同じです。

親がいる人ならおおよそすべての人が定年退職するまでに、親の介護の必要性に迫られる可能性が高いでしょう。一般的には40代後半以降の人たちです。この年代にもなれば管理職であったり、社内の中核人材として活躍していることが多いでしょう。

育児と介護の決定的な違いは、介護には選択の余地がないことです。

子どもを産むか産まないかは自分で選択できますが、介護はそうはいきません。自分の意思とは裏腹にある日突然降りかかってくるものです。

もうひとつの違いは、育児と違っていつ終わるのかをはっきり予測するのが一般的には困難なことです。子どもの成長は多少の個人差はあってもそう大きくは異ならないでしょう。

介護は持病の有無やそれまでの生活歴(習慣)、どんなきっかけ(病気やケガ)か、介護ができる、または協力してもらえるマンパワーの有無、利用できる介護保険サービスの限度額やその他の福祉サービスの利用可否など、個人差がとても大きいものです。

育児と並んで離職理由になることの多い介護と仕事の両立支援について、今回も厚生労働省が提示している

「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」

1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
2.制度設計・見直し
3.介護に直面する前の従業員への支援
4.介護に直面した従業員への支援
5.働き方改革

この5つの取り組みを全5回に分けて、ご説明いたします。


今日は「1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握」です。

仕事と介護の両立を支援しようとするとき、最初にやらなければいけないのがこの実態把握です。潜在的に介護している人がどのくらいいるのか、いないのか?を把握する必要があります。

育児の場合は一般的に妊娠した時点で女性労働者なら職場に報告します。妊娠の経過や産前産後休業を経て育児休業取得から職場復帰までの流れがおおよそつかめます。

これに対して介護の場合は、自ら親を介護することになったことを積極的に報告する人はあまり聞きません。もしかしたらいるかもしれませんが、妊娠のそれと比べると一般的ではありません。

特に男性の場合は職場や上司に言い出しにくいと感じている人が多いように感じます。育児も介護もかつては女の仕事とされていました。

しかし、共働きが一般的になった現代では多くの女性は仕事に就いており、親の介護が必要になったからといって、女性(妻、娘、長男の嫁など)を必ずしもあてにはできないのです。

職場に迷惑をかけられないとか、介護のために休業したら評価が下がると恐れて言い出せずにいる人もいます。誰にも相談できずに困っているかもしれません。そんな人が思い余ってある日突然退職届を提出してくることがないように対策する必要があります。

実態把握の方法としては無記名のアンケートを取るのが比較的容易でしょう。

アンケート用紙は
「実態把握調査票」で検索
すると、Word形式でダウンロードできます。

回答時間は約10分。仕事と介護の両立に関する意識調査が目的であり、評価とは一切関係がないことを説明すれば回答してもらえるでしょう。

介護の経験の有無や経験のない人には今後、その可能性があるか、介護に関する不安やどのような働き方をしたいかなどに加えて、介護保険についてどのくらい知っているのか、職場環境も含め、全部で22の質問があります。

貴重な戦力が流出することは大きな損失です。介護することになっても仕事と両立できるようにしっかり支援していただきたいと思います。o(^-^)o


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