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社労士業の業務分析

 社会保険労務士の業務は幅が広く、その全てを網羅した知識を得るのは基本的に不可能に近い話です。社労士開業をされる方は、その分野の広さを理解した上で、自分の戦略を練ることが必要になります。
(2015年に新人社労士向けセミナーで使用した内容の一部です。)

  1. 労務顧問
    最もポピュラーな社労士事務所の業務。いわゆる1号業務の典型です。
    企業の労働者や役員に関する 
    ・労働、社会保険手続き ・36協定書
    ・労災 ・育児介護休業 ・傷病手当
    ・年度更新・算定基礎届 等が該当します。

    介護の処遇改善加算、求人票作成、障害者雇用納付金、ストレスチェック、派遣会社関係申請 等のように業界や部門特化でノウハウを強化することで、専門性を磨く手段もあります

  2. 労働相談業務
    1と同様に、企業から様々な労働相談業務に対応する業務です。
    ・年金相談  ・トラブルの対応  ・最新法規の問い合わせ等
    内容は様々です。手続き業務を受託していない場合は、手続きに関する問い合わせも非常に多いです。

    口頭・メール・文書等で回答することが主ですが、交渉に同席する場合もあります。事業主の代理で交渉したりはできません。

  3. 就業規則作成・改定
    労務顧問に付随して行う業務の中で、トラブル対策・ルール整備・助成金活用・賃金制度構築等 頻度が高めの業務です。

    法改正による改定や、判例に基づく記載等 常に知識のアップデートが必要な業務です。

  4. 給与計算
    顧客企業の給与計算です。
    間違いを繰り返すと契約解除の原因になりやすいですが、安定した収入につながる部分でもあります。

    所定時間外の計算・社会保険料(月変等を含む)だけでなく、税務知識も必要になります。

  5. 助成金申請代行
    主に厚労省の助成金の申請を代行します。
    毎年制度変更があること、総合的な労務知識に関係すること、お金がからむ話なのでトラブルになりやすいこと 等から避けている先生も多い業務です。

    毎年制度変更があるので、長年経験があることが必ずしも有利ではありません。

  6. 年金相談
    年金事務所や都道府県の年金相談員の業務があります。
    また、金融機関やそれ以外の組織・団体からの依頼がある場合もあります。
    個別に年金の相談を受ける場合もあります。

    申請代行に移行するケースもあります。

  7. 障害年金申請代行
    障害基礎年金、障害厚生年金の申請代行です。
    ・受給要件等の知識
    ・等級に該当するか否か分岐点を判断するノウハウ
    ・様々な併給調整の知識
    ・支給申請書の書き方の知識
    は最低限必要です。熟知している知り合い等がいないと難しいでしょう。

    これ一本で運営している社労士も多数います。

  8. セミナー、研修講師
    もちうる知識やノウハウを元に、セミナー講師や研修の講師を行います。
    社労士の場合は、人に関する研修であれば、何でも対象になります。

    固定のクライアント無しで、研修講師だけしかしない社労士もいます。
    聴衆が興味がある内容なら、上手に話ができなくてもある程度容認されますが、興味が無い相手であれば、工夫しないと聞いてくれないことになります。

  9. 執筆
    書籍やコラム等の執筆です。これが主体になっている社労士もいます。

    ある日出版社が突然依頼をする・・・という話は自費出版の費用だけ払う話以外ありません。SNS・ブログ・Note等で多くの記事を継続的書き続けていると話がくる場合があります。

    出版サービスを利用して売り込む方法もあります。

    出版を顧客獲得のツールとして活用するかたもいます。

  10. あっせん代理
    特定社労士に限定した業務です。
    ADRセンターに登録することで、あっせん代理の業務依頼があります。
    件数・報酬が少ないので、これで生計を立てるのは不可能です。

  11. 青年後見人
    社労士業の領域拡大とされている部門です。
    社会奉仕の面が強いため、大きな収益どころか無償奉仕の可能性も高いですが、多様な知識を持つ専門家として活躍する場面のひとつとなります。

  12. 社労士事務所・労働局・年金事務所勤務
    いわゆる勤務社労士です。これも立派な稼ぎ方です。
    社労士事務所の求人は非常に多いですし、定期的に労働局・監督署・職業安定所の求人はあります(非常勤ですが)。

    勤務経験を活かして、開業する方も多いです。

  13. ひよこ狩り
    いわゆる新人社労士から搾取するビジネスです。
    毎年合格者が出ますし、短期的に稼ぎたい人はいくらでもいるので、社労士業よりもそれらをターゲットにして稼ぐ手段です。

これ以外で報酬を得ることはありますが、いわゆる「社労士」としての報酬ではありません。どこに注力して開業したり、活躍したりするかの参考になるでしょう。


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