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「短時間正社員制度の導入(3)~制度設計に必要な3要素」

社会保険労務士の山地です。

前回は短時間正社員制度を導入するための手順として、短時間正社員に対する役割(職務内容等)の検討についてご説明しました。

今回は、(3)短時間正社員制度を設計するうえでの検討事項として、適用事由、適用期間、労働時間についてご説明します。

フルタイム正社員と同じレベルの役割を担う短時間正社員が、能力を発揮して活躍してもらえるように、短時間正社員制度を適用するための

事由、期間、労働時間の3つは重要です。

ポイントは

1.個人の状況により、適用期間を柔軟に定める

2.早朝、夜間、土日なども勤務可能かを確認し、始業・終業時刻を定める、です

1.適用事由を仮に育児・介護・病気の治療とすると、各事由により適用期間は柔軟に定めるのがよいでしょう。育児の場合は子どもの成長にあわせることを考えると、おおよその期間は検討がつきます。

介護の場合は逆にいつまで続くのかは誰にもわかりません。育児と比べると長期化が予想されます。病気の治療も回復の状況により個人差があるでしょう。

どの事由でも仮に1年なら1年と定めて、1年ごとに状況を確認し更新していくということでよいと思います。もし必要がなくなれば期間満了を待たずに、フルタイム正社員に復帰してもらうのがよいでしょう。

2.始業・終業時刻を定めるときは、職場で一番忙しい時間帯に社員を配置できるようにする必要があります。

1日の労働時間を短縮することで支障が出る場合は、1週間の労働日数を短縮する「短日数勤務」を検討しましょう。

短日数勤務なら1日の業務量を調整する必要がありません。今、私が短時間正社員制度の試験導入を支援している学童保育所では、職員さんの希望により、短日数勤務を導入する予定です。

短日数勤務を導入したある介護施設では、「週5日勤務できる人」を4人確保するよりも「週4日勤務できる人」を5人確保するほうが容易で、延べ労働時間は等しいためシフト管理に苦労しなくなったそうです。

また、短時間正社員に早朝、夜間、土日などの勤務が可能か確認し、勤務可能であれば始業・終業時刻も柔軟に設定しましょう。例えば、保育園に子どもを迎えに行く場合は退勤時刻を繰り上げます。

但し、育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育するための短時間勤務制度(原則1日6時間勤務)の導入が義務付けられています。

短時間正社員制度が仮に1日の労働時間が6時間でない場合は、短時間正社員制度とは別に、育児・介護休業法に則った短時間勤務制度の整備が必要です。

育児・介護休業法に基づく深夜業の制限の申出があった場合、要件を満たした人には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜労働させることはできないので注意しましょう。

次回は、(4)短時間正社員の処遇(賃金、人事評価、教育訓練)について検討する、についてご説明します。



出典:これで解決!人材確保と定着 「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル(看護師・介護士・保育士) 厚生労働省

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